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【第十七話『三つの風が交わるとき』】②


主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。

    今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。

    現在3人目のチームメンバーを探している。


 親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。


 仲間:名前はサダル。太陽水瓶座、月蟹座。早生まれで少し体が小さい同じ学校同級生。

    戦闘スタイルは、①氷の双銃②魔方陣型迫撃砲③自律型bot④ガジェットの作成

    リゲルとハクのアバター戦の3人目ののチームメイト。

    万能支援をやってくれる。現在はやや二人より実力は上。 

    最低限の単位だけ取ってゲームセンターに入り浸っている。

    あまり仲のいい人がいないが、すごい才能をもっている。

    一度リゲルの誘いを拒絶した。

◆世界が変わる音


 リゲルは肩で息をしながら、ゆっくりと振り返る。


 ハクと視線が合い、どちらからともなく頷いた。


 その後ろに、サダルが歩いてくる。


 銃口はすでに下げられ、ペンギン執事が黙って砲身を冷却している。


 トバナイの動きには、淡い“ためらい”があった。


 砲身を磨くその手つきはいつも通り正確で、抜かりない。


 だが、わずかに肩を落としたような仕草――


 それは、久々の実戦に満足しているようでもあり、激務を終えた疲労感にも見えた。


 一年ぶりの戦闘参加。


 けれど、ペンギン型の彼にも、確かに“労働”はあるのだと、リゲルは思う。


 「……すごいね」


 「うん。“三人”って、こういうことなんだ」


 ハクが肩をすくめて笑い、リゲルはただ、遠くを見つめていた。


 自分たちの戦い方は何も変えていない。


 だが、戦場が変わった。


 背後に設計者がいる。必要なものが、必要な場所にある。


 世界が味方になっているような感覚。


 それこそが――サダルという存在だった。


 ……そのときだった。


 遠景が、ノイズ交じりに揺れた。


 地平線が淡く溶け、フィールドの境界がにじむ。


 アバター装束の輪郭が静かにほどけ、冷たい金属感が抜けていく。


 リゲルは気づく――制服の襟元が、首に触れたことに。


 現実が、戻ってきていた。


 仮想装置のハッチが、淡く開く。


 リゲルは静かに立ち上がり、ホログラフパネルに目をやった。


 スコアログには、「三人連携率」の項目が追加されている。


 「……見える?」


 隣の装置から出てきたハクが、少し照れくさそうに声をかけた。


 「……ああ。ちゃんと、数字になってる」


 その向こうで、サダルは無言のまま、トバナイに視線を向けた。


 ペンギンがぴょこんと跳ねて静止し、“任務完了”を告げるように砲身を背負い直す。


 ハクがぼそりと漏らす。


 「“三人”って、こういうことなんだな……」


 リゲルは、黙って頷いた。


 まだ、始まったばかりだ。


 だが確かに、世界は変わった。


――再評価』


控室の外――廊下に出た瞬間、空気が変わった。

人の流れがある。ざわめきがある。

それは、戦い終えたばかりの自分たちに向けられたものとは、少し違っていた。

けれど確実に、自分たちのほうを“通って”いった。


「……最近あんまり見てなかったけど」

「今の試合、あれヤバかったよな……」

「え、あのチームだったの? てか、“三人”だったっけ?」


生徒たちは、廊下の壁際に設置されたホログラフに群がっていた。

モニターの中には、今しがたの試合ログが再生されている。

フィールドの俯瞰映像、スロー再生、連携マーカー、個人戦術スコアのグラフ化。

そしてその下に、目を引く一行。


《選抜戦期中・戦術適応スコア:暫定1位》


「は? これ、あのリゲルってやつらだろ?」

「いや、前は二人だったはず……」

「ていうか誰だよ、最後の“サダル・ミネザキ”って……」


声が飛び交う。驚きと困惑。半信半疑のざわめき。

リゲルは、足を止めた。

