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未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
85/110

82.ようやく

 なんとか出ることができた。

 ユイトはぴょんぴょんと飛び跳ねている・・・にしてはジャラジャラとした効果音が付随して、前に進んでいる。


「でもッ、枷を外さないとッ、移動が大変だよねッ」


「鍵を持ってる奴ッなら、閉じ込められた部屋の近くにいた奴ッか、主犯のジジィッのどっちかだろうな」


 隣で同じように飛び跳ねながら進んでいるボスさんが教えてくれる。でも、周りの人は見当たらないことから遠くに行ったのだろう。つまり、近くに鍵を持った人物がいないのだ。


――ボスさんちょっと元気になった?


――出れたことが嬉しいのかな。


「あれだけでかい音だったんだッ、外が騒がしくても気づく奴は出てくるッはずだ」


 そうかもしれないが、戻ってくるとしても鍵を持っていないんじゃないだろうか。


 その時、前の角から人が出てきた。


「貴様ら!どうやっ―――」


 加減はできているはずだが、他人から見てかなりの速度が出ているように見える頭突きを食らわせて壁にぶち当てる。


「カハッ!!」


 意識は保っているようだが、相当のダメージが肉体に入ったのだろう。なんとか状況を整理しようとしてはいるが、痛みのある箇所のせいでうまくいっていないようだ。反撃がこない。


 そこにボスさんが近づき身体を巧みに使いながら、かかとを食らわせる。前宙かかと落としであった。

 座り込んでいた男の丁度後頭部にぶち当たったからなのか、意識が刈り取られ気絶する。


「ッ...ふぅ、うまいこといったな・・・」


 といっても、両手両足が拘束されている状態でのかかと落としである・・・受け身なんてできる訳がなかったようで...ただでさえ難しいのだ。地面との衝突は不可避であった。


「・・・的中か。こいつ、見張りの一人だったな」


 転倒に関しては無かったことにしたいようであった。別に恥ずかしいことなんかじゃないのに・・・。


「そうなんだ。でも、なんでわかったの?」


「これさ」


 起こした身体をしゃがませて器用に相手の腰をまさぐり、その手に持っていたのは・・・


 じゃらじゃらと音を立てながら見せて来た鍵束であった。


「鍵!そうか!気づいて戻ってくるのは担当の見張りってこと!?」


「そういうことさ」


 嬉しそうな表情、ドヤ顔で鍵と言う戦利品を掲げる。


 そのまま、ボスさんが鍵を使って、数多くある鍵束の一つ一つを試しながら僕の両手の枷を外す。それから、鍵を受け取り手枷と二人の足枷を順に外していく。


「ふぅ、ようやく解放されたか。二度と御免だな」


「そうだね、手足が使えるってこんなに楽だったんだ・・・」


 新たな快感を知り共感する。手首を摩りながら自由を噛みしめておく。


「すまなかったな」


 いきなりであった。改めての謝罪を告げられる。


「どうしたの?」


「いや、ただ、やりたくないことをするもんじゃないなと思ってな・・・」


「そう?」


 他にも色々な感情が込められているだろうとは思う。なにが言いたいのかは読み取れない。


「自己満だったな。悪い。いこう」


 なんだろう・・・。ボスさんの信念というか、心の真ん中が消えてなくなってしまうような気がした。それが、良いことなのか悪いことなのかは僕にはわからない。ただ、僕の今の気持ちだけは伝えておきたかった。


「・・・でも、僕はボスさんと出会えたのは嬉しいよ」


「・・・変な奴だよほんと」


 新しいことを知るのは楽しいことだと思っている。ネルも似たようなことを言っていた。それが身に染みる。まあ・・・ネルやマロさんに迷惑をかけてるのはあれだけど・・・。


 ようやく、解放された四肢で走る。ただ、道がよくわからなかった。道を選んでくれているのはボスさんだ。来た道ではないと思う。


「これ、どこに向かってるの?」


「出口さ。ただ、どこがかは俺にもわからんがな」


「わからない?」


「あぁ、入ってきた入り口は明らかに正面にあっただろ?どうせ、大勢いるだろうからな」


 そうか...。記憶を掘り返したらその通りだったと納得する。


「なるほど・・・でも、他にも出口あるかな?」


 と別の疑問は出てくる。あるとは限らないんじゃないだろうかと、一瞬思って言葉にしてしまったが、正面から出てほぼ確実に追われるよりも、あるかわからない出口を探してみる方がたしかに良いと思い至る。


「さあな、でも確率は低くはないはずだ」


「どうして?」


「?これだけ広い家だ。当然、出口が一つだけなんて不便だろ?」


「そう、だよね。たしかに不便だ...」


 変なことを聞いてしまった。たしかに、ありそうだ。


「相当特殊な作りになっていなければな・・・ないかもしれないが」


「え」


 さっきとは逆のことを言われて少し驚く。


「確率って言っただろ?確証があるわけじゃない」


 出口はまだ見つからない。ただ・・・窓を発見する。


「お、あんじゃねえか出口がよ」


 そういって、持っていた。外した枷を一つ振り上げて窓を叩き割る。


「それ!?出口じゃないよ!」


「出口みてえなもんだろ。扉を壊した奴が何言ってんだ」


 それもそうであった。


「窓も頑丈にしとけよなッ」


――バリィーーン

 

「ハッ、やっと外か」


 ようやく、外に出ることができた。外は一体何が起こっているのだろうか・・・。


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