表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
84/110

81.よっこらせ

「なんだ?外が騒がしいな」


「そうだね。なんだろう?みんなが来たのかな・・・?」


 時間が経って落ち着いたのか、いつもの調子を取り戻したのか雰囲気が戻っている。やっぱり、大したことじゃなかったんだろう。


 俺は身体をうまく動かして扉まで近づき、聞き耳を立てる。


(奴らが現れたぞ!)


(どこだ!?皆を集めろ!迎撃するぞ!)


――なんだ?魔物でも現れたか?だとしたら、こんな森に棲んでるくせに間抜けだと笑ってやりたい所だが・・・。


「なんだろうね?本当に来てくれたのかな」


 その可能性もありそうだが、だとしたら、些か早すぎるな。俺たちが到着してそんなに時間が経ってはいない。

 こんなにすぐ迎えが来るなら、ぴったり後ろにでも張り付いて尾行でもしてたんだろう。となれば、移送中の方が救出しやすいはずだ。


――わざわざ、助けにくくなってから動き出すなんてことするか?


――こいつの友人ってことなら・・・あり得そうなのが困るな...。


(――破滅)


(近づけ――)


――チッ。距離が離れたか。全部は聞こえなかったが、なんだ?


「どこかに行ったみたい」


「今なら・・・扉さえ開けばでれるかもな。それが、開かないんだが・・・」


 耳を引っ付けていた扉に目をやる。


 見た目は木材で作られているようだが、中身は違うように感じる。入ってきた時のことを思い出せば・・・木の扉にしては、あまりに分厚かった。内部に何か入れて強固にしているんだろう。

 枷もただの鉄とは比べ物にならない素材で作っていそうだしな。扉も同じような素材で作られてると考えた方がいい。だとすると・・・壊すのは無理か。


 鍵ならどうだ?いや、開けるにしても魔法が使えないんだろ。それに、部屋に物がなさすぎるな。細い棒でもあれば、もしかしたらできるのかもだが・・・。


――俺はピッキングなんてやったことねぇがな。


 どれもこれも無理だと思っている横で、地面に寝ころびながら足裏を扉に向けている少年がいた。


「おい、なにやって――」


――ドォォォン


 両足で思いっきり扉を蹴りつけていた。人が蹴ったような音ではなく、獣の突進並みの音が衝撃と共に鳴り響くが・・・扉が壊れる様子はなかった。


「まじか、壊れないこともそうだが・・・とんでもないガキがいたもんだな」


――マジもんの化け物じゃねぇか!


「痛てて・・・もう一回!」


 同じような大音響を何度も繰り返す。だが、扉は壊れない。


 やっぱりか。頑丈そうだと思ったが正解だな。これじゃ、何度蹴ろうとも壊れることはなさそうだな。


「その辺でいいだろ。足が壊れるぞ」


 無駄な行為を繰り返す意味はない。体力も身体も無限じゃない、なら別のことに使った方が良い。


――その別のことがないのは変わらないがな。


「フゥ・・・何度蹴っても誰も来ない。今の内に試せるだけ試したいんだ。ボスさんに考えることは任せたよ!」


 全く諦めた様子がなく。やれることは全部やろうという意思が伝わってくる。


 任せるったって・・・俺が考えて生きてきたようにでも見えるのか?

 ・・・でも、こいつよりは俺の方がマシだと思えるのだから。やるしかないか。


――ドォォォォォン


 他にできることか・・・壁の方が脆いなんてことあるか?いや、流石にないだろうな。なら、他の通り道・・・例えば、空気を通す穴かなにか。人が通れないとしても・・・俺だけなら通れるんじゃないか?


 横のユイトに目をやる。


――ないな。


 これだけ、熱心に頑張ってるガキがいて、俺だけが逃げるなんてことはできないわな。


「フッ」


 自虐の想いは少しの自嘲で終わらせる。それよりも他の脱出方法を考えていると。


――ドォォンバッ!


 ん?なんだ今の音。

 音の方向へと目をやると、扉は今も健在なのは変わらない。ただ、扉の横の壁・・・についている。壁と扉を繋ぐ蝶番とでも呼べばいいのか。とにかく、開け閉めに使う部品が取れかけていた。


「いけるかも知れねぇ!」


「本当!?」


 ハッ!なんでもやってみるもんだな。こいつ最初からそれが狙いだったか?


 そこまで考えちゃいなそうだな。まったく、がむしゃらにやるのも捨てたもんじゃねえってか。


――ドォォォォン...ドン!


「開いた!」


「すごいな」


 こいつ、やりやがった。


「行こう!ボスさん!」


「...あぁ・・・行くか」


 多少所ではない。枷を両手両足に嵌められているせいで、途轍もなく不格好な歩行方法・・・両足飛びで脱走する。


 近くにいたからか、あまりにもユイトが純粋だったせいかはわからない。感化させられたのかもしれない。

 いつもなら、悪態をつきながら、格好を気にして気取っていたかもしれない。でも、今はまるで・・・昔の暴力に対抗するために全力で走り回っていた少年時代。それぐらい――


 未来に前向きだった。


 ―――――――――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