第五話
『やはり失敗。完成に近づいているという実感さえわかない、虚しい作業が続く。
否、作業ではない。×××たちは私たちの理想のためにいるのだ。これは作業ではない、作業などではない』
白い箱の謎が解ければ、あとは日課だ。もう昼間に樹へ寄ることもしない。
友人には、ようやく樹の観察に飽きたのか、という呆れと安堵が混ざったような目を向けられたが、適当にあしらっておいた。
『成功か? ×××××を切除し、×××を強制的に活性化させた。×××術で、一応の成果は出た。
だが、適合者が少な過ぎる。そして、最大の欠点は××を確認する手段がないことだ。表層だけで判断するのは危険に過ぎる。しかし、××へ辿り着いたのか確認する確実な方法がない。
つまり、失敗。私が目指すのは、全ての××××において十全の結果が出る手法である』
日々、黙々とノートを読み進めていく。
最初にあった日付の記入が、ある日を境に突然なくなり、書いている人間に余裕が無くなってきたのか、段々と文字が乱れていく。否定的な単語が目立つようになってきた。
そして。
初めて『ここ』へ足を踏み入れてから、数日後。
『どうすればいい? これ以上はない。これ以上の方法がない。そして、これ以上×××に負担をかけることは、できない。しかし、しかし、しかし…』
『否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否…』
「っ!」
思わずノートを放りだし、後ずさるほど埋め尽くされた『否』の文字。
今までと違い、紙を破るかの勢いで黒々と書かれ、蠢くソレを前に背筋がぞっとする。
しばらくして、床に落ちたノートを拾い上げ、恐る恐るページをめくる。
『私見であるが、まず初めに、彼が行った×××××からのアプローチは、結局のところ失敗であると結論せざるを得ないだろう。
何故なら、彼が唯一到達したと書いていた×××術でさえ、当人が指摘した通り、成功率が著しく低い。
とはいえ、彼も私も、完全なる××を目指していることに変わりはない。そして、誰か一人でも例外があってはならない、という気持ちも同じだ。
だからこそ、彼とは違う方向性で私は××を掴み、与える必要があるのだ』
と、角ばった文字が、次には細くやや読みづらい文体に変わっていた。
かすれて判読できない箇所があるのは相変わらずだが、間違いなく、別人が書いただろう、日記。日誌。
だけど、外は明るくなりつつある。時間切れだ。
続きは……明日。




