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第十三話 お礼と返礼

最近忙しくてあまり執筆できなかった為、急いで書き切りましたので何処かおかしいところがあるかもしれません。

「お礼がしたいので私のお屋敷まで来ていただけないでしょうか」


 そんなことを眼前の彼女は言った。

 魔物に襲われていた女性へと救世主が駆けつけもう大丈夫と声をかける展開を俺は望んだというのに。

 口から言葉を出す前に彼女から言われることとなってしまった。


「はい? えぇっと……」


「すみません。自己紹介がまだでしたね。もう私ったら……」


 彼女は頭に手を当てて首を横に振っていた。

 するとスカートの端をつまみ上げてこちらに礼をした。

「コホン、私はアリス。アリス・クロネスと申します」


「俺はテンバ・ハヤトだ」


「ハヤト様、ですね。先程も言いましたがお礼がしたいのでお屋敷まで来ていただきたい……いや、来てください」


 まさかの強制かよ……まぁ、嫌な予感しかしないが礼をしようという相手の気持ちを無下にはできないからな。

 仕方ない行くとするか。


「わかった。それで屋敷ってのはどこに? 俺の都合的に今からのが良いんだけど」


 そう言うとアリスは笑顔になる。


「全然今からでも構いませんよ。お屋敷は……あれです」


「あれ? ……え、」


 アリスは俺の背後に指を指す。

 振り返り指の刺す先を見てみると、遠く。おおよそ街の中心部にぼんやりと大きな屋敷が見えた。

 まさかと思いその屋敷の方に人差し指を向ける。


「まさか……屋敷ってあれ?」


 するとアリスはキョトンとした顔をする。


「それ以外何があるって言うんですか?」


 おいおいマジかよ。

 これは……想定より面倒臭いことになりそうだな。


 その後、アリスの後に続いて屋敷に向かった。

 屋敷は遠くで見たよりもはるかに大きくて驚いてしまった。

 屋敷に着くなりアリスは走って屋敷を取り囲む壁の門の前に行った。


「じいや! じいや! 開けてください!」


 すると門がゆっくりと開き、その先に白髪の老人が胸に手を置いてこちらに礼をしていた。


「お帰りなさいませお嬢様。おや? そちらは……」


 と老人がこちらに気づく。

 するとアリスが何故か胸を張って答えた。


「こちらの方は私の命の恩人で、お礼がしたくて連れてきました」


「それはそれは。お客様でしたか、こんな夜遅くにお嬢様の我儘にお付き合いいただきありがとうございます」


 そう言って老人は深々と頭を下げてくる。

 その行動に驚いて俺は目を丸くさせた。


「いえいえそんな、それに俺の都合でこんなに夜遅くに来てしまってすみませんでした」


「ほら、爺や先ずそのハヤト様を屋敷にあげなさい」


 そう言うとアリスはズンズンと屋敷へと入って行った。

 アリスが入っていくのを老人は目で追った後、俺に「行きましょう」と言ってきたので老人と一緒に屋敷に這入る。

 歩いてる途中、ずっと沈黙していてどうにもその空気に耐えかねた。


「それにしても大きなお屋敷ですね」


 そう言うと老人は片目でこちらを一瞥した。


「そうですね、確かに一般的に見たら大きな屋敷なのでしょう。しかし、お嬢様の地位を考えましたら少し小さいと思いますけどね」


 あのふてぶてしいお姫様は一体どんな人なんだよ。こんな屋敷でも小さいくらいだなんて。


「へぇ、そうなんですね。そう考えると偉いお嬢様だこと」


 口の前に手をかざしてそう言ってみたが老人は表情を全く変えなかった。

 ま、執事のような見た目だし変わらないようにしているのだろう。


「あ、そういえば名前を聞いてませんでしたね」


「名前、ですか。こんな老耄の名など聞いたところで何かが生まれるとは思いませんが」


 自分のことをそんなふうに言うのはあまりいただけない。

 それに、誰かの名前を訊いても不利益を被るなんて有り得るはずもないし。


「大丈夫ですよ。これでも俺は人が好きなんで」


 老人は溜息を一つこぼした。


「そうですか、ならばお教えしましょう。私はテッド・アレステイ」


