【第十七話『三つの風が交わるとき』】①
主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。
戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根
戦術家だが感情に流されやすい。
この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。
今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。
現在3人目のチームメンバーを探している。
親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。
戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身
知らない物の値段を当てる特技がある。
裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。
仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。
戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成
リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。
万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。
最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。
あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。
一度リゲルの誘いを拒絶した。
◆未知の連携
敵チームの初動は早かった。
遮蔽物の多い市街型フィールドに展開された瞬間、リゲルたちの陣地前方にはすでに索敵用の光線が走っていた。標準型の中距離ビットとは異なり、敵の探知行動はかなり正確だ。
「……ハク、少し前出てる?」
「もう出てる。二時方向、接近確認。射程三十メートル」
その返答を聞いた瞬間、リゲルの左肩越しを、何かが風を裂いて通り過ぎた。
――それは、青白く光る氷の弾丸。
サダルだった。
彼の手には、見慣れない双銃が握られていた。遠目には軽そうな構造に見えるが、構えは実に安定している。
それがただの射撃ではないことに、リゲルはすぐ気づいた。
氷弾の一撃が着弾すると同時に、敵の索敵ビットがわずかにブレた。
「……あれ、まさか」
ハクがわずかに声を漏らす。
「干渉弾?」
「うん。たぶん、感知ジャミングかも」
ビットを“壊す”わけではない。だが、敵の行動のリズムがずれる。
それはつまり、“先手を取れる”ということだ。
リゲルはビットを前方に展開しながら、ちらと後方を見る。
サダルは冷静に構えを解くと、右手の銃を腰元のホルダーに戻し、代わりに何かを地面に置いた。装置のように見えるが――氷でできていた。
「……今、設置した?」
「見てて」
サダルがそう言った瞬間、リゲルの左側に小さな風が生まれた。
――風ではない。羽のような薄氷が浮かび、彼の周囲を回り始める。
「これ、俺のビットじゃないよな……?」
「違う。索敵支援用の反射ガジェット。あんたの剣と羽の軌道、少しだけ見えるようにしてる」
言葉が理解に追いつかない。
だが、敵の隠れていた一人がこちらのビットに反応して飛び出してきたとき、リゲルは――反射的に動けていた。
斬撃が、いつもより半拍早く決まる。
「……今の、なんで間に合った?」
「そっちが反応したんだよ、ただそれだけ」
サダルはそう言って、もう一度銃を構えた。今度は違う形をしていた。
「その銃……さっきのと違う?」
「状況に合わせて設計変えた。こっちの方が精密射撃向き」
「設計……?」
リゲルの問いかけに、サダルは肩をすくめる。
「ま、そういう能力。あとで教えてやる。今は動いて」
その瞬間、後方で何かが展開した。
――音はなかった。ただ、空気がピンと張り詰めたような感覚。
魔方陣だった。
いや、それに似た“氷の刻印”。まるで術式のような図形が、地面に広がっている。
「精霊のトバナイが、砲撃支援の準備をしてる」
「……砲撃?」
「後ろ見ればわかる。って言っても、本人じゃなくて、あのペンギンだけど」
言われて振り返ると、小さなスーツ姿のペンギンが、どこかの漫画から抜け出したように氷砲を構えていた。冷却と魔方陣が同調し、狙いを定めている。
……そして発射。
静かな轟音が、フィールドの外周を震わせた。
弾は命中しなかった。けれど、着弾地点に足元を凍らせる陣が展開され、敵の進行がピタリと止まる。
「わざと外した?」
「うん。でも、時間は作れるでしょ」
ハクが舌を巻くように言う。
「なんだあいつ。……いや、サダルって、あんなことできるやつだったっけ?」
「知らん。てか、俺も知らん」
リゲルも同意しかけて、ふと――気づく。
「……って、じゃあ、最初から説明してくれてもよくない?」
「いや、見たほうが早いから」
◆動き出す設計図
フィールドに風が流れた。
氷の粒が、軌道を描いて空中に浮遊する。
その風景の中で、リゲルは咄嗟に身を沈めた。
可変アタッカーが動いた――足場を滑るような動作。二段ジャンプ。着地。
跳弾を遮る障壁を、膝下のスライド射撃で抜けてくる。
リゲルの剣が振るわれ、刃のしなりに合わせてビットが円を描いた。
だが、その直線上に敵はもういなかった。
「……動きが、似てる」
剣とビットの攪乱包囲。それを読んで捌いてくる戦い方。
まるで、以前の自分たちと対峙しているような錯覚――。
「ってことは、突破口は――」
言いかけた瞬間、左側の中衛が長射程の散弾を撃つ。
狙いは牽制ではない。可変アタッカーの回り込みルートの形成。
次の瞬間、敵がリゲルの死角に滑り込む。
「リゲル、右!」
ハクの声とほぼ同時に、空間で氷が鳴いた。
――パシィンッ!
