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第十一話 腹の中

 ノーマンと共に国境を越えた俺たちはノーマンの引く馬車の荷台の中で揺られていた。


「すみません。ノーマンさん昼の間馬車を引いてもらって」


 布の膜がかかっていて姿が見えないノーマンにそう話しかける。


「いやいや、大丈夫だよ。それにしても大変だね、日の光を浴びると発疹が出るなんて」


「自分の体質なんてもう慣れたもんですよ」


 と、そう返す。

 吸血鬼の日光を浴びれないという特異体質がノーマンと行動を共にする上で悩みの種であった。

 そこで日光アレルギーだと偽った。

 もしそれで訝しんでくるのならば気合いで日光を浴びようとしたらノーマンに止められたのでアレルギーであることで終着した。


 それにしてもノーマンにはずっと貰ってばかりでこちらからは何もしてあげられていないのが少し心に引っかかっている。

 やはり恩はしっかり返すというのがスジだがノーマンにそれを言っても断られてしまうので困ったものだ。


「それにしてもすみませんね、ノーマンさん。やっぱり何か……」


「大丈夫だよ。君が分かってないだけで僕はそれなりに君からしっかりと貰っているからね。特に魔物が活性化する夜なんて大助かりだよ」


 と笑っているノーマンだった。

 確かに夜の魔物は俺が倒しているがそれでもノーマンには何か備えがあるはずで俺はその代わりでしかなく――。


『主様、そんな事をずっと考えていても埒があきません。だったら彼の善意を素直に受け取った方がいい? よろしいかと」


 リチャードの声が脳内に響く。

 絶賛衣服の中に潜伏中のリチャードだが主従での念話がどうやら可能なのであった。

 リチャードの声が急に響いてきた事に始めは驚いてしまっていたが今では慣れたものだ。


『そんなこと言ったって……まぁそっか……』


「そうだ、ノーマンさん。ちなみに今どこに向かっているんですか?」


 と尋ねるとノーマンは鼻を鳴らした。


「まあまあ、それはついてからのお楽しみ……どうしても知りたいっていうなら大きな都市ってとこだよ」


「都市……」


 俺はまだこの世界でクジムウェルの王都以外の街に行った事が無いから都市といってもどこまでの規模なのかがあまり想像ができなかった。

 それにしても、随分と遠くまで来た。

 最初に召喚された王都から約110キロといったところか。

 そう考えると吸血鬼の力は凄まじかった。100キロ程度の距離を1日足らずで走破できる。

 でも陽の光浴びれないのがなぁ、やっぱりお日様の元で日向ぼっこするのが1番――。


「――ッ!」


 急に視界が歪み天地が逆さまになったような感覚を覚え、床に手をついた。

 それと同時に腹の虫が……腹の、虫?

 外はすっかり暗くなりかかっていた布が取られていてノーマンの姿が見えていた。


「……」


「あ、そういえばハヤト君まだご飯食べてなかったよね……僕が腕によりをかけて――」


「腕まくりして準備万端のところ悪いんだが俺はここらへんで降りていくよ。その都市まではここから真っ直ぐで良いんだよね?」


「あ、あぁ。良いけれどどうしたんだい? 急に降りるだなんて都市までまだまだ先だよ」


「いやぁ、それがその都市に行く前に少し寄るところがあってさ、そこまでノーマンさんに苦労かけるつもりはないよ」


「そうか……わかった。どうか気をつけて」


「あぁ……」


 そうして俺はノーマンの馬車を降りた。

 降りて、馬車が見えなくなるまで手を振り続けた。

 ノーマンには本当に感謝しかない。その恩を仇で返す事になって申し訳ない気持ちでいっぱいだが、

 それよりも確認すべき事が――


「――リチャード、聞きたい事がある。」


 衣服の中からリチャードが出てきて人の形に変わった。


「……なんでしょうか主様」


「吸血鬼の主食はなんだ……」


「我々は、主に……人の血肉を喰らいます。他の動物のものでも問題はありませんが栄養価が低く人の約1/100程まで落ちてしまいます」


「そうか……」


 奥歯を強く、強く食いしばる。食いしばった奥歯が砕けて口中に錆びた鉄の味が広がる。

 が、砕けた奥歯は再生した。だが、遅い。

 つい先日と比べたら圧倒的に遅いのだ。再生の速度が遅くなっていた。

 それはあの狼との戦いを彷彿とさせるものだった。

 つまり、俺はあの時同様消耗している。

 ならばそれを回復する手段は何か、そう血肉だ。

 これであの血溜まりが狼のものでその狼の身体は自分の胃に治ったのだと理解できた。


 そして、今回の空腹感と眩暈。

 その後に見たノーマンの印象は今までは申し訳なさや優しい。といったものだったが美味しそうだと、その一つだけに支配されてしまった。

 俺はそんな吸血鬼の性に呑まれた自分を殺したくなる。

 そして、もうこれから人と極力接しない方が良いだろう。

 俺の理性が俺の食欲を止めているうちに、この解決策を見つけなくてはならない。


「でも、兎にも角にも都市には行くしかないのか……」


 俺は八方塞がりとなった自分の状況に眉間に皺を寄せる事になった。

読んでいただきありがとうございました。誤字脱字やアドバイス等ございましたらコメントよろしくお願いします。

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