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未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
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79.よこせ

「まぁ、ずっとそんな感じだったが」


 こいつは、誘拐されても変わらなかった。楽観的なのか何なのか知らねえが。


――不幸を嘆いても仕方ねえってのは同感だがな、それでもちょっとは動揺するだろ?


「え?なにが?」


「なんでもないさ。お互い、不幸が続くな」


「まぁまぁ。結局、僕はあんまり変わってないから。慣れたよね」


 そんなことに慣れてどうするんだ。捕らえた俺の言えた義理じゃないからな。言葉にはしなかった。


「で、晴れて同じ立場だ。情報共有といこう。一先ずここどこだ?」


「さぁ・・・。たぶん・・・森?」


「森ねぇ・・・。隠れ家にでも連れ込まれたか」


 聞いた後に、じっくりと周囲を観察する。乗っているのは、馬車。おそらく、俺たちが乗ってきた物を再利用している。外の景色は見えないが、時たま布の隙間から、たしかに木が見える。


――森ってのは本当のようだな


 帝国で森といえば、ある程度、場所は限られるが・・・木だけで判別なんてできやしない。知識があればできるのかもなと。思考を中断する。


「俺たちにやれることは、なさそうだな。一応、なにか他にわかったことはないのか?」


 ユイトが手を拘束されながら、首だけを傾げさせて考えている素振りを見せる。


「ん~。・・・ないよ。ずっと森ってことぐらいかな...」


「そうか・・・。ん?ずっと森?」


 馬車の速度はかなり出ている。この速さでどれくらいかはわからないが進んでいるのなら、とっくに森を抜けてもおかしくない。それか、目的地に到着してるかだ。


「どれくらいの時間、森が続いてるんだ」


「・・・半日くらいかなぁ。感覚になるけど」


――・・・なら帝国じゃねえな。


 どういうことだ。いったいどこに向かう気だ?広い森って言ったら・・・。


「自然種に渡す気か」


「え?でも、魔人族っぽかったよね」


 理由なんて知らん。あいつが魔人族かどうかも疑わしい。

 見た目なんていくらでも変えれるだろうからな。俺もよく変えてるしな。――俺の場合は例外か。


「君も変装してただろ?それと同じことさ」


「そっかぁ・・・」


 ・・・悠長だな。なにか考えでもあるってか?


「どうする気なんだ?」


「え?どうする・・・?」


 なにも考えてないのか?それなら、逆に怖いくらいに落ち着いてやがるが・・・。


 だが、こいつのことばかり考えても仕方ねえ。俺は俺で逃げだす算段を立てなきゃならない。といっても・・・俺に魔力なんてないからな。手足を拘束されちゃどうにもならんか。なら・・・


「なぁ」


 どうするの返答を考えていたのか、虚空に向かって視線を向けていたのを俺に変更した。


「なにができるんだ?魔法は使えるのか?身体能力は高そうだったが」


 おそらく使えるとは思っている。今は、実際にできることを詳しく知っとくべきだ。


「・・・今は言ってもいいのか。もちろん使えるよ」


「そうか、なら、魔法でなにかできることはないか?枷を壊すとか鍵を作り出すとかな」


 俺の提案にかなり驚いたような表情を見せる。――変なこと言ったか?


「で、できたよ・・・。でも、できなくなっちゃった...」


 できなくなった・・・?


「どういうことだ」


「ボスさんに嵌められてた枷は・・・外せたんだけど・・・どうやら、付け替えられたみたいで・・・こっちはなんでか無理だったんだよね・・・」


 あぁ、そういうことか。まっ、魔法が蔓延る中ならそういった類の枷もあるわな。なら、他に・・・できることは・・・。


「ねぇ、どうしてボスさんの枷は外せたのにこっちは無理なの?」


「俺が知るわけねぇだろ?そういうもんもあるんだろうさ」


「ボスさんの枷と似てるのに外せない・・・」


「枷なんて見た目は一緒だろ。あんな安物ならできたんだろうがな。どうやら奴ら、金の使い道に枷を選ぶ程の拷問マニアらしい」


 痛いのは御免こうむりたいとこだな・・・。外す方法か・・・到着した時に外すかもな。なら、その一瞬だけが勝負所か?


「もし、僕が枷を外して逃げ出そうとしたらどうしてたの?」


 こいつ・・・呑気だなんだと優しく言い表してたが、馬鹿なのか?そんなこと今どうでもいいだろ。


「そんなのもう一度捕らえるしかねえに決まってるだろ?だから、俺が見張ってたんだよ」


「そ、そう・・・」


 逃げ出そうとはしてたってことか。なら、なんで逃げなかったんだ?


 いや、毒されるな。今は、逃げるための計画をより良くするのに集中するんだ。


「どうしよう・・・」


 今更これからを考え始めたのか。もしかしたら、俺を頼りにしてたのかもな。なら、無能で悪かったな。


「枷を外される一瞬に賭けるしかないかもな」


「外されるかな?」


「さあな、他の方法も考えつつ天にでも祈るさ」


 世界さんよ汚泥に(まみ)れた俺に、たまにはなにかプレゼントでもくれよ。


 その時、まるで願いが届いたかのように馬車が・・・停車した。


「到着だ」


 どうやら、贈り物は品切れらしい。


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