81.よっこらせ
「なんだ?外が騒がしいな」
「そうだね。なんだろう?みんなが来たのかな・・・?」
時間が経って落ち着いたのか、いつもの調子を取り戻したのか雰囲気が戻っている。やっぱり、大したことじゃなかったんだろう。
俺は身体をうまく動かして扉まで近づき、聞き耳を立てる。
(奴らが現れたぞ!)
(どこだ!?皆を集めろ!迎撃するぞ!)
――なんだ?魔物でも現れたか?だとしたら、こんな森に棲んでるくせに間抜けだと笑ってやりたい所だが・・・。
「なんだろうね?本当に来てくれたのかな」
その可能性もありそうだが、だとしたら、些か早すぎるな。俺たちが到着してそんなに時間が経ってはいない。
こんなにすぐ迎えが来るなら、ぴったり後ろにでも張り付いて尾行でもしてたんだろう。となれば、移送中の方が救出しやすいはずだ。
――わざわざ、助けにくくなってから動き出すなんてことするか?
――こいつの友人ってことなら・・・あり得そうなのが困るな...。
(――破滅)
(近づけ――)
――チッ。距離が離れたか。全部は聞こえなかったが、なんだ?
「どこかに行ったみたい」
「今なら・・・扉さえ開けばでれるかもな。それが、開かないんだが・・・」
耳を引っ付けていた扉に目をやる。
見た目は木材で作られているようだが、中身は違うように感じる。入ってきた時のことを思い出せば・・・木の扉にしては、あまりに分厚かった。内部に何か入れて強固にしているんだろう。
枷もただの鉄とは比べ物にならない素材で作っていそうだしな。扉も同じような素材で作られてると考えた方がいい。だとすると・・・壊すのは無理か。
鍵ならどうだ?いや、開けるにしても魔法が使えないんだろ。それに、部屋に物がなさすぎるな。細い棒でもあれば、もしかしたらできるのかもだが・・・。
――俺はピッキングなんてやったことねぇがな。
どれもこれも無理だと思っている横で、地面に寝ころびながら足裏を扉に向けている少年がいた。
「おい、なにやって――」
――ドォォォン
両足で思いっきり扉を蹴りつけていた。人が蹴ったような音ではなく、獣の突進並みの音が衝撃と共に鳴り響くが・・・扉が壊れる様子はなかった。
「まじか、壊れないこともそうだが・・・とんでもないガキがいたもんだな」
――マジもんの化け物じゃねぇか!
「痛てて・・・もう一回!」
同じような大音響を何度も繰り返す。だが、扉は壊れない。
やっぱりか。頑丈そうだと思ったが正解だな。これじゃ、何度蹴ろうとも壊れることはなさそうだな。
「その辺でいいだろ。足が壊れるぞ」
無駄な行為を繰り返す意味はない。体力も身体も無限じゃない、なら別のことに使った方が良い。
――その別のことがないのは変わらないがな。
「フゥ・・・何度蹴っても誰も来ない。今の内に試せるだけ試したいんだ。ボスさんに考えることは任せたよ!」
全く諦めた様子がなく。やれることは全部やろうという意思が伝わってくる。
任せるったって・・・俺が考えて生きてきたようにでも見えるのか?
・・・でも、こいつよりは俺の方がマシだと思えるのだから。やるしかないか。
――ドォォォォォン
他にできることか・・・壁の方が脆いなんてことあるか?いや、流石にないだろうな。なら、他の通り道・・・例えば、空気を通す穴かなにか。人が通れないとしても・・・俺だけなら通れるんじゃないか?
横のユイトに目をやる。
――ないな。
これだけ、熱心に頑張ってるガキがいて、俺だけが逃げるなんてことはできないわな。
「フッ」
自虐の想いは少しの自嘲で終わらせる。それよりも他の脱出方法を考えていると。
――ドォォンバッ!
ん?なんだ今の音。
音の方向へと目をやると、扉は今も健在なのは変わらない。ただ、扉の横の壁・・・についている。壁と扉を繋ぐ蝶番とでも呼べばいいのか。とにかく、開け閉めに使う部品が取れかけていた。
「いけるかも知れねぇ!」
「本当!?」
ハッ!なんでもやってみるもんだな。こいつ最初からそれが狙いだったか?
そこまで考えちゃいなそうだな。まったく、がむしゃらにやるのも捨てたもんじゃねえってか。
――ドォォォォン...ドン!
「開いた!」
「すごいな」
こいつ、やりやがった。
「行こう!ボスさん!」
「...あぁ・・・行くか」
多少所ではない。枷を両手両足に嵌められているせいで、途轍もなく不格好な歩行方法・・・両足飛びで脱走する。
近くにいたからか、あまりにもユイトが純粋だったせいかはわからない。感化させられたのかもしれない。
いつもなら、悪態をつきながら、格好を気にして気取っていたかもしれない。でも、今はまるで・・・昔の暴力に対抗するために全力で走り回っていた少年時代。それぐらい――
未来に前向きだった。
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