敵の足元に、いつのまにか生成された半透明の斜面。
視覚的には存在を消していた傾斜板が、敵の踏み込みをわずかに逸らした。
「……一歩、早かったな」
後方、サダルの双銃が交差する。
構成モード:反射+遅延起動。
障壁に撃ち出された氷弾が跳ね、タイムラグで氷霧を形成。
その中から、冷却トラップbotが起動し、敵アタッカーの脚部を包み込む。
そのとき、リゲルのビットが静かに動き出した。
円弧を描いて空中に展開され、三点配置。
「……ビット、反射同期」
三基のビットが光の座標を形成し、サダルが即座に演算補正を送る。
「反射率、補正完了。今なら通る」
リゲルは剣を下ろす。
照準は、氷霧の中に囚われたアタッカーの中枢ユニット。
次の瞬間――
光線が、斜めに跳ねながら貫いた。
「そこは急所、外さないでよ、リゲル」
命中。しかし――退場には至らない。
敵装置がギリギリの閾値で耐え、補助アームが後方へ引き戻す。
「しぶといね」
「けど……次は落とす」
ハクが弓を引く。その横で、トバナイが迫撃砲を構える。
展開モード:範囲索敵。
砲弾が着弾。広がる魔方陣。
サダルが言う。
「そこに“いる”。氷杭、起動」
足元から鋭利な氷杭がせり上がる。
中衛の一人が回避遅れで転倒。
だが即時の反応。敵は支援botを投下し、戦場が構造応酬に切り替わる。
サダルの目が細くなる。
後衛の敵が、記録再生型botを展開。戦場が過去ログで覆われていく。
「行動予測型か……再現で先回りするつもりだね」
サダルは静かに設計図を更新する。
空中に数式が浮かび、演算が一行だけ上書きされた。
「bot-03、釘打ち型、再設計起動」
氷杭を高速射出するbotが、再現範囲の外側から敵支援ユニットへ襲いかかる。
再現予測が“追いつけない”速度と変数で、予測が崩壊する。
リゲルは小さく笑う。
「……見えてる。射線、開けるよ」
ビットが左右に展開。
氷の反射板が三角形に展開し、ハクの矢を導く。
水矢が、反射角をたどって敵アタッカーの装置に命中。
判定ラインが橙色に変わる。転倒。
戦況が、こちらに傾きはじめた。
◆個人技
敵は、戦場の構造そのものを制するサダルの存在に気づいた。
そして、誤った判断を下した。
――「支援型は、接近すれば潰せる」。
右側の敵アタッカーが進路を変え、外周の高所にいたサダルを狙う。
足元の氷を滑るようにして高速接近。
だが次の瞬間、サダルの足元にトバナイが放った特殊弾が着弾した。
氷の粒が一斉に逆流し、彼の体を包む。
魔方陣が静かに広がる。
反応速度と動体制御を限界まで高める、自己強化型の砲弾だった。
サダルの体が、重力の縛りを無視したように軽やかに跳ね上がる。
双銃が切り替わる。
モード:高速散弾+冷却ミックス。
跳弾で進路を封じ、足元に氷杭をばら撒く。
左手の銃で壁面にビームを反射させ、視界を奪う。
敵アタッカーが突進する瞬間、足元で滑り床botが起動。
敵はバランスを崩し、サダルの頭上を飛び越す形に。
「……タイミング計算完了」
サダルが右銃を天井に向ける。
魔方陣が展開。
落下点に、鋭い氷杭が突き上がり、敵の胸を貫いた。
敵は跳ね飛ばされ、動きを止める。
トバナイが追撃弾を装填。
再び魔方陣が展開される。
サダルの双銃が長銃身に切り替わった。
狙撃モード。
敵支援役の頭上すれすれを、氷弾が静かに通過する。
「……次は、外さない」
敵の配置が崩れる。
サダルは、戦場の支援者ではなかった。
彼自身が、一つの戦術装置だった。
◆三つの風が交わるとき
戦場が静まった――一瞬の空白。
リゲルは敵前衛の崩れを察し、反射的にステップを踏んだ。
その背後で、ハクが水矢を構えている。狙いは、敵支援役の背後。
けれども――それだけでは、決め手にならない。
そのときだった。
フィールドの片隅、氷の魔方陣が三重に展開された。
「三重リンク、確立」
サダルの声が重なる。
トバナイが迫撃砲を一拍ずつずらして三発撃ち出す。
氷のバフ圏、滑り床、リフレクター板。
それらが、リゲル・ハク・敵アタッカーの中間域に等間隔に展開されていく。
「……先に“答え”があるんだよ、こういうのは」
サダルのつぶやきと共に、ビットが先行する。
冷却された滑り床を走り、最初の魔方陣で反射し、敵アタッカーの右肩をかすめる。
その一瞬の揺れ――ハクが見逃すはずがない。
水矢が放たれた。
しかしそれは、正面からではない。
斜め後方から、一枚目のリフレクター板に当たり、二枚目で屈折し、敵後衛の足元へと回り込んだ。
――ガシィン!
冷却床と氷杭が同時に起動。
敵の足元が凍結し、後衛の動きが止まった。
「リゲル、今!」
声に反応し、リゲルは跳躍。
空中で体をひねり、逆手で剣を持ち替える。
「……一撃で、終わらせる」
ビットが追随する。
トバナイが魔方陣を展開し、リゲル専用バフを発動――加速、安定、反動制御。
滑空する剣の先端が、氷杭に拘束された敵の胸部に突き刺さった。
光が弾ける。
敵アバターの装甲が砕け、残滓がフィールドに拡散する。
静寂。
そして、判定光が三つ点灯する。
――勝利。
リゲルは肩で息をしながら、ゆっくりと振り返る。
ハクと視線が合い、どちらからともなく頷いた。
その後ろに、サダルが歩いてくる。
銃口はすでに下げられ、ペンギン執事が黙って砲身を冷却している。
「……すごいね」
「うん。“三人”って、こういうことなんだ」
ハクが肩をすくめて笑い、リゲルはただ、遠くを見つめていた。
自分たちの戦い方は何も変えていない。
だが、戦場が変わった。
背後に設計者がいる。必要なものが、必要な場所にある。
世界が味方になっているような感覚。
それこそが――サダルという存在だった。




