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【第十四話『主人公のモブ化』】※下ネタ注意


主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦闘スタイルは、①しなる剣、②複数の種類の孔雀目ビット、③鋭利な大量の羽根

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。

    今は、自分の目指すべき「誠」という人格態度を磨いている。

    現在3人目のチームメンバーを探している。


 親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    戦闘スタイルは、①軽弓、②双剣、③分身

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。


ヒロイン:名前は、ラピス。太陽牡羊座、月山羊座。

     小顔の丸顔でおでこと目が大きく背が小さいが、ほんの少し釣り目。

     生徒会の役職にこそついているが、中身はぽんこつ。

     周りの人間に助けられている。

     気の強さの一方、ラピスラズリのように脆い非常に繊細な心の持ち主。

     直感的で思ったら後先考えず、すぐ行動する。

     手先が器用。後輩や動物の面倒見がすごくよい。

     頑張りすぎてよく体調を崩す。花が好き。少し人見知り。

◆戦闘終了後:転送エリア・控室前


転送光が収まり、三人の姿が廃墟フィールドから帰還した。


制服姿に戻ったライサは、長いウェーブの髪を手ぐしで整えながら、ふっと静かに嘆息する。


「――やれやれ、瓦礫が落ちなければ、もう少し余韻に浸れたのに」


その声音には気品があり、怒っているわけではないのに“品のある圧”をまとっている。


横に現れたユニコ――雷雲を纏った一角の精霊が彼女の肩に姿を見せると、ライサは何も言わず、そっとその首筋に指を添えて撫でた。


まるで戦闘の疲労を労わるように、あるいは共に戦った証を確かめるように。


その仕草に、気取りも誇張もない。ただ静かに、“信頼と感謝”が込められていた。


周囲の空気を自然と引き締めてしまうその立ち姿は、どこまでも堂々としていた。


鞭と雷の女王――その異名が制服姿にも不思議と馴染んでいた。


その隣で、アレッタが制服の短めのスカートを両手で押さえると、くるりと軽やかに一回転して、にこっと笑う。


「でも、派手だったよねー。うちら三人ってさ」


声も動きも明るく、どこか小動物的な軽やかさがある。


けれど、無邪気な中にも確かな“自負”がこもっていた。


本人にその気があるかはさておき、相手を油断させたあとで大物を当ててくる“射手の矢”は、今日も冴えていた。


そして最後に、シェラが壁を「ドンッ」と雑に蹴って背中を離し、大きく伸びをした。


制服はきちんと着ている。髪も整っている。


だが、拳は知らぬ間に握られ、かかとが微かに床を刻んでいた。


じっとしていられないのではない。――身体が、次を求めて鳴っている。


シェラは、思考より先に足が動く女だった。火薬の導火線のように、短く、一直線に。


「派手なのは、いつものことでしょ」


ぶっきらぼうなその声には、筋も理屈もなかった。


けれどそれでも、なぜか“場の流れ”ごと引っ張ってしまう。そんな圧倒的な勢いがあった。


三人はそれぞれが異なる光を放っていた。


だが、誰もが同じ方向に歩いている。


教師も、観戦していた他の生徒たちも――誰ひとり声を発さなかった。


空気が自然と、納得の沈黙で満たされていく。


この三人が一つのチームであることは、結果よりも明白だった。


説明すら要らない。見れば、誰もが理解する。まるで、もとからそうあるべきだったような、“かたち”がそこにあった。


 


