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【第六話「2on2」】④

主人公:名前はリゲル。太陽双子座、月魚座。孔雀のような雰囲気を持つ少年。

    戦術家だが感情に流されやすい。

    この世界の外側の異形と関わり合う職業のアバター使いを進路に志望。

    現在3人目のチームメンバーを探している。

 親友:名前はハクラビ愛称はハク。太陽天秤座、月蠍座。すごく顔がいい。

    知らない物の値段を当てる特技がある。

    裏表のない性格、深刻な場面でも軽口を叩く。育ちが良くて挫折知らず。

お嬢様:名前はライサ。太陽しし座、月牡羊座、鞭と強烈な雷を使う。

    アレッタのチームメンバー。

    防御手段は、雷幕結界。近接すれば近接するほど相手は大ダメージ。

    長く美しい髪と強烈な釣り目が特徴。気品がある。

    相手を不快にしないお嬢様言葉が特徴、作中5本の指に入る美人キャラ。

    精霊は雷雲を纏ったユニコーン型。

幸運娘:名前はアレッタ。太陽いて座、月双子座。精霊はニワトリ型。

    アバターはニワトリっぽい大きめのフードのライサのチームメンバー。

    武器は大弓、防御手段は高硬度の卵型のシェルターを使う。

    高火力なので遠距離戦でアレッタを倒そうと思うのはやめた方がよい。

    陽気な性格の頭残念キャラだが、作中5本の指に入るラッキーキャラ。

    口を閉じて髪を伸ばして上品な服を着たら超絶美人。

◆模擬戦後


 勝利のブザーが会場に鳴り響いた瞬間――

 ギャラリーから、大きな歓声が沸き起こった。

 スタンド席の一部では、名前を呼ぶ声まで聞こえる。


 「ライサ!」「アレッタ――!!」「ハクもリゲルもかっこよかったぞ!」


 歓声は四人に惜しみなく注がれ、場内は祝祭のような空気に包まれていた。


 やがて、アバター化装置が作動し、戦闘フィールド中央に二本の光の柱が立ち上る。

 粒子へと還元された四人の姿は、一瞬の静寂ののち、観客の見えない第二区画――控室前の転送区画に再構成された。


 蒸気のような揮発音とともに、制服姿の四人が姿を現す。


 「……ふう」


 リゲルがそっと息を吐き、肩からビットの残滓を払い落とす。

 そのすぐ向かいに、アレッタとライサの姿。


 「やりますわね、貴方たち」


 ライサはゆっくりと髪を整えながら、正面からリゲルたちに視線を向ける。

 その頬は熱を帯び、わずかに赤らんでいた。


 かすかに乱れた呼吸と、微細な汗の粒。

 それが、彼女が本気だった証だった。


 「こんなに押し込まれたのは……本当に、久しぶりですわ」


 唇に指を添え、目線を落とす。

 戦いの最中に感じていた緊張と興奮――

 その余韻が、今もまだ身体の奥で脈打っている。


 「ふふ。困りましたわね。私、自分でも気づかぬうちに、こんな試合を――こんなふうに心から、望んでいたみたいで……」


 滲肌に残る火照りは、勝ち負けを越えた“何か”に満たされている証のようだった。

 彼女は目を伏せ、柔らかな横顔を見せる。

 ――そこには、孤高の女王の面影はなく、ただ年相応の少女の姿があった。


 「うん。負けたケド……なんか、気持ちよかった」


 アレッタが制服の裾を直しながら、背伸びをする。

 小柄ながらも腰や胸のラインが目立ち、ふわりと髪が揺れる。

 その表情には、試合の余韻を名残惜しむような笑み。


 「ねえねえ、ちょっと思ったんだけどサ」


 ぴょこんと一歩前に出て、リゲルとハクを覗き込む。

 柔らかな制服の生地が動きに合わせて揺れ、可愛らしさと洗練が同居していた。


 「もしかして、あたし、君たちのこと……好きになっちゃうかもヨ?」


 「……は?」


 リゲルが硬直し、ハクは「おおっと」と一歩下がる。

 それを見て、アレッタはくすくすと笑う。


 「冗談だってば。でもサ――」


 片目を閉じてウィンクする。


 「このメンツで戦ったの、楽しかったよ。ちゃんと、またやろうネ?」


 その言葉の奥には、確かな敬意があった。

 リゲルも、ハクも、小さくうなずく。


 「うん。次は、絶対勝つからネ」


 アレッタの宣言に、ハクが笑う。


 「次も“全部読まれる前提”でやらなきゃだね。実は、最後集中力切れてたんだ」


 その言葉に、ライサが意外そうに目を向ける。


 「……正直、最後までどちらが勝つかわからなかった。いや、100回やったら多分、俺たち5割切ると思う」


 リゲルが素直に感想を述べる。


 「もっと喜んでほしいですわね」


 ライサはくすりと笑って、リゲルたちを見やる。


 「お二人のどちらか、わたくしたちのチームに入らない?」


 予想外の誘いに、リゲルとハクは目を見合わせた。


 「……え、それ、マジで?」

 「あはは」


 戸惑いつつも、どこか悪くなさそうな様子。


