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【第九話 『遊戯と幻想の日曜日』】①

主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望している。

    現在3人目のチームメンバーを探している。

 親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。

 精霊:名前はぴーちゃん。孔雀の精霊。曜日ごとに性格や見た目が変わる。

    日曜日のぴーちゃんは、おしゃまで陽気で生意気。

    イメージカラーは桃色。

    リゲルをよくからかっている。

【第九話 『遊戯と幻想の水曜日』】

――今日は、一日楽しくなる気がする


◆日曜日のぴーちゃん

 目覚ましが鳴る、ほんの一瞬前――

 頬にくすぐったい風が触れて、リゲルはゆっくりとまぶたを開けた。


「やっと起きた? ボク、もう三回くらい呼んだんだけどなぁ」


 空中にふわりと浮かぶ、淡いピンクの羽根。

 その中心に、日曜日のぴーちゃんが腕を組んで浮いていた。


 丸みを帯びたフォルムと、おしゃまな声色。

 どこか中性的で、けれど誰よりも自信に満ちた顔。


「……おはよう、ぴーちゃん」


「んー? それだけ? 寝癖つけたままのおはようなんて、ボクに失礼じゃない?」


 ぴーちゃんはくるりと一回転し、リゲルの額にちょんっとつつきを入れる。


「……今日、ちょっとだけ疲れてるから」


「うん、それ、顔にぜーんぶ出てる。ボク、観察力だけは抜群だからね♪」


 つんとした態度に反して、ぴーちゃんの羽根はリゲルの肩にそっと降りる。

 その仕草はどこか、甘やかすようでもあった。


「でも、そんなリゲルも悪くないかな。

 “がんばりすぎて、ちょっとダサい”の、ボク……キライじゃないよ?」


 にやっと笑うその顔は、絶妙に生意気だった。

 けれど、リゲルはなぜかその軽口に、ほんの少しだけ救われたような気がした。


「……君って、いつも調子いいよね」


「えー、ボクはいつだって“絶好調”だよ。

 だって、日曜日って“ごほうびの日”でしょ? ボクがいちばん似合う曜日なんだから」


「……自分で言うんだ」


「当たり前じゃん。ボク、自分が愛されてるの、ちゃんと知ってるもん」


 そして、ふと思い出したように目を細めて言った。


「――あ、そういえば昨日さ。ラピスちゃんと、なんか“いい感じの距離感”だったよね?」


 リゲルが少しだけ固まる。


「ふふっ、やっぱり図星。

 “うれしいけど素直になれない男子”って顔してたもん、あのあと。

 もう、かわいいなぁ。ラピスちゃんよりボクのほうが先に気づいちゃったかも?」


「……べつに、そういうんじゃ……」


「うんうん。そういうの、いちばん“そういう”なんだよ?」


 リゲルが言葉を失っていると、ぴーちゃんは満足そうに羽根をぱたぱたと揺らした。


「ま、がんばったリゲルには、特別に“今日だけ許してあげる”けどさ」


「……許すって、何を?」


「んー? 内緒っ♪」


 そう言って、ぴーちゃんは得意げに笑った。

 まぶしいピンクの羽根が、その笑みの背景を飾っていた。


「だからさ、今日もちゃんと、リゲルがリゲルでいるとこ――

 ボク、しっかり見ててあげるからね」


 リゲルが何も言えずにいると、ぴーちゃんはふわっと顔を近づけて、小さな声でささやいた。


「……がんばりすぎたら、ちゃんと褒めてあげるよ。

 ボク、“日曜日のごほうび”担当だからさ」


◆ハクと早朝合流(学校・遊戯室)