そこへ、控室の廊下の端から、さきほどの対戦相手だった男子三人組が現れた。


制服に戻ってはいたが、その姿は、戦場での“あの姿”とはまるで違って見えた。


さっきの模擬戦――


分厚い装甲に身を包み、前線を張っていたリーダー格。


召喚獣と連携して攻撃を指揮していた司令役。


流れるような結界操作で支援を回していたバッファー。


それぞれが、アバターの中では堂々と戦っていた。


だが、今そこに立っているのは――


制服の裾を落ち着きなく直しながら、視線を泳がせる三人の“少年”たちだった。


肩も背筋もどこか縮こまり、声をかけるのに躊躇している様子からは、さっきの“戦士の面影”はほとんど感じられなかった。


視線は床に落ち、あるいは壁のシミのような何でもない場所に固定されていた。


あたかも、真正面に立っている彼女たちのまなざしから、逃げるように。


アバターの姿で戦場にいたときのほうが、よほど自信があったのだろう――


逆に今の彼らは、自分たちが“ただの生徒”に戻ってしまったことを痛感しているようだった。


そして、意を決したように、そのうちの一人が、口を開く。


「……あの……また、機会があったら……もう一回、試合、お願いできませんか」


その声には、負けたことへの悔しさと、どこか真摯な願いがこもっていた。


三人の動きがぴたりと止まる。


沈黙――わずかに数秒。


だがそのあと、最初に口を開いたのはライサだった。


「自分より弱い男には、興味ないの」


気品ある声で、断言するように。けれど不思議と棘はなかった。


すぐにアレッタが笑いながら手を振る。


「わたしもー。でも、がんばってくれたのは、ちゃんと伝わったよ!


君たち、持ってるものとか上下関係とかひけらかす肌が焼けてる連中よりだいぶ見込みあるよ!」


ライサが、言いすぎたのかと少し訂正する。


「弱いなら、強くなりなさい。


といっても、声や態度が大きいだけの奴らよりは貴方達はずっとマシだけどね。」


最後に、シェラが無言のまま男子を一瞥し、鼻を鳴らす。


「強くなると言っても、稼ぐことに全力になったり、筋トレばっかりするような男になっちゃだめだよ。


劣等感強いのが丸見え。そういうやつ見てると、髪を鷲掴みして顔におしっこ掛けたくなる。


本当の意味で女を守れるくらい、頭がよくないとと魅力的に見えないよ。」


ライサが、優美に微笑む。


「次はせめて、背中くらいは見せてちょうだい。……できれば、ね」


アレッタが軽く手を振る。


「うん、がんばってー」


声は優しかったが、その響きは、壁の向こう側にでもいるかのように、どこか遠かった。


シェラは一言も返さず、ただ顎で軽く背後を示して見せる。


 


三人が廊下を歩き去っていく。


制服姿であるにもかかわらず、その背中には、圧倒的な“戦場の風格”があった。


――そして、そのうちの一人、シェラは歩きながら、ふと視線を横に流した。


隣を歩くライサ。いつも余裕がありそうで、でも肝心なところで誰よりも先に動く女王様。


その少し後ろを歩くアレッタ。飄々としていながら、要所で一番刺さる矢を撃ち抜く、陽気な狙撃手。


(……間違いないな)


言葉にせず、誰にも言わず――


シェラの胸の内で、静かにひとつの答えが刻まれた。


(この二人。たぶん、あたしが一番“組むべき相手”だった)


ただ強いだけじゃない。


ただ相性がいいだけでもない。


互いに踏み込まない距離感、でも同じ方向を見ている確信。


わざわざ確認しなくても、背中を任せられる感覚。


(あたし――やっと、“自分の居場所”を見つけたのかも)


そんなふうに思えてしまうほどに、今日の戦いは、自然だった。


「……ふっ」


誰にも聞こえないほどの小さな笑いが、シェラの喉奥で零れた。


この二人となら、どこまでも行ける――


そんな予感が、なぜか“確信”として胸に残っていた。


 