 「ライサが他人を誘うなんて、珍しいネ……」


 それだけ、彼女たちとの一戦が充実していたということだった。


 ライサは反応を楽しむように、片手を軽く振る。


 「冗談よ」


 その声には、気品と遊び心、そして名残惜しさが混ざっていた。


 「でも、今日は本当に素晴らしい時間だった。私たち、組んでから、防衛で負けること、今までなかったから」


 観客の喧騒をよそに、転送区画の空気だけが、まるで別の時間を生きているかのように、静かだった。



◆部屋から出た直後


 疲労の余韻がまだ体の奥に残っていたけれど、廊下の空気はやけに静かだった。


 控室手前の曲がり角。ラピスが後ろで手を組んで、背の高い観葉植物の上の方を眺めていた。


「……来てたんだ」


 リゲルが声をかけると、ラピスはゆっくりと振り返った。


「うん。お疲れ」


 その声には、どこか迷いがにじんでいた。目元にはわずかなクマ。額の髪も少し乱れている。おそらく生徒会の仕事のまま、抜け出してきたのだろう。


「試合、どうだった?」


「……勝ったよ。一応」


「そっか」


 ラピスは笑った。けれどそれは、微妙に釣り合いの取れた距離感を保つ笑みだった。


 リゲルは少しだけ迷ってから、声をかける。


「ねえ、ラピス。……よかったら、俺たちのチームに入らない?」


 ラピスは目を見開き、それから視線を外す。


 観葉植物の葉先をそっと撫でながら、言った。


「うれしい。でも、ごめんね」


「……そっか」


「生徒会で知り合った、気の合う子たちと組む予定なの。もうちょっと、ゆるいやつら」


「……どんな奴?」


 リゲルの問いかけに、ラピスはぽかんとしたあと、ふふっと笑った。


「全員女の子。しかもちっちゃくて丸っこいのばっか」


 思わず口元がゆるむ。


「……それ、ラピス2号と3号?」


 ラピスは一瞬きょとんとし、すぐに眉をひそめてリゲルの腕を軽くつついた。


「ちがうし。あたし、もうちょいシュッとしてるし」


「どこが」


「このへん!」


 輪郭を両手で囲ってみせるが、ややおぼつかず、すぐに目を逸らす。


「……わかってるよ。似てるって言われるの、ちょっと、うれしいくせに悔しいんだから」


 不自然なほどまっすぐな声。その裏にある小さな棘が、リゲルには痛いほどわかった。


 けれど、彼は返す言葉を見つけられず、代わりに静かに笑った。


 ラピスもまた、観葉植物の影に顔を隠すようにして、ぽつりと呟く。


「でもね――その子たち、私のこと、ちゃんと見てくれるの。見た目とか、声の強さとかじゃなくて。……へんな話でしょ」


「……へんじゃないよ」


「うそ。絶対ちょっとはへんって思った」


 ふっと息を吐き、再びリゲルの方を見る。


 その瞳には、揺れるような不安と――ほんの少しの誇らしさが宿っていた。


「まあ、みんなをラピス2号とか3号とか言うようなやつには、チーム入ってあげませんけど」


「それは……ごめん」


「……うそ。ちょっとだけ、うれしかった」


 言ってから、ほんの一瞬だけ、リゲルの目を正面から見つめた。


 だがすぐに、その視線は葉裏へと逃げた。


 リゲルは沈黙を破ろうとしたが、言葉が見つからなかった。小さく咳払いする。


「じゃあ、こっちも聞いてもいい?」


「ん?」


「……ああいう、“キラキラしてる女の子”って、どう思う?」


 急な話題にリゲルは戸惑う。


「キラキラ……?」


「ライサとか、アレッタとか。目が大きくて、笑顔も強くて。……なんか、光ってる感じの子たち」


 少し考え込んだ末、リゲルは困ったように笑った。


「……でも、三人並べたら、ラピスが一番、目、大きいんじゃない?」


 ラピスは思わず咳き込むようにして横を向いた。


「そういう意味じゃないってば……!」


 リゲルが少し笑うと、ラピスもゆっくりと表情をゆるめた。


 その顔を見て、リゲルも安堵したように肩の力を抜いた。


「……でも、ありがとう。なんとなく、今のリゲルのことがわかった気がする」


「うん」


 その一言には、照れとも安心とも名残惜しさともつかない、複雑な色がにじんでいた。


「……じゃ、がんばってね」


「そっちも」


 ラピスは手を振るでもなく、ただそっとその場を離れていった。


 リゲルはしばらく、その背中を見送る。


 廊下には誰かの足音と、遠くから聞こえる放送部の音声が混じっていた。


 小さくため息をついたとき――彼の耳には、ラピスの言葉がほんのかすかに残っていた。


 ――いつも通りのラピスだった。


 それが、どうしようもなくほっとして。


 だから、明日はちゃんと“次”に進もうと思った。3人目を――今度こそ、見つけるために。


 アバターから生身になったはずなのに、体のどこかが、まだ少しだけ痺れている気がした。


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