自分たちの名前が、確かにそこに並んでいるのを見てしまったから。


リゲル・テンム/ハクラビ・ヒミ/サダル・ミネザキ


その横には、AIによる戦術解析ログ。


《連携率:93.1(標準中央値72.3)》

《戦術適応係数:A++》

《リアルタイム構造対応:超過》

《補助演算リソース使用率:8%→100%》

《最重要要因:個別設計・連携展開・反射角最適化》


「……バグってない、これ?」


誰かの呟きに、ハクが苦笑した。


「……やばいな。疑われてるね、完全に」


「でも俺たち、いつも通りやってただけだよ?」


リゲルがぼそっと返すと、ハクは軽く笑った。


「うん。だから、“俺たち”がじゃないんだって」

「“彼”だよ。あの……氷の天才設計士さん」


リゲルは目線を横にずらす。

少し後ろを、サダルが歩いている。

制服に着替えたばかりの彼は、何も言わない。

ただ、ペンギンのトバナイと並んで、淡々とモニターの脇を通過した。


誰かが「あの人?」と指をさしかけ、ペンギンを見て戸惑う。

けれど当の本人は、まるで空気の流れの一部のように気配を保ったまま、歩き続ける。


リゲルたちも、視線を浴びながら歩いた。

それは賞賛でも嫉妬でもない、もっと奇妙な――

「誰だっけ、こいつら?」 という記憶のノイズ。


確かにいたはずの二人組。

でも、強い印象はなかった。

そのくせ、総合順位でないとはいえいきなりAI評価1位――そんなの、腑に落ちるはずがない。


「……なんか、変な気分」


リゲルがぼそっと言うと、ハクが小声で答えた。


「まあ、実力ってやつだよ。たぶん、俺たちじゃなくて――」


「設計図のほうが、評価されてる」


言葉にされると、それはやけに正確だった。


控室の扉が開く。

中に戻ると、照明の色が変わっていた。

試合後の個別インターバルモード。

淡い青が室内を照らし、人工音がほとんど鳴っていない。


ハクは椅子に倒れ込むように座った。

リゲルも、その隣に腰を下ろす。


ペンギンがそっと自動冷却のボタンを押し、席の横に設置された氷ユニットがふたつ、無言で起動する。


「……ほんとにすごいな、トバナイ」


そう呟いたのは、サダルだった。

椅子に座りながら、目を閉じるでもなく、静かに手を組んでいる。


「一年ぶりだったのに、完璧だよ。

君は、やっぱり、設計した通りに動いてくれる」


その言葉に、トバナイは何も答えなかった。

けれどほんの一瞬、肩が上下したように見えた。


疲労なのか、満足なのか――リゲルには、まだわからなかった。


◆観客の誤解


数日が過ぎ、彼らのチームはすでに二つの試合で勝利を収めていた。

だが、廊下の雰囲気は――静かだった。


ざわついているのは、試合ログの中身ではなく、その結果だけだ。


「え、また勝ったの?」

「たまたまでしょ。相性じゃない?」

「てか、あの三人組、最後のやつ誰? 影薄くない?」


教室前のモニターで、前日の試合ダイジェストが再生されている。

だが、誰も立ち止まっては見ない。


試合の流れは映っているのに、勝因がよくわからない。

斬撃が決まり、氷弾が飛び、矢が曲がって命中している。

だが――演出は地味で、爆発的なシーンもない。


いつの間にか勝っていた、そんな印象だけが残る。


「連携は綺麗だけど……なんか見えにくくない?」

「てか、あの水の子が一番得してない?」

「ほら、最後に矢当ててるだけだし」


一部の戦術班の生徒たちは、ログの奥を覗き込んでいた。

だがそこにも、明確なパターンや読み筋は見えてこない。


「たぶん、偶然ハマっただけじゃない? 相手がミスったとか」

「このチーム、他の強豪と当たったら速攻で崩れるでしょ」


誤解だった。

だがその“誤解”は、少しずつ空気を変えはじめていた。


勝っているのに、注目されない。

勝ち方が見えないから、評価されない。

そして、評価されないから――対策が始まらない。


その日、リゲルたちは三人で廊下を歩いていた。

すれ違う生徒たちの中に、自分たちを認識している者は、ほとんどいなかった。


「……案外、静かだね」


リゲルがぽつりと漏らすと、ハクは笑いながら答えた。


「うん。見えてないんだろうね、まだ」

「でも、そろそろ見られるよ。見せないといけない場所で、きっと」


