表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

第三話

 普段からつるんでいる友人と、僕自身の感覚からして、ソレは、日中にはほとんど現れず、日が落ちていくほど、周囲が闇に侵食されていくほど、はっきりとした形をとると分かった。

 そして、『見える』人間には何かしらの条件があるらしい。僕以外にも、何人かが、見えてる気がする、と言っていた。

 とはいえ、その条件がなんなのかは、はっきりとしない。


 それは置いといて。


 今日はこの予想が正しいのか確認するために、町の灯りがほとんど落ちた時間帯、つまり深夜を狙って、樹までやってきた。


「……………あった」


 闇に飲まれた巨木。

 赤いほど赤い果実も闇と同化し、黒一色に塗りつぶされた、巨大な樹。

 虫の声もなく、草木が揺れる音もなく。

 全てが停止したような樹の傍らに。


 ソレが、あった。


「見える…見えた」


 以前馬鹿にされたような、薄い存在じゃない。はっきりと、認識できる。

 元は白だっただろう、褐色の、蔦が這った四角い箱状のソレが。


 慌てて近づいても、ソレは消えることなく、実体を持って僕の前に鎮座していた。

 目の前に並ぶ、皹が入ったガラス窓の奥は暗く、しかし月明かりで、ベッドのようなものや、カーテンと金属棒が合わさった、仕切り台などが確認できる。

 窓の横を見やれば、これまた皹が入ったスロープがあり、錆びてはいるものの手すりが設置されている。正面には、割れたタイルが並ぶ三段の階段。


 そして、入り口。


 巨大な皹が入ったガラス扉は完全に閉まっていて、全面に埃なのか土なのか、蜘蛛の巣なのか、とにかくそういったモノに侵食されていて、中を見通すことは出来ない。

 どこからどう見ても、長い間放置されていた、診療所。

 看板も、他に特徴的な、ソレが何の建物か答え合わせをするような物はないが、確信できる存在だった。


「………」


 ごくり、と唾を飲み込むと、錆が浮いた扉に、汗で濡れた手を、伸ばした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