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未定世界の知り方を  作者: むち神
第四章 【死角の動き】
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78.宵闇

 ―――――――――――――――――――――――


 古びた記憶が蘇る。面白味の欠片もない流れるまま生きた記憶が眠りの狭間から戻ってくる。


 産まれた時の記憶はない。誰だって同じか。では、両親の顔を覚えているかどうか・・・否。一ミリたりとも覚えちゃいない。俺を知ってる奴なら誰だってわかることだろうさ。

 そんな軽口を誰かに話した時は、どうしてなんて聞かれたがこう答えた。俺の手が綺麗だからさ。と・・・わかりにくかったんだろう。意味までは理解していなそうだったな。


 まぁ、そんなこんなで物心が付いた頃には路地裏の生活が染みついていた。残飯を探して漁る。良さげな場所を探して眠る。たまに、奪われて殴られる。

 たまにだったのは、あんな奴らでも最低限の良心ってのがあったんだろうさ。年を重ねるごとに奪われる頻度は増えていったんだからな。弱い奴から奪うが弱すぎる奴からは奪わないなんてプライドでもあったのかもな。当時は、気持ち悪い悪党だなんて思っちゃいたが、どうしてか今じゃ俺がその立場なんだから。皮肉なもんだ。


 さて、そんな環境でも俺は生き抜いた。たまたまかと言われたら、自信を前面に押し出してそうじゃないって答えただろうさ。昔はな。

 

 路地裏界隈でなら、俺は賢い部類だったんだろう。一人での行動に嫌気が差したのは、幼少期組の中でも年上になったぐらいだったか。でも、自分より身体が大きい奴はプライドも高い。従わせるとは言わずとも、真面目に話を聞くとは思えなかった。だからこそ、年下達に目を付けた。


 似た境遇の奴らってことで、意気投合するのに時間なんて掛からない。


 やったことは簡単だ。子供同士で縄張りを分けるだけ。残飯を漁る場所を分散すれば、採れる量も増えるって寸法さ。でも、不満は出る。残飯が出やすい場所とそうでない場所は当然あるからだ。だから、残飯を全員から集めて再分配をした。もちろん盗む奴もいたが厳重注意をすれば、収まった。全員子供だったんだからな、大人より素直な奴らが多いってのは良かった。


 それらがうまく回り始めた頃に・・・奪われた。

 大人が集団でやってきて、子供から残飯を取り上げる。俺が作り上げた機構を残したまま、奴隷のように使役しやがったのさ。子供に集めさせて大人が食う。食えるのは余り物のみ・・・。


 あの時の悔しさと世を恨んだ気持ちは、親に捨てられたなんてことが曖昧になっている俺からすれば、初めて抱いた感情に思えた。


 暴れたさ。すぐに伸されてボロ雑巾ってな。笑えたね。


 それでもまだってなぁ、自称天才のガキにしたら諦めるなんてのは知らなかったんだろう。ま、同じことを繰り返す程バカじゃなかったのが幸いしたな。まずは、強くなることを考えた。

 ガキの強くなるためにすることって言ったら、魔法だろ?身体が小せえからな、鍛えた所で付け焼刃なのは、ガキでもわからあな。


 というわけで、魔法を覚えるためにすることは使える奴らから盗むことさ。残飯を盗み、魔法を盗む。それ以外の方法なんて知るわけない。

 色々やったが結論から言えば、使えなかった。またもや、運の悪いことに俺には魔力ってのがないっぽいんだよな。ひたすら努力したが、使える気がまるでしなかった時は心が折れかけたもんだ。


 折れなかったのは、諦めを知らなかったからってことじゃねえ。一つだけ覚えれた魔法があったからさ。魔力がないのに使えるってのは、意味がわからなかったが使えたんだから理由なんてどうでもいい。今は知ってるが、どうやら特異体質だったようでな。

 

 顔を変える、姿を変える。詳しくは今でもわからんが、要はそんなことができた。これを使ってすることは、変わらなかった。強くなることだ。うまく使えばもっと使い道もあるんだろうが、所詮自称の天才様だからな。思いつく訳ねえ。


 顔を変えて姿を変えて、道場や強者っぽい奴に紛れ込んで教えを受ける。国の中央に潜り込んだ時が一番ハラハラしたな。そういったことのせいで、言葉遣いが多少おかしくなったが、元からおかしいかったからな気にならなかった。

 まぁそんなことはさておき、目標は・・・最低限は達成できたってとこだろう。路地裏の大人なら、多勢に無勢でも負けることはなくなった。


 そっからは、思い出すもくそもねえさ。ただ、同じようにまとめて仕事を探して割り振るだけ。つまりは―――現在に戻る。



 不快な眠りから目を覚ます。嫌なことを思い出したと悪態をつこうとするが、身体がうまく動かないことに気が付く。


――そういや、囚われたんだったか。俺みたいな奴を捕らえた所で一銭の得にもなりやしねえのに。


 心配する奴もいねえ。・・・心配はされるかも知れねえが、あいつらにできることはない。


「あっ!良かった目が覚めたみたいで」


 自身の心境と逆の元気な声が聞こえる。同じく拘束されているユイトである。


――なんで、そんなに元気なんだ・・・こいつ...。


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