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5機目 芦原班①

搭乗型人体機能拡張ギア『エクススケルトン』(神武重工・開発)((みなと)開発・改良)

 人用外骨格とも呼ばれているが、開発者曰く「全身を使う竹馬」

 元は工事現場での作業効率化のために造られたものである。その後幾度となく改良され、現在SAT芦原班に配備されているモデルは最新型であり、機能性などは元のものとは比べ物にならないほど向上されている。


光学ガドリング・21式師木島改(神武重工・開発改良)

 従来の光学銃に改良を加え、異なる波数の光を撃ちだしガドリングのように使うことを可能とした最新光学兵器。


その他用語

・スラスター

 推進装置

・パージ

 兵器の使用しない部分・使用できない部分を切り離す行為

「ったく、どーしてたまの休暇に出勤しなきゃなんねえんだよ」

「先輩、そんなこと言わないで下さいよお~」

「ほら、2人とも余計なこと話していないで、さっさと装備する!」

「ちょっとちょっと、芦原(あしはら)さん。今回の装備、流石にこれはやり過ぎじゃ……」

「あんたもうっさいわね。上層部(うえ)がやれっていうんだから仕方ないでしょ!」


 そう言いながら、駅のホームに4人の男女の姿があった。彼らは警察警備部所属の特殊急襲部隊、通称SAT。その中でも最新兵器などを扱い迅速にテロ集団を制圧する芦原班の面々だ。


 今回彼らが装備しているのは、開発者たちからは人用(ひとよう)外骨格とも呼ばれているとのうわさを持つ、搭乗型の人体機能拡張ギア『エクススケルトン』。生身の人間とは比較にならない圧倒的機動力を得れるだけでなく、防弾防炎などでおなじみのプロテクトガードの役割も果たしてくれるものだ。また、今回はオプションとして火炎放射器と光学ガドリング(※レーザー兵器)が両腕に、追加スラスターが腰につけられている。


 芦原班の一人、君萱(きみがや)が心配するのはこのオプションにつけられている光学ガドリングだ。試験的に死刑囚で試したところ、目を失明させるどころか頭部を吹き飛ばしたり発火させたというとんでも実績をもっている。そんなものが火炎放射器とセットでついているのだ。

また、普段なら9mm弾を使用する自動小銃(アサルトライフル)だけであるということもあいまって、彼はこのような発言をしたのだろう。


 だが、班長の芦原にとってはそんなことはどうだっていい。


「今回の相手は既に警官隊を数名殺している。上層部(うえ)からは生死を問わず制圧してこいって言われてんの」


「あれ、芦原。このスラスターってまだ試作品じゃなかったか?」

神原(かんばら)さん、ええそのとおりよ。一応爆発しそうになったらそのまま投棄しなさい。」

「それ、あとで始末書書かないといけなかったりしねえだろうな? せっかくの休暇を返上してきたのに始末書書くとか俺は嫌だぜ」

「そうね、それじゃあ爆発に巻き込まれて死になさい」

「う、うーっす」





「全員、準備はいいわね? それじゃあ、今回の任務の再確認を行います。目標(ターゲット)は5km先にいる共産主義勢力の過激派武装集団およそ5000人。鎮圧に向かった警官数名を殺したあげく、この線路を使って今なお上京中とのこと。敵の主武装は自動小銃、最後方には列車を改造した移動式の大砲と対空砲あり。我々芦原班は武力を持ってこれの制圧にかかります。なお、目標の生死は問わないとのこと。質問は?」

「芦原班長、この装備で生け捕りって難しいと思うのですが……つまりヤっちゃうだけでも良いんすよね?」

「あら、今日も伊勢くんは威勢がいいわね。上がこの装備を支給したということはそういうことだと思うわよ。他には・・・・・・ないわね。それじゃあ3km先まで使い捨ての背部のスラスターで移動していくわ。システム起動」

「「システム起動」」


命令受諾(アクセプト)、推進システム執行(エクスキュート)


 無機質な音声が4人の耳付近にあるスピーカーから流れる。制御システムの声だ。外部骨格(エクススケルトン)自体は電気を使用しないのだが、オプションとして付けられる装備などにはこのように制御システムが用いられている。


 使い捨て背部スラスターで3km先に到達したのは2分後だった。


─警告、背部スラスター燃料、残り50%


「燃料が持つからこのまま突っ込むわよ。パージのことも考えて各自散開!」

「「了解」」


 いつもなら3kmも移動すれば燃料は30%をきるのだが、どうやらスラスターもいつもとは違うものだったようで、芦原は報告になかったと不満に感じながらこのまま敵陣に突っ込むことを選択した。


