第十二話 つくづく
ノーマンと離れたところからいくらか進んだところで大きな壁で囲われた街に辿り着いた。
遠くから見える街の出入り口そこでいつの日か見た光景がそこにはあった。
「また検問かよ……」
まぁ街の出入り口なのだから当たり前の事なのだがこうも検問が多いと何か嫌になるものがある。
「それじゃあどうしますか? どのようにあの検問を?」
「今考え中……」
前回の検問はノーマンの助力あってこそ乗り越えられた。
しかし、ノーマンとは既に分かれている。会うつもりもないのでノーマンの助力は望めない。
だったら大人しく金貨を渡そうにも一銭も持っていないのでそれも無理。
また行商人に手を借りようとしても夜も更けてしまって誰もいない。
だとしたら――。
「――強行突破以外策はないような気がする……」
やはり、不本意だがピョンと壁を越えるしかない。
今のコンディションでピョンと越えられるかは不明だが。
「主様、あの検問が金貨の支払いが目的だとはまだ決まっておりません。一度赴かれてはダメ? いかがでしょう」
そう、そうだまだ金を払うと決まった訳ではない。
訳ではないのだがそれで払わなくてはならなくなった場合門番に顔を見られるのがまずかった。
もし万が一不法侵入して門番の人と鉢合わせたら一発でバレてしまう。
「そうだ、リチャード認識阻害の魔法とかないか?」
それがあれば都市入りも幾分か楽に……
「そんな便利なものがあれば既に主様の盤上に追加されている事でしょう」
それもそうだ。そんな便利なもんはない。うんうんじゃあ素で行くしかないね。
という事でなんの策も無しに二度目の検問に挑む。
「こんな夜分に何の用だ」
と、これまた強面な兵士がそう告げる。
「それが、私旅のものでして。そこいらを放浪しているうちに食料も何もかも底をついてしまって……そんなときにこの都市を見つけたので」
「そうか、それは大変だったな」
と同情の眼差しを兵士はこちらに向ける。いける、そう確信したとき兵士は右手を差し出した。
「あぁ、お金ですか? それなら……」
「違う! 所持品の検査だ。お前の持ち物を全て出せ」
そう言われても持ち物は身体とコウモリチャードと服ぐらいしかなく懐をまさぐってでてきた小さな麻袋を手渡す。
すると、兵士は不思議そうな顔をしていた。
「これだけ……か?」
「あ、はい。そうですけど……」
兵士は右手で眉間を揉み麻袋をこちらに返してくれた。
すると門を開け、右手を開いた門の方へ向ける。
「通ることを認めよう」
「え、あ、ありがとうございます」
呆気なく越えられた検問に口をぽかんと開けていたがとりあえず迷惑だから通ろう。
すると俺が兵士の横を通りかかったとき耳元で囁かれた。
「頑張れよ」
どうやら誤解を生んでしまったようだ。
まぁ、使えるタイプの誤解なのでこのままにしておく。
という訳で都市に入れた。
どうやらここは商業都市トライネスというらしい。
商業都市というほどなのだから色々と情報が集まってくるだろうから俺は情報収集をした。
だが、これといって有用な情報は入ってこず唯一気に留めたものが王都クジムウェルから勇者一行が魔王の元へと北上を始めたのだという。
なんとも勤勉なことだ。だとしたら、クラスメイトより先回りするためにも早くここを発たなくては。
そうして俺は冒険者協会へと辿り着いた。
冒険者協会は至る所にあり冒険者へのサポートをしているという。
そこで俺がこれから行うのは別に冒険者登録をしようという訳ではない。
「ようこそ、冒険者協会へ。どのようなご用件でしょうか?」
色々と思いに更けている間にどうやら俺の番が来たようだ。
眼前には制服に身を包み、豊満な胸、整った顔そして緑髪の女性がこちらに微笑みかけていた。
「魔物の素材の買取ってできますか?」