 日曜の早朝。人気のない校舎に、パネルをタップする指の音と、淡く電子的なスキルボイスだけが響いていた。


 中央の卓上スクリーンの前に座っていたのは、ハク。

 長身を少し折り曲げ、制服のジャケットを椅子の背に引っかけたまま、片腕だけで迷いなく操作を続けている。


 画面には、戦術カードゲーム《フェイズ=リンク》の盤面が広がっていた。


 フィールドは、お互いに3×3のマス目で構成されている。

 1ユニット1マスのみを占有するが、ターンごとに任意の役割に変更できる。

 縦の位置には「アタッカー」「ガード」「サポーター」の役割が割り当てられ、横方向には最大3つのチーム(ユニット群)を展開できる。


 ――このゲーム最大の特徴は、「ユニットの種類」ではなく、「配置されたマスの位置」によって役割が決定する点にある。


 すべてのユニットは“全領域対応型オールラウンダー”。

 場所こそが役割を決める、動的で戦術的なゲーム構造を持っている。


 ユニットの配置は、毎ターン1体という制限はなく、コストが許す限り複数同時展開が可能。

 このため、序盤から盤面を埋める“アグロ型”の速攻も、現実的な戦術として成立する。


 一方、防御型も軽視されていない。

 ガードがダメージで摩耗した場合、後列のユニットと入れ替えて防御陣形を再構築できるため、“受け回し”や“耐久型”の柔軟性も備える。


 また、特殊スキルを持つユニットも存在する。

 「狙撃型」――敵アタッカーやサポーターを直接攻撃できる。

 「耐性型」――支援スキルがバニッシュされず持続するなど、独自の特性が多数ある。


 ドロー構造も深い読み合いを生む。

 初期手札は多め、以後は毎ターン2枚ドロー。

 展開スペースが広く、1ターンの判断回数が多いため、“今”と“次”の両方を考慮する設計となっている。


 そして最も特異なのは――このゲームでは、デッキのすべてが“ユニット”であるという点だ。


 TCGで一般的なスペル・装備・支援カードは存在せず、それらの機能はすべてユニット内に内包されている。


 たとえば、《陽炎散華隊・コルナ》。

 低コストアタッカーだが、ガードを無視する火力スキルと全体支援サポートを兼ねる。

 さらに、「1コスト支払いでリーダーに直接攻撃する火炎スペル」を即時供給する能力を持つ。


 つまり、《フェイズ=リンク》は「カードを使う」のではなく、「ユニットに演出させる」。

 多重機能を内包することで、構築と読み合いの深みを極限まで高めている。


 ――現在、ハクが操作しているのは、いつもの終盤型とは異なるアグロ寄りの火風属性構成だった。


「……陽炎、また焼き切れた。やっぱ耐久バニッシュには弱すぎる」


 スクリーン左上、《陽炎散華隊・コルナ》がレベル1サポートスキルを発動。

 直後、CPU側の《星守封陣隊・ミルティス》がレベル2のバニッシュスキル【結界封印】を発動。


 支援ダメージは無効化され、直後の反撃で、HPの低い《コルナ》は盤面から消えた。


 サポートスキルは強力だが、同レベル以上のバニッシュで打ち消される。

 つまり、支援の成否には「スキル効果」だけでなく、「レベル差」も重要なのだ。


「これがあるから、相手に来ると嫌なんだよな……」


 ハクはターンを送りながら、配置コストと盤面の状況を見直す。


「アグロって、“速い”だけじゃ勝てない。……やっぱ苦手だな」


 ――そのとき、扉が静かに開く音がした。


「おはよう、ハク」


 入ってきたのはリゲル。

 昨日の模擬戦を経て、どこか表情が引き締まっている。


「助かった。ボク、今、火力型で迷走してたとこ」


 リゲルはスクリーンを一瞥する。

 《陽炎型制圧者・フィス》。火と雷の複属性。

 支援強化リーダースキルを持ち、テンポ勝負に特化したアグロ向けカードだった。


「それ、普段の君じゃないよね」


「相手に来ると苦手だから、自分で使って研究してる。……でも、攻めながら考えるって、本当疲れる」


 一通りログを見終えたリゲルは、空いている椅子に腰を下ろす。

 スクリーン中央が明るさを増し、対戦モードに自動で切り替わった。


「じゃ、今日は“中速型”で行くよ。後出しで変えられないうちに」


「やっぱり君、そういうとこ頭回るよね」


 ハクが笑いながらリーダーを選択する。

 画面には、2つのリーダーカードが並んだ。


 静かな朝の校舎に、次なる読み合いの火蓋が落ちる。


◆対戦開始

【序盤展開:リソースとテンポの両立】

 1ターン目、リゲルは《飛燕機動隊・ネリス》をサポーター列、

 《閃刻の鳩翼・イヴェル》をアタッカー列に配置。


 イヴェルは次ターン開始時に0コストスペルを1枚供給する効果を持ち、

 ネリスはアタッカー強化(攻撃/応援)効果を持続的に発揮する。


