4機目 邂逅②
「私の方から説明させていただきます」
清水が俺と高天原社長の間に割って入る。
何をどう説明するつもりだ?
「何をどう説明するつもりだ、そうお二人はお考えだと思いますが、正直に話します。まず東亜連合が他の企業グループとの協定を組んだ件についてはそこにいる中村からのデータやアカウントからと言いましたが、正確にはそれだけではありません。」
「ほう?」
「おい、旅人。そこから先は・・・・・・高天原社長、少し失礼します。ちょちょちょ、旅人。」
まずい。
旅人のやつ、俺がハッキングかけて洗いざらいに調べ上げたことを言うつもりだ。
高天原社長に断りを入れ、旅人の方を抑え、壁のほうへ向く。
「いやいや、流石に言うのはまずいって。な?」
「一騎の気持ちはわかる。けど、ここは正直に言ったほうがいい。ほら、いつも言ってるだろ? 『情報の開示。それが理解への唯一の道』って」
「いや、そうだけど。そうだけどさあ。」
確かに、いつも俺はそういっている。だけど……
「なあ、一騎。いつもみたいに信じてくれないか?」
「わかったよ、わかった。ごめん。失礼しました高天原社長、私の方から説明させていただきます。」
「ああ、私はどっちからでもいいよ。それにしても君たち面白いね。」
その後は淡々と経路も含めて、神武重工・秋津洲グループ、そして東亜連合のデータバンクにアクセスしたこと。そして秋津洲グループが造り上げた超高度AIの1体『Suizei』をよく利用してハッキング等を行っていることを詳細に話した。
「ははは、君たち本当に面白いね。特に伏見君、君は噂以上の人間のようだ。」
高らかに笑い出したかと思うと、すっと手を差し出してきた。
「私からは合格だ。これから一緒にいい仕事が出来ることを楽しみにしているよ。」
「えっ?」
「神武のデータバンクにもアクセスしていたのなら知っているだろ?」
「shelterですか?」
東亜連合の物流システムから、極秘ファイルの管理まで。ユーラシアで最強のシステム屋『 shelter』
代表と社名、各サービスの価格以外は誰にも何も情報が出ておらず、ネットが世界を包み込んだといわれている現代の会社とは全く考えられない会社であり、神武重工もその取引先の1社だ。
同じ東亜連合だから、多少の価格交渉はしてもらえているようだが、それでも年利益の4割近くを代金として持っていかれるので、高天原社長としては『shelter』に依存しなくても良いシステムにしていきたのだろう。
「その通り。親の私たちですらどうにもできないあの子と仲良くできているんだ。正直、新入社員として入社してもらいたいくらいだ。ああ、もちろん清水君もね。」
「なる……ほど。あ、ありがとうございます。」
「ちょっと待ちい。うちらはまだかまへんでとは一言もゆうてへんで?」
「葵意姉さん。いつも、いーっつも言ってるけど。ここはもう俺の会社なんだ。それからこれはうちの会社の話のはずだけど?」
葵意姉さんと呼ばれた彼女は秋津洲葵意。プロジェクターで表示された秋津洲グループ幹部のうちの一人で、『CyberBallet』の女社長だ。
本来なら、彼女が神武重工の代表になっていたのだが、彼女の父・健太が弟の息子に会社を譲ったのだ。そのせいなのかは知らないが、どうやら目の敵にされているらしい。
「情報があらへんだけで、他んとこの人間かもわからへんやろ?」
「いや、もしそうだとしても他の「それに、それにや! 一応この後のこともあるから全員で決めるから見に来てくれって言ったのはあんさんやろ? どうなん、他の人ん声聞かんでかましまへんの?」
「ああ、もうわかった。わかった。わかりましたから。えー、それじゃあ皆さん伏見君たちを神武の協力企業に入ること。それからWW3の作戦に参加させることと。以上2点に反対の人はどれだけいますか?」
「うちはいいと思うけどなあ。事実を隠ぺいすることなく話してくれたところに交換持てたしね。」
と日本国内の運輸システムを牛耳っており、神武の犬でおなじみ『白犬ムサシ』の秋津洲誠也。
「私のところも、特に問題はありませんわ。」
と今度は日本有数のトイメーカー『高雄堂』の伊勢京子。
この二人を皮切りに、他の代表たちも同じように賛同の意を表してくれた。
「じゃあ、問題はないよね。よし、そ「いや、まだや!」ええ……今度は何をしろと。」
「研修や!」
「「は?」」
「清水っちゅう子は、あんたはんが面倒見たるんやろ? その間、伏見っちゅうそっちの子はうちが見たるゆうとるんや。なーんもややこしい話とちゃうやろ?」
もう言っていることはめちゃくちゃだ。
ただ、彼女の会社の研修にはかなり興味はある。
どういった風に話が進むのかはわからないが、少なくとも旅人は神武重工率いる開発チームとともにあの兵器の開発に行くことだろう。その間、俺は1人で特にやることもなく、今までと変わらず、アプリ開発や更新をやるばかりだ。
「ああ、そうくるのね。うーん、伏見君さえ良ければ一か月から半年、彼女の会社に研修としていくのはどうかな。もしくは、研修じゃなくて技術顧問として指示をしに行くのも手だけど」
「なっ、あんたうちの社員らを馬鹿にしてるやろ! 伏見はん、なーんもおとろしいことはあらへんからな!」
「面白そうですし、勉強にもなりそうですから。お……私は行きたいです。」
「よっしゃ、決まりやな。それじゃあ伏見はん、来週までに奈良まできい。リニアの駅ついて、連絡くれたら迎えよこすさかいに。」
「あ、わかりました。」
ほな、というとプロジェクトマッピングの彼女は姿を消した。
その後は高天原社長が他の幹部たちに頭を下げて、今回の話し合いというか最終選考というか、よくわからないものになった話し合いは終わった。
あれ、冷静に考えてみるとこれから最低一か月はあの濃い人の下で働くのか、頭が痛い。いや、この場合頭痛が痛いのほうがぴったりな気がする。
「なあ、旅人。なんか、面白いこと始まりそうだよな。」
「俺としてはまさか酒の席で書いた落書きがここまでになるとは思っていなくて、まだ信じられないよ。」
明日から、俺は準備をして奈良にある『CyberBallet』に研修。そして、旅人は開発チームと本格的に開発会議が始まる。
初めての経験だらけの明日からが楽しみだ。
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