「はい。冒険者認定の札はお持ちでしょうか? お持ちでない場合は1割ほど手数料として引かせていただきます」
「持ってないです」
「承知いたしました。ではこちらへ」
と言われ、別室まで連れて行かれた。
するとそこには先ほどの女性とは違う、ぽっちゃりとした男性が座っている。
こちらを見ると広角を上げ右手を差し出してきたのでその手を握る。
「初めまして、私は鑑定士のジョージ・デミロスと申します」
「あぁ、初めまして。テンバ・ハヤトです」
「ハヤト様ですか。今回は買取して欲しい魔物の素材があるということで」
「はい。これなんですけど、まぁ、その、ついてる血は気にしないでください」
俺は机の上に牙を3個ほど置く。
これはトライネスについてから気づいたものだ。
なんか前々から足が痛いと思い、トライネスについて少しゆっくりできるからと足を見ると、深々と牙が突き刺さっていた。
そこで、足しになればと思い買取をお願いしたのだ。
「はいはい、なるほど狼種の牙が3つ……ん? え? は?」
と明らかに困惑しているようで先程まで浮かべていた笑みも刹那のうちに無くなっていた。
「あの、訊きたいことが、この狼種は白い体毛を持っていてそれが紫色に変色したりしましたか?」
あの思い出したくもないでかい狼のことかな?
「はい」
「となるとこの牙はフェンリルのものでしょう」
あれ? フェンリルって俺の知る限り……。
「牙3本で金貨30枚でどうでしょうか?」
そうだよね、それくらいになるでしょ。あれ? 俺そんなの倒してたの? そりゃ強い訳だ。
唖然としていると、ジョージは苦い顔をして。
「それならば金貨40枚で……」
「いいですいいです、30枚で。お腹いっぱいです。すみません少し驚いてしまって、」
「本当に、良いんですか? フェンリルですよ?」
そもそもこの世界のフェンリルの存在価値はまだ教えてもらってない。
「あ、そうだ。差し支えなければ世界地図って貰えますか? そもそもありますか?」
「えぇ、ありますし全然良いですよ。そんなもので良いんですか?」
「はい、全然全然。助かります」
ジョージは首を傾げて不思議そうな顔をしていたが、そもそも地図が欲しかったのもあるので全然良かった。
そうして受付まで戻ってまた彼女と面と向かっていた。
「こちら、金貨27枚と地図になります」
金貨と丸まっている地図を受け取る。
金貨は麻袋に入れるとして、地図を広げる。
おっと、どこがどこだかわかんね。国ぐらいか?
「すみません、ちなみにトライネスってこの地図のどこら辺にあるんですか?」
と訊くと彼女は快く指を指して教えてくれた。
俺はそこへ周りから見えないように指を噛み切って血で印をつける。
意外と魔大陸は近づいているようだ。
魔大陸というのは負の魔力が漂う大陸でそこに魔王がいるらしい。
それにしても、今日は良い収穫があった。
金貨を大量に手に入れ、地図で自分の場所も把握することができた。
「キャァァァァ!!」
そんな思いに更けっていると、悲鳴が聞こえた。
その場に駆けつけようと思ったが、俺の素性がバレるとまずい。
一瞬のうちに様々な思考が巡った。
が、しかし、
「俺もつくづく……」
悲鳴の聞こえた方に行くと大きな二足歩行の豚と先程の兵士が相対していたが兵士が押されているように見えた。
俺は兵士と豚の間に飛び込んで行き兵士の剣を奪って豚の首を一閃。
兵士は尻餅をついて何が起きたのか信じられないような表情を浮かべていた。
兵士の背後を見ると薄水色のドレスに身を包んだ茶髪の女性が凛と立っていた。
彼女はこちらの方を見て近づいてくる。
「お礼がしたいので、私のお屋敷まで来ていただけないでしょうか?」
あれ?
どうやら何かまずいことになってしまったようだった。
読んでいただきありがとうございました。誤字脱字などアドバイス等ございましたら教えていただきたいです。