 加えて2ターン目、もう一列に0コスト供給型のアタッカーおよびガードを1体ずつ展開。

 合計4体による早期プレッシャー体制を築く。


 3ターン目、リゲルは《煌光記録者・ユルノ》を追加展開。

 ユルノは「リーダーに攻撃するたびに追加ドロー(1回/ターン)」と、

 「ダメージを受けたガードユニットを回収」する擬似的なコスト変換を兼ね備えており、

 リソース面で極めて強力な補助効果を発揮する。


 さらに、《因果刻書・ラグゼ》を発動。

 このカードは「ウルトカード供給型ユニットをデッキから1枚サーチ」する効果を持つ。


 該当ユニットは《戦律伝導装置・リヒト》のみのため、確定サーチが成立。


 この時点で、終盤フィニッシュへの準備が徐々に整い始める。


 リーダーHP差はまだ拮抗していたが、5ターン目、リゲルはテンポ押しに成功。

 ハクのリーダーHPを【12】まで削ることに成功した。


【中盤:マナ加速と盤面構築の攻防】

 ハクは序盤から《晶光供給炉》《風律拡張術式・サリエル》によるマナ加速構成を採用。


 中盤以降は、《迅雷重歩兵・バルクス》《雷閃獣・フォトナス》《閃滅竜・グレイヴ》といった

 高コストユニットを続々と展開。盤面の枚数で優位を取っていく。


 6〜7ターン目、リゲルはついにHP【4】まで追い込まれる。

 盤面も2体まで圧縮され、防戦一方の展開。


 ここでリゲルは、《律変換士・メルカ》をサポーター列に配置。


 メルカの効果は――

 「自分のリーダーHPが相手より低い場合、防御スペル1枚の使用コストを永続的に【0】にする」


 リゲルはこの効果で、《零律結界・セフティア》を指定。


 結果、《セフティア》は以後、一切のコストを支払わずに使用可能となった。


 この“逆境専用の0コスト化”により、劣勢から盤面を立て直す布石が確保された。


【終盤:再構築と防衛の継続】

 8ターン目、リゲルは《不壊障壁・イジェルノア》をガード列に展開。

 すべてのマナを、この1体の防御ユニットに注ぎ込む。


 イジェルノアの効果は――

 「自軍サポーターが存在する限り、破壊されない」


 サポーター陣を保護しながら、時間を稼ぐ構えに入る。


 同時にリゲルは、アタッカー列に潜伏させていた《音速斥候・スリヴァ》を

 後列のサポーター列へ強引に移動させた。


 スリヴァは“攻撃対象にならない”アタッカー専用ユニット。

 サポート機能も一切持たず、火力もないため、通常なら“空席”同然の存在。


 それでも、リゲルはこの1体を使って――

 《イジェルノア》の条件「サポーターの存在」を無理やり満たした。


「……入れ替え、完了」


 声は静かだったが、その判断には明確な意志と計算があった。


 意味のないカードを、意味ある場所に置く。

 それが、このターンを“耐える”ための最適解だった。


 9ターン目、リゲルは満を持して《戦律伝導装置・リヒト》をアタッカー列に展開。


 登場時、リヒトは【極閃解放・リヒトブレイカー】を手札に加える。


 同時に、0コスト化されていた《零律結界・セフティア》を発動。


 セフティアの効果は――

 「自分と相手のユニット数の差 ×1、リーダーへの被ダメージを軽減」


 この時点で、リゲル:2体、ハク:7体 → ユニット差【5体】 → 軽減【5点】


 ハク側の攻撃ユニット《フォトナス》(攻撃6)・《グレイヴ》(攻撃7)は

 セフティアにより、それぞれ【6→1】【7→2】に軽減。


 合計ダメージ:3点

 リゲルのリーダーHP:4


 ――ギリギリ1残して、生存成功。


【リーサル:奇跡の逆転フィニッシュ】

 10ターン目、リゲルのマナは最大値の【10】。


 《極閃解放・リヒトブレイカー》のコストはちょうど10。


 その効果は――

 「このターン中に使用したスペルカードの枚数 ×2のダメージを相手リーダーに与える」


 リゲルは、これまで温存してきた6枚の0コストスペルを一気に連打:


《煌めく羽根》


《刻導のひとひら》


《閃撃演舞》


《余光収束》


《星殻解析》


《烈環の残響》


 いずれも単独では効果が薄いが、このタイミングでの多重使用こそが切り札。


 → 使用スペル数:6枚

 → ブレイカー効果:6 × 2 = 12ダメージ


 この時点で、ハクのリーダーHP:12


 ――ジャストダメージ成立。


 《極閃解放・リヒトブレイカー》、発動。


 戦場に響く閃光。

 走る閃撃は、ハクのリーダーHP【12】を正確に貫き――


 リゲル、奇跡の逆転勝利。



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