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未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
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80.呼ばれて

 到着の知らせを受け、二人仲良く馬車を降りる。


 そこには、もはや森と呼ぶにはあまりに異質な世界が広がっていた。


 木々は、樹とさえ呼ぶのもためらわれる。そのすべてが桁外れだった。林冠(りんかん)の下に落ちる光は、まるで海に差し込む太陽のように細く、弱く。こんな廃れた俺でも神秘を感じざるを得ない。


「こっちだ」


 あの時の奴とは別人の若い見た目の男についていく。街・・・には見えない。だが、街なのだろう。

 森の景観を阻害しないように、細心の注意を払って建てられているような木材・・・というよりも木を家の形に育てたかのような建物が数多く並んだ街...。


 それらを横目に、ズレた位置にある。大きい一つの建物がどうやら今回の目的地のようであった。


 その建物内の一室に案内される。素直に歩いたからか、道中特に何か言われることもなく。


「入ってろ」


 とだけ言われて、牢屋には見えない部屋に二人っきりで放り込まれることになった。


「枷を外されることはなかったな」


「そうだね...」


 運は尽きたらしい。ならもう、待つだけと諦めるかと言われればそんなこたぁない・・・最大限抗うさ。


「思ってたより、舐められてるな。鉄の牢獄にでも閉じ込められるかと思ったが、相手に運があっても頭が悪けりゃ活かせねぇようだな」


「・・・どういうこと?」


「ここは、木でできてるってことさ。つまり、燃えるだろ?」


 口角を片方上げて、二ッと笑いかける。――相手が馬鹿であることを祈るとしよう。


「!そうか。よし、なら・・・」


 魔法を使用する時に喋らないタイプなのか、珍しいな。口に出した方が魔法は使いやすいって話だが、相当手慣れてるのかもな。


「・・・なんか、魔法がでない」


「馬鹿ではなかったか。しゃあねぇ」


 まぁ、そこまで期待してた訳じゃない。、腹を括って運命を受け入れる準備でもするか。まったく、面白味のない人生だった。


「もうできることもないよね・・・」


「だな」


「時間さえあれば・・・友達が迎えに来てくれるかもしれないのに・・・」


「友達?」


「うん。遠く離れてても居場所がわかる?みたいなことができるんだよ」


「へぇ、そりゃ・・・だが、それまでなにもせずにいてくれるか...。いや、希望があるだけましだな」


 そんな諦めが籠った会話をしていると、どうやら時間が来たらしい。

 

 扉から、暗緑色の髪を靡かせた。初老の男性が入ってくる。


「無事目覚めれたようで何よりです。さて、やりたいことが多いのですが・・・どちらからにしましょうか?」


 声からして・・・同一人物。どうやら、自然種だったらしい。さっきまでの若い男も変装だったか。じゃあ、ダメ元だが会話してみるとするか。


「おいおい、忘れてもらっちゃ困るな。なんで俺まで連れてこられたんだ?話が違うんじゃないか?」


「忘れる訳ないでしょう?あなたも目的の一人。と言いたい所ですが、あなたが一番都合が良かっただけなのが申し訳ない」


「へぇ、都合が良かったねぇ。路地裏の住人ならそりゃ、都合がいいわな」


「いえいえ、それだけではありません。色々と調べさせてもらいましたよ。あなた、特異をお持ちですね?」


「・・・まぁな。それが狙いだったと?」


「えぇ、魔人族、特異持ち、さらに誘拐しても、なるべく騒ぎにならない人物。まさに、ぴったりの人材でした」


「そうかい。そりゃよかったよ」


 なるほどねぇ。なにがしたいのかは掴めねえが、要は人体実験的なことをしたいってか?俺は珍しいらしいからな。ちょうどいい被検体だろうさ。


 巡り巡って俺の番か。・・・こいつさっきから喋らねえな。


 目だけを動かして黙っている隣の人物を盗み見る。険しい雰囲気を感じる。だが、表情はそこまで変わってはいない。


――なんだ?因縁でもあるのか?でも、それほど、強い恨みって訳じゃなさそうだな。


――というより、今湧いてきたのか?誘拐した本人が目の前だからおかしくはないが・・・。


――だとしたら、俺の時にそれを向けるべきだろ。わからんな。


 観察眼に優れているとは思っちゃいないが、それなりに人と関わってはいる。比較的には、優れている方になるのかもしれん。そんな、俺から見てもいまいち掴み切れないのがこいつだ。


 そんな時に、扉がノックされる。


「どうしました?」


「それが・・・」


 ちらちらとこちらを確認しながら、話すのを躊躇っているようだ。


「構いませんよ」


 それを読み取ったのだろう。即座に許可を出す。


「はい・・・。長老がお呼びです。魔人族の件で話があると・・・」


「なんですって?どうして知られているのですか?」


「わ、わかりません。どこからか目にしたのか感じ取ったのか・・・」


「誰かが漏らしたか...。考えてもわかることではありませんね。ですが、原因の調査は進めておいてくださいね?」


「わかりました」


 その言葉で退室していく若い男。


「裏切りなら問題ですが...。仕方ありません行ってくるとしましょう。度々すみません。また、後で」


 初老の自然種。おそらく、森人(エルフ)だろう男が退室していった。



 それからしばらく後、外がなにやら騒がしくなってきた―――


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