 そうして会話のキャッチボール……どこか一方的だった気もするけど、取り敢えず会話をしていた。

 すると、今まで屋敷で見たものよりも大きな扉へと辿り着いた。

 その扉をまじまじと眺めているとテッドが扉を開いた。


「さぁ、こちらへ」


 促されるまま進むと豪華な椅子に座るアリスがいた。

 テッドは横で跪く。

 その姿を見やり俺も慌てて跪く。


「あぁ、そんな跪かなくても……それに恩人に跪かれるとなんかこう、嫌な気持ちになります」


 つい先程まで印象とは打って変わってとても弱々しくしている。

 そんなアリスを眺めているのも面白かったが可哀想だから取り敢えず立った。


「それじゃあ気を取り直して。コホン、今回はこのアリス・クロネスを助けていただきありがとうございました。そこでお礼として……じいや」


「はい。只今」


 テッドが奥に行って数分経った頃、拳ほどの大きさの袋を持ってきた。


「これは?」


 俺がそう訊くとアリスは顔に笑みを浮かべる。


「そちら、金貨60枚となっています」


「60!?」


 60枚なんてフェンリルの牙6つ分だぞ、まだ検証していないから日本円にするといくらか分からないが相当な額のはずだ。


「本当に、良いんですか?」


「はい。あの、不躾だとは思いますが一つお願いをしてもよろしいでしょうか」


 お願い? 一体何なんだまぁ、取り敢えず聞いとくだけ聞こう。


「良いですけど」


 そう言うとアリスの顔がパッと明るくなる。


「その、実はですね。現在私の付き人がじいやしか居ないんですよ。それで、先の件もありますし、その……私の護衛を引き受けてくれませんか?」


 護衛、か。でもここから先魔大陸にクラスメイトよりも早く行かなくてはならないし……。


「引き受けてくれるのならその二倍のきん――」

「――やりましょう」


「即答!?」


「はい。やはり困っている女性を助けるのが男性の義務ですので」


「誰から見てもお金に釣られたようにしか……まぁ、私から頼んだ手前あまり言えませんけど」


 お金に釣られる? 一体誰がそんなことを。

 もし俺に対して言っているのだったらそんな不名誉なことやめてほしい。まったく


「あぁ、それと。俺特異体質で陽の光浴びると発疹が出るから夜中だけになるけど大丈夫?」


「はい。私に、危機が訪れるのは決まって夜中なので」


 大丈夫なのか。よかったこれで金銭面の問題も解決ってなわけだ。


「それでは、これからよろしくお願いします」


 俺は全力で笑顔を作る。


「よろしく、アリス」

===== =====


 アリスとの交渉から数時間経った頃俺はアリスに提供された部屋のベットに寝転がりリチャードと念話をしていた


『ってもアリス凄くないか? 120枚金貨がポンって出せるんだぜ』


『そうですね。それよりよかったのですか? ここに留まらない? 留まることになって』


 そう言うリチャードだが、もう既に決めた事だ。

 とっくに腹は括ってる。


『大丈夫だよ、リチャードその分急げば良いそれにこれで金銭面の問題も解決しそうだしな』


『そうですか。主様がそうおっしゃるのなら』


 あれこれリチャードと話していると部屋のドアが叩かれたので開ける。

 予想通りテッドだった。


「どうしたんですか?」


 そう訊くとテッドはどこか難しそうな顔をしていた。


「恐らく、お嬢様はお話しされていないと思いますので言いますね。お嬢様の護衛の重大さを」


「重大さ?」


「はい。お嬢様はフィアルス王国王候補であられます」


 はい? ってことはアリスは――


「――王女ってこと?」


「はい」


 その真偽はテッドの表情から見て取れた。それにあれだけの大金がポンポン出てきたことにも合点がいく。

 これは、想像以上に面倒なことになった。

読んでいただきありがとうございました。次回は来週の月曜日23時ごろとなると思います。これからも応援よろしくお願いします。

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