吸血鬼のためならどこへでも
こんにちはだにこです
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この女は自分が天才だから俺に屈しないと言った。天才というのはやつの実力から分かった。
ウェンが俺の気づかぬ間にぼろぼろになっている。
俺の魔力総量が上がってなければ何度やっても勝てなかっただろう。だが天才ならば降伏するだろう。
もし自分が暗殺の天才という自負があるなら命を惜しんで降伏するだろう。だがこいつはしないと言った。
全くもって真逆なことをしているではないか。興味深いな。こいつの話を深く聞いてみよう。そう決めた。
「別に悪いことはしない。お前の実力は俺も高く見積もっているからな。だが天才であるお前に問う。
自分が死ぬことが惜しいとは思わないか。俺ならこんなチャンス相当なことがないと逃さないぞ。」
ウェンは隣で頷きながらそうっすよとだけ言った。でも女の表情は動かなかった。
どうやら女は口を開く気もなさそうだ。こうなったら水魔法で一度だけ聞いたことのある魔法にかけるか。
この技は水魔法の真骨頂である慈悲、寛大と言った、攻撃ではなく美しさで人の心を軽くできる魔法だ。
フルーリアは教えてくれなかった。でも戦いの中で俺が水魔法の型として独自に考えていたものだ。
では何故今まで使わなかったか。それは計算したところ消費魔力が大きすぎたからだ。
シルヴィアに救われたときから編み出した技。一生俺は使いこなせないだろうと思っていた。
でもこの魔力の増えたいまの体なら少しの希望にかけて打ってみるか。
「六波羅・日輪招返の水鏡」
その時だった。そこに現れたのは表現できないほど美しい空間。
日が昇る海、そこにあるのは極楽浄土にもないような壮大な景色であった。
美しさは時に人を救う。俺もよく救われたものだからな。
誰かの心の傷を癒すのも魔法であろう。
女は唖然としていたが今までのときとは違い笑顔で崩れ落ちた。
「そうだ。私、人間が嫌いだった。人間のせいで吸血鬼族はこうなったんだ。
昔吸血鬼族には英雄と呼ばれる人がいた。その英雄は吸血鬼族と長年争っていた鬼神族を破った。
だから多くの人がその英雄の血を欲しがった。その子どもを欲しがった。でもそれが間違いだった。
英雄は人間の血が混ざっていた。人間の中でも少しも他の血脈が入っていなかった。
だからすごい魔力だった。だからそれから吸血鬼同士での繁殖しかできなくなったの。
でも人間はそのことを書物には’太古の昔からそうだった’と書いていた。
あなた達はどれほど私たち吸血鬼族を苦しめれば気が済むの?そんな中私が産まれた。
私はかの英雄に匹敵するほどの魔力はなかったけど暗殺の才能があった。皆が私を囃し立てた。
私は人間を皆殺しにするんだって。でも本当はどこかで私たちが許さないといけない。
勝手に英雄の血を欲しがって、人間を恨んで、でも皆を裏切ることはできないじゃない!
私本当にどうすればいいの?教えてよ!神様!」
彼女はそう言って崩れ落ちた。
はっきり言ってできた文章じゃない。何がいいたいのか全てはわからなかった。
でもこいつの苦しさ、葛藤を理解するのにはこれだけで十分だった。いや十分どころじゃない。
俺はこの魔法の結界を解いた。でも皆しばらく呆然としていた。彼女の叫びを見た俺達は。
「裏切ることになるんすかね。全部あっしが理解することはできねえと思います。
姉貴の辿ってきた道はあっしにはわかりやせん。温室で幸せに育ってきたあっしには。
でもだからあっしは旦那に惚れたんすよ。旦那は強いだけじゃなくて弱さも馬鹿さも全部理解するんすよ。
どこの誰よりも頭が良くて、あっしのバカも笑ってくれて、惹きつけられねえ人はいねえっすよ。」
ウェンはそういった。お前それが言えるならだいぶ理解できてるじゃねえか。
そう思った。
そしてそれを聞いた彼女は立ち上がった。
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