─警告、背部スラスター燃料、残り10%


「目標視認。突入後スラスターパージを忘れないこと。戦闘開始(エンゲージ)!」


命令受諾(アクセプト)、パージ執行(エクスキュート)


「SATが来たぞー!!」

「迎撃しろおおお!!」

「憲法改正しろお!!」

「もっと移民を受け入れろ!」


 スラスターにより得た運動エネルギーはそのままに、4人は敵陣に突っ込んだ。前線に立っていた武装集団の人間は10メートルほど跳ね飛ばされ、動かなくなる。

 突入してからパージされたスラスターはパージ時の横向きの力と慣性力により、斜め前方へ飛翔していき、さらに広範囲の人間を無力化させた。


 突入後5秒、たったこれだけの時間で500ちかくの命が消えたのだ。


 先ほどまで聞こえていた罵声は阿鼻叫喚に変わり、肉塊と化した元同志の姿をみて失神している者すらいる。


「俺たちが何をしたっていうんだよおおお」

「投降するから殺さないで!」

「こっちには未成年だって、人権団体だっているんだぞ!」

「は、配信してやる!」


 そのようなことが聞こえてくるが、芦原班の面々は動じることはない。

 班長の芦原と新人の君萱にとってはただの仕事。

 神原にとっては休暇を潰された憂さ晴らし。

 そして、1人スラスターのパージを最後まで残し、敵陣中央まで突入していくような戦闘狂の伊勢にとってはただの快楽行為の1つでしかない。


「エヒッ、さあ素敵なパーティの時間だあっ!」


 よくわからないままにやってきた人、跳ね飛ばされた味方、鉄片などにより命を落とされた味方……脳での情報処理が追いつかないままに後方にいた武装集団の人間は伊勢の使う光学ガドリングにより頭部を焼却され、火炎放射器により残った体も炭化させられていった。


「芦原さん、芦原さん。伊勢のやつまたあんなこと言ってますけど。」

「アレはほっといてもなんとかなるでしょ。どうせ、聞いてる奴らなんてもう死んでるでしょうし問題にならないから構わないわ。それより問題はあのおっさんよ、何があったのあれ。」


 芦原と君萱は線路の両端から逃げようとする面々に光学ガドリングで頭を撃ち抜いていっていた。

 そして、芦原が心配する神原(おっさん)はというと


「休日返せやゴルァアア!!」


 線路中央をスラスターを使い力で進んでいた。


 彼の進路上にいるものは跳ね飛ばされ、蹴とばされていき、横にそれた者は火炎放射器で焼かれていた。


─警告、サイドスラスターの温度が急上昇、爆発の恐れがあります。即時パージを推奨。即時パージを推奨。


「どうせ爆発するなら最後まで使ってやらあっ!」


 神原はスラースターをパージすると伊勢の横に向けて投擲し、光学ガドリングで打ち抜き爆発させた。


「ゲホッゲホ。おいおい、おっさん。面白いことするじゃん。ゴホッ」

「おいこら伊勢!おっさん言うなし。お父さんかお兄さんって呼べ!」

「あははは、でもスラスターを爆弾に使うのはいいなあ。俺もやるぜエヒィッ」


 気持ち悪い笑いをしながら伊勢はスラスターを外し、武装集団の最後方部。彼らが最終兵器として持ってきていた80cm列車砲に向かって駆け出す。


 スラスターを外したのにもかかわらず、伊勢はスラスター装着時とほぼ変わらない速度で人々の頭上を駆け抜けていく。一直線上でカーブや段差がないというのももちろんだが、エクススケルトンを最適に運用することができる伊勢にしかできない(わざ)だ。


「一人、列車砲のほうに向かったぞ!」

「対空砲使って撃ち殺せえええ!」

「良いけど、空からまた来られたらどうすんだよ。味方を巻き込んじまう。」

「んなこと言ってる場合か! さっさと撃て、ほらはやく」


 彼らは急いで迎撃しようとしたが、あまりにも遅すぎた。

 もしこれが他の芦原班ならまだ迎撃は間に合ったことだろう。対空砲が間に合わなくとも、近距離まで迫ってこられていたら列車砲周辺の者たちが銃で蜂の巣にすることができただろう。

 彼らが砲を向けたときにはすでに、伊勢によって投擲(・・)されたスラスターが列車砲の上に到達していた。


「じゃあな」


 伊勢は迷うことなく光学ガドリングを放ち、弾薬への誘爆を起こした列車砲は炎に包まれた。

2章は1章とは違い、SATの芦原班がメインになります。

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