◆主人公のモブ化


廊下の奥から、明るい笑い声が転がってきた。


ライサ、アレッタ、シェラ――


制服姿に戻った三人が、午後の陽ざしを反射させながら談笑しつつ、こちらへ歩いてくる。


軽やかな足取りにあわせて、髪や袖口がやわらかく揺れ、光を受けてきらめいた。


その笑顔には、戦場で見せた攻撃や防御とは違う、言葉にならない“統率”と“正当性”のようなものがあった。


まるで、物語の中心に位置する者にだけ許される、“未来をつくる力”のようなものが。


アレッタが、まるで世界が祝福に満ちているかのように、手を振りながら何かを言う。


ライサはその言葉に微笑み、陽光を受けて金糸のようにきらめく髪を、静かにかき上げる。


シェラは肩で笑い、背後の空気まで軽く蹴り上げるようにして、ドン、と音を立てる壁を遊び道具に変えてしまう。


日光・水分・無機栄養・温暖な気候・安定したpH・定着できる場所等に恵まれて成長し続ける女性性の象徴としての藻のようだった。


――自然だった。


あまりにも自然に、そこに“完成された何か”があった。


彼女たちは、いまこの瞬間、


周囲の空気ごと“味方”につけていた。


廊下のざわめきが、一瞬だけ止まる。


立ち止まる生徒たち、視線を向ける観戦組――


誰もが知らず知らず、彼女たちの笑顔の方向へと“舞台照明”のように意識を傾けていた。


まるで、風景の一部として。


そこに、彼らはいた。


リゲルと、ハク。


二人は廊下の中ほどに立っていた。


動けないわけではなかった。ただ、“どこへ向かえばいいか”がわからなかった。


足も、声も、意志すらも――何かに引っかかって、宙づりにされたように。


誰よりも先に、彼女たちの“戦い”を知り、


つい先日――ライサとアレッタを、倒した。


あの模擬戦で、勝ったのは自分たちのチームだった。


……けれど、今この空間で、


そのことを覚えている者は、誰一人としていなかった。


女子たちは、彼らに気づかない。


まるで視界のフィルターがかかったかのように。


そのフィルターの向こう側にいるのは、名前を呼ばれることも、反応を期待されることもない存在たち。


そのまま、笑いながら、すれ違っていく。


リゲルの横を、アレッタが通る。


少しだけ弾む足取り。


軽やかな声が、隣を掠めて、消える。


ライサの香りが、風に乗って流れる。


けれど、彼女の目線がこちらに届くことはない。


シェラの肩越しに、ちらりと視線が来たかと思ったが、それも通り過ぎていった。


実際は、こちらの概括的な存在すら認識してなかったかもしれない。


すれ違い――その一瞬すら、彼らに与えられなかった。


台詞がないのではない。


“語る資格”が与えられていない。


それは、“物語の台本”から名前が消されてしまった者たち。


ログに残らない、記録にも反映されない、ただの観客以下の存在。


――今の自分たちは、そういう立場なのだと、痛いほどに突きつけられる。


モブキャラですら、試合中にはセリフがあった。


掛け声、挑発、悔しさ。


それぞれの役割と“居場所”を、何かしら持っていた。


でも――自分たちは今、何者なのか。


ただ立っているだけの、自覚なきエキストラ。


“主人公”のはずだった。


けれど、ここにあるのは――


世界から“認識されない”という、静かな役割の敗北。


この前は、彼女たちの二人に大勝利を収めたはずなのに、置いていかれている。


彼女たちは今、“今”を生きている。


勝利も、敗北も、その先も、すべてを前に進めて、自分たちの言葉で更新していた。


それに比べて、自分たちは。


まだ、誰かを探している。


まだ、理想のかたちを掴めずにいる。


焦りも、羨望も、言葉にできない。


声に出せば、かえって空しくなるだけだとわかっているから。


ただ――


静かに。


すれ違っていった。


キラキラと、まばゆい背中が、何かを確信した者だけが歩ける歩調で遠ざかっていく。


そのひかりがまぶしいほど、自分たちのいる場所が、日陰に見えた。


その光がまぶしいほど、自分たちの影が、濃くなる気がした。


それが――「敗北」の、もうひとつの定義だった。


この日、結局、リゲルたちの戦闘ログは――残されていなかった。


あの日の彼らの存在は、ただ通り過ぎた風景の一部として、物語の端っこに、誰にも拾われることなく、ログにも記憶にも残らない沈黙として沈んでいった。


そこにあったのは、声すら持たない“敗者”の姿――


語られなかったことによって、敗北が確定した者のかたちだった。


それは、まるで、栄養不足・酸素欠乏・pHの急変・温度の低下・バイオフィルム形成環境等によって急激に増殖力を押さえられた男性性の象徴としての細菌のようだった。


◆太陽のような贈与


飼育小屋の隅は、まだどこか湿った空気が残っていた。


土の匂いと動物の体温。小さな鼻息や、足音のような気配。


リゲルは、その中に立ち尽くすように座っていた。


手にはブラシを持ったまま。何かをするわけでもなく、ただぼんやりと毛並みを見つめている。


 


