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生物室と一般教室の間には、視聴覚室、理科室、資料室、など、普段あまり使われていない特別教室が並び、基本的に人通りはない。逆に、それを目的に、さぼり目的の生徒が来る程度。今も、秘密の話でもするために、生物室の前の廊下に誰かが来たのかもしれない、と思った。
ここにいることが見つかってしまったら、高確率でバカにされる。あいつ、あんなところでなにしているんだろ、ってな具合に。嫌だなあ。
わずかに身を固くしながら、声の気配を読んでいた。
梅雨の中休み、といった天気で、異様に暑い日だった。カーテンを閉め切っていても、屋外の気温が壁を通し、じりじりと室温をあげていた。
話し声は、まだ続いていた。廊下は、まだ幾分涼しいのだろうか。
意識を向けて、ふと、感じた。
おかしい。
微かな声は聞こえ続けているけれど、人の動く気配がしない。じっと座り込んで話していたとしても、身動きする制服の衣擦れや、上履きが床にこすれる音くらいはするはずだ。顔をあげて周りを見回して、気付いた。
声は、廊下ではなく、もっと近くで聞こえている。教室前方の黒板の向こう側あたりから。入ってはいけないといわれていた、準備室になっているはずの場所から。
なるべく静かに椅子を引き、席を立ち、忍び足で声の元に近付き、黒板に耳を寄せた。
「う、うう……うう」
聞こえてきたのは、女性の、くぐもったうめき声。まさか。
ぞくり、と背筋が凍った。いや、まてよ。これは、この前、彼女が言っていた、七不思議じゃないか。さては、僕を驚かそうとして、隠れてこんな悪戯を仕掛けてきたんだな。
呆れて肩を落としてため息を吐き、準備室のドアを開けた。
覗くと、正面と奥側にカギのかかる戸棚があり、そのガラスの内側の棚には、なんらかの薬品が入っているであろう瓶が並んでいた。古い資料や、副教材、空の水槽。忘れ去られ、時の中に置き去りにされつつあるものたち。彼女の姿はなかった。




