3機目 邂逅①
「今日の喋る内容は大丈夫か、一騎」
「ああ、任せろ。俺には俺がついている。それに旅人、お前のおかげで準備は十二分にできているんだ、心配することは何もない」
そう言いながら、持ってきたアタッシュケースを指さす。この中には、今日使う資料とパソコンが入っている。
琢磨の置き土産と彼の性格、そして俺が事前に調べ上げていた情報をもとに旅人と2人で1つのシナリオを作り上げた。恐らくは俺たちが用意することができる最良の手段だ。もし、どこかに穴があったとしても琢磨との友情に傷がつくだけだし、あいつの場合はそういうのも気にするような人間じゃない。要するに、今回はどう転んでも俺たちに利しかない。
本社ビルを目の前としてもまだ緊張せずに入れるのは、これが心の支えになっているからなのかもしれない。
「さあ、仕事の時間だ!」
受付に声をかけるとすぐに会議室へ案内された。中には人事部部長・里見健二、琢磨……そして
「高天原社長……」
「よく公に顔を出していない私が社長だとわかったね。噂には聞いていたが君の情報収集力は確かなようだ。伏見社長と……清水君だっけ? ようこそ、神武重工へ歓迎するよ。」
高天原天智。28歳という若さにもかかわらず、この神武重工株式会社 第12代代表取締役社長兼執行役員社長。そして、秋津洲グループの現会長だ。
「大まかな話は中村君の方から聞いていると思う。まあ、少し話もしたいから席にかけてくれ」
「失礼します」「……ども」
席にかけると同時くらいに、空席だったところに立体プロジェクトマッピングで人が次々と投影されていく。いずれも社長や代表取締であり、そして全員秋津洲グループの幹部だ。
「ああ、彼らも同席したいと言っていてね。構わないかな?」
「ええ、私たちは別に」
「彼が例の伏見くんかい?」
「ええ、今回うちの下についてくれることになった会社の1つ。そして、計画の最重要人物です。さ、伏見くん。呼んでおいてなんだが、ここまでの流れから君はまず私に言うことがある、違うかな?」
「はい。私たちから今回の契約について、いくつかご質問させていただきたいことがあります」
アタッシュケースから資料を取り出し、高天原社長たちに渡す。
恐らくだが、ここまでは予想通りと言ったところだろう。
遡ること3日前。
琢磨の資料、そして俺が調べたデータ。それらを基に、まずは今の自分たちや世界について、前提条件に『第三次世界大戦は起こる』『琢磨が参加企業になることを断らせようとしている』この2つを置き、情報を整理しながら仮説を立てた。
まずは1つ目、神武重工が高校時代の旧友を使い最後の試験をしている説。
うちの会社はいわゆるシステム屋。正確な情報を処理できるか、判断はどうか、上に内部の情報は知らせるか、それらを見られており、第三次世界大戦などは昨今の時事からよりリアリティを出すために話題に出したのではないかというもの。
琢磨の性格を考えるとこれはありえそうだが、俺が調べたして得た情報を含めて考えると可能性は無いに等しいだろう。それに何より前提条件に少し沿わない。
次に2つ目、琢磨が神武重工以外に属している人間だという説。
彼の性格上、そして持っている情報から考えるとこれが正しいだろう。
なら、次の問題だ。琢磨はどこに所属している人間なのか。
神武重工で無いのなら、必然的に秋津洲グループ以外だということになる。また、協定の性質上、東亜連合関連でもないということも確定だ。
それ以外となると、他の三大企業グループになるのだが、『ヨーロッパ連合』、ここも外れる。
彼らは企業でありながら、血統と名誉をもっとも重んじており、その姿は封建的な王政さながらだ。そんなところに、なんの繋がりもない部外者の彼が入れるわけがない。また、入ったとしても彼らはこのような卑劣なことはしてこないだろう。
よって、利益の為なら手段を択ばないあのM.G.A.N.に違いないだろう。留学しに行ったあと就職した、そう考えると繋がりについても説明がつく。
そして、あの企業は神武重工の技術を喉から手が出るほど欲しがっており、その為にスパイをかなり神武重工へ送り込んでいる。
「以上のことから、私たちは『中村琢磨はM.G.A.N.の関係者であり、神武重工のスパイである』『第三次世界大戦の際のカードを奪い、政府だけでなく、東亜連合をはじめとする他企業も潰そうとしている可能性がある』という結論に至りました。また、これらについて全てを知っていたうえで、高天原社長をはじめ神武重工は最終試練として彼を私たちのもとに送ったのではないのではないかと考えております。そのうえでお尋ねします、最終選考はこれでクリアでしょうか?」
そう、彼らはこのことを全て知っていた。知っていたうえでわざと琢磨を俺たちによこした。そうして得た情報をこの場で話すのかどうか、それを試されているのだろうというのが旅人の導き出した予測だ。
「今の話、とても面白かったのだが……」
だが、なんだ。
恐らく、ここまでがわかるかどうかが最終選考になっているというのは間違いないはずだ。
たしかに、あの日立てた仮説だと前提条件に沿わないが、冷静に考え組み込んでみると正しいはずだ。
「だが……そうだな。あ、その前にこれだけは言っておこう。君たちの予想はほぼ正解だよ。そして、話を戻そう。君の情報源について、私から聞きたいのはそれだな」
手渡した資料を机に置き、高天原社長はこちらを見てさらに続ける。
「先ほども言ったように、君の情報収集力は素晴らしい。だが、君の話を聞いていていくつか気になる点があった。まずは1つ目、第三次世界大戦なんて馬鹿げた話の可能性を捨てるという選択肢を一切取らなかったこと」
「そ、それはっ」
思わず声が上ずってしまう。声が出ない。
そんな俺を気にすることなく、高天原社長は続ける。
「そして2つ目。たしかに、我々は中村君や、その他あのグループの息のかかった人間が所属していることを黙認している。だが、このことはごく一部の人間しか知らない。私と、ここにいる秋津洲グループ幹部それだけだ。なのに、なぜ君はM.G.A.N.から送り込まれている人間がいることを知っている?」
「待ってください社長! 私は、スパイなんかじゃありません!」
「中村くん、君の話は聞いていない。少し黙りなさい。それで、どうなんだね伏見くん。」
「それは……」
「それは……なんだね?」
「それについては伏見からではなく、私、清水が説明させていただきます」
次週、旅人が動きます
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処女作ですのでつたないところはあると思いますが、感想で教えていただけると嬉しいです。