「……俺、どうすればいいんだろう」


ぽつりと、言葉が落ちる。


ラピスは、キーボードの背をなでていた手を止めなかった。


 


「“誠”が大事だって、自分で決めたはずなのに……

結果が出ないと、こんなのただの自己満足なんじゃないかって思えてくるんだ」


 


「仲間も、まだ見つかってない。このまま選抜戦に出るとか、さすがに無理あるだろって……

何やってんだろ、俺」


 


「……意味、あるのかな。今やってることに」


 


ラピスはしばらく何も言わなかった。


ピアノが丸くなって眠るそばで、ボーカルがくしゃみをした。


その音が、曇った小屋の空気に跳ね返る。


 


「ぐえっ」という、変な声が重なり、隣のギターがむっとした顔で睨む。


キーボードがそれをぼんやりと眺めて、鼻先でドラムの尻を押した。


 


リゲルは、そのやりとりをぼんやり見ながら、少しだけ息を吐いた。


 


そのとき、ラピスが口を開いた。


落ち着いた声だったけれど、どこか、芯に火のついたような熱を感じた。


 


「……リゲルってさ、たぶん、自分では気づいてないと思うんだけど」


「リゲルって、人を照らしてるんだよ。

ちゃんと誰かに、“自分もやってみたいみようかな”って思わせるような、

そういう空気を持ってる」


 


「ほら、ずっと前、私、ピアノが体調崩したって焦ってたでしょ?

リゲル、特別なことは何も言わなかったけど、

“まあ、いけるんじゃない?”って、ぽつっと言っただけで、

……あれ、なんか、大丈夫って思えたんだよね。ほんとに」


 


リゲルは視線を落としたまま、ブラシを握り直す。

それでも、耳だけは、ちゃんとラピスの方を向いていた。


 


「私ね、自分が誰かを支えたとか、導いたとか、そんなふうに思ったこと、正直ない。

むしろ、誰かの言葉や空気に頼ってばっかで、ずるいなって思うことの方が多いんだよ」


 


「でも……そんな私でも、リゲルの“そのまま”に助けられたからさ。

きっと他の誰かも、気づいてないだけで、助けられてると思うよ」


 


ピアノが、小さく寝返りを打った。

ボーカルがそれに鼻先を寄せる。

ギターがもそもそと位置を変えて、キーボードに寄りかかる。


 


「それにね」


「たぶんリゲルのタイプって、“すぐに結果が出るやり方”じゃないんだよ」


「そういう人って、いつも損して見えるけど――でもね、あとから、確実に効いてくる」


「私も、そういうの、ちゃんとわかってるつもり」


 


ラピスは、そっと立ち上がって、リゲルの隣に並んで腰を下ろした。


その距離は近すぎず、遠すぎもしなかった。


ただ、あたたかかった。


 


「リゲル」


「今やってることが意味あるかどうか、答えはまだ出ないと思う。

でも、それって“意味がない”ってことじゃないよ」


「だから――もうちょっとだけ、続けてみない?」


「三週間、とか。選抜戦まで、とか。そういう区切りでもいいから」


「そしたら、きっと何か見えてくると思う。

誠って、そういうふうにしか光らないものだと思うから」


 


リゲルは小さく頷いた。


無言のまま、ギターの背中をひとなでする。


 


「……ありがとう。

あれから、一度も約束を破ったことはないから。

それなら守れる気がする。」


 


その言葉に、ラピスは返事をしなかった。


ただ、ピアノの耳のあたりを指で撫でて、静かに笑った。


 


それは、まるで――


太陽のような贈与だった。


名言じゃない。劇的な何かでもない。


でも確かに、灯のような温度が胸の内にともっていた。


 

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