P4
次の日、唐突に熱を出した。
唐突、でもないのかもしれない。ここ数日、妙に体がだるく、疲れが取れない感じがしてはいたから。気付かずに夏風邪をひいていたのだろう。
彼女と話せると思うと、学校に行くのも楽しみになりつつあったのに、休むなんて。いや、皆勤賞の不登校児というのも、妙か。
自分でも呆れるくらい、ずっと眠っていた。そして、その間、夢を見ていた。
内容は覚えていない。いい夢だったのか、悪夢だったのかすら、よくわからない。懐かしいような、切ないような、思い出したくない、けれども大事な記憶のかけらのような、そんな印象の夢だった。夏の明るく力強い空に、入道雲。その駆け出したくなる景色に、やがてくる雷雲の不穏さを予感させるような、そんな夢だった。
目覚めても夢と現の境界線は曖昧で、どちらの世界でも、疲れ切っていた。
彼女は、今日も生物室にいるのだろうか。準備室に隠れて、ふいに訪れる先生の視線から逃げているのだろうか。唸り声や、すすり泣く声を、聞いたりしているのだろうか。
三日ほど休み、まだ病み上がりではっきりしない体で、登校した。
いつも通り、今日の分のプリントを受け取り、生物室のカギを開け、適当な席について解きはじめた。
彼女は、あの奥の準備室に隠れているのだろうか。今にもそっと出て来はしないかとちらちら気にしていたけれど、一向に扉の開く気配はしなかった。僕が休んでいる間に、自分の教室に戻ることにしたのかもしれない。もしかしたら、本格的に不登校になってしまったのだろうか。
頭の隅でそんなことを考えながらプリントを解き続けていると、どこかで人の声が聞こえた気がした。