それは、どこか予言のような響きだった。


◆テンプレート化する勝利


また、勝った。

それが、リゲルの最初の感想だった。


三人で組んでから、すでに三戦目。

今回の試合も――いつものように進み、いつものように終わった。


開幕は、サダルの干渉弾。

敵の索敵ビットがわずかにブレ、戦場の構造が少しだけ“こちら寄り”になる。


反射板が配置され、ビットと氷床がリンクし、

リゲルが踏み込み、ハクが撃つ――

その順序が、あまりに滑らかすぎた。


「……なんか、最近、“流れ”が読めてきたかも」


試合終了後、リゲルがそう漏らすと、ハクは軽く笑った。


「悪い意味じゃなくてね。

“慣れてきた”っていうか……呼吸が合ってきた、みたいな」


「そりゃそうでしょ。設計側が、合わせてくれてるんだし」


ハクは冗談めかして言ったが、額にはうっすらと汗が滲んでいた。

再装備の画面で見ると、被ダメージ量は前回より18%増加していた。


「……ちょっと前出すぎたかな」


「いや、あれは必要だったよ。俺、あれ見て動いたから」


言葉の応酬は軽い。雰囲気も、悪くない。

だが、サダルは何も言わなかった。

ただ、手元の演算ログを開いていた。


――射線、予測補正、行動タイミング。

その中にひとつだけ、微妙な遅延があった。

ハクが前に出たときだけ、サポート処理が“間に合っていなかった”。


フィールドログを振り返っても、戦術パターンはほぼ同じだった。

干渉弾 → 索敵補助 → 反射誘導 → 攪乱 → 鎖矢 → 撤退トラップ。


整いすぎた勝ち方。正確すぎる工程表。

それが、強さの証明ではなく――“再現可能なパターン”に見えてきていることに、

このときのリゲルも、ハクも、まだ気づいていなかった。


「今回、トバナイの砲撃も決まったしさ」


「ね、なんか普通に勝てるね、最近」


ハクの言葉に、リゲルも笑って頷いた。

だが、サダルは――そのログを閉じて、短く言った。


「……勝ちパターン、強すぎるのも欠点になるよ」


「え、なにが?」


「いや、ちょっと気になっただけ」


それきりだった。

けれど、誰よりも早く、それに気づいていたのは――彼だった。


◆空白の支柱


「今日は、俺、後ろにいるから」


サダルはそれだけを言って、控室の隅に座った。

理由は言わなかった。だが、装備端末を何度も開いていたから、おそらく武装調整だ。

ペンギンのトバナイだけは、彼の足元に控えている。


だが戦場には――支柱そのものが、いなかった。


開始数十秒で、リゲルはそれに気づいた。

視界にあるはずの反射支援、氷の連携点、フィールドの構造変化。

それらが、“来ない”。


ビットの動きに微妙なズレが生じ、敵との間合いの詰め方が鈍る。

いつものように「通る」と思った射線が、通らない。

そして、ハクの負担が増えた。


「っ、カバー行くよ!」


「待って、まだ早い――」


リゲルの制止も間に合わず、ハクが踏み込む。

矢は敵の足元を撃ち抜いたが、反撃のビームが肩をかすめる。

白く光った部分が、一瞬だけ警告色に変わった。


「ごめん、ちょっと詰めすぎた……」


「いや、俺が遅れた」


言い訳はなかった。

ただ、噛み合わない何かが、確かにあった。


終盤、トバナイの自律砲撃が当たり、勝負は決まった。

だがそれは、いつもの「構造で押し切る」勝利ではなく――

個々の反射神経と強引な判断で拾った一本だった。


試合後。

控室に戻った三人は、どこか疲れた顔をしていた。


「……サダル、調整終わった?」


「うん、たぶん次は出せる」


そう言いながら、彼はトバナイのフレームを見ていた。


リゲルは、ホログラムの試合ログに目を向けた。

被ダメージ率は、明らかに偏っていた。


ハクラビ・ヒミ:被弾7回(軽中傷2)

リゲル・テンム:被弾2回(軽傷)

反射構造発生率:32%減/設計補正ゼロ

勝因:最終的な砲撃による判定差 → 有効射撃1.0点上回る


「……ギリギリだったな」


「うん。でも、勝ったじゃん?」


ハクの笑いは、相変わらず軽かった。

だが、リゲルにはわかっていた。


このチームは、まだ三人で戦っていない。

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