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【完結済】銀の光、金の闇 ~双子の兄と私の秘密~  作者: 米野雪子


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7/19

楽しいランチ





「うわ~、今日も美味しそうです」


「食堂は慣れたかしら?」


「はい、温かい食事っていいですね」


「ふふっ、ではいただきましょう」



ミランダ様と一緒に、憧れの食堂でのランチも、もう何度目だろうか。


ランチはセットで3種類あり、私はオムレツセットを頂き、

ミランダ様はビーフシチューセットだった。

パンとサラダも付いて、私は温かくて美味しい学食に毎回大感激した。


私とミランダ様の組み合わせが珍しいのか、

いつも周りの人たちの視線が突き刺すように集まり、少し居た堪れなかった。

しかも、食事中にミランダ様は、高位貴族のご子息やご令嬢に声を掛けられ、

その度に私を丁寧に紹介してくれた。


な、何か落ち着かないけど…皆さん穏やかに挨拶をしてくれたし…

凄いなぁ…ミランダ様、ちゃんと貴族同士の横の繋がりもあるんだ。



「ごめんなさいね。落ち着かないわね」


「い、いいえ。大丈夫です」



周りの目線に晒されながら、ヒソヒソ声が微かに聞こえてくる。

特にご令息方は、ミランダ様をじっと見ている人が多い。

やっぱり美人だから…人目を引くのだろう。



「なあ、あそこだけ…すげー美しい眺めなんだが…」


「あの二人いつ親しくなったんだ?」


「お二人とも素敵…」


「ねえ、見て。可愛いと美しさが、融合していますわ」


「おい、お前話しかけてみろよ」


「俺はガーディア伯爵令嬢のが好みだなぁ」


「はあ?ボルドー侯爵令嬢だろ?」


「ミランダ様、今日もお美しい…」



ああ、やっぱり落ち着かない…

ちゃんと淑女マナーを思い出して綺麗に食事しなくては。

気にし始めたら、ぎこちなくなってしまう。

せっかく、オムレツ美味しいのに…



「デザートのアップルパイも追加で取ってあるから、食べましょう」


「わあ、嬉しいです。私、これ大好きなんです」


「ふふっ、…そういえば、今日だったかしら。卒業資格試験」


「はい、放課後に別館で試験です」


「応援してるわ。頑張ってね、きっとライラックさんなら大丈夫よ」


「はいっ、ありがとうございます」



そうだ、今日は大事な試験なのだ。

頑張らなければ。

私はしっかりランチを平げ、大好きなアップルパイも食べて、

放課後に備えた。


あ、そういえばリアムお兄様にお礼の品を渡したのを

言い損ねてしまった。




* * * * * * *




「リアム様?」


「……ああ、こんにちは、お嬢様」


「また、お会い出来て光栄ですわ。お仕事ですの?

 それともライラックさんに会いに?」



貴族学院に通っている、第三王子の忘れ物を届けるよう言われ、

教諭に手渡し廊下を歩いていた所を令嬢に呼び止められた。


どっかで見たことあると思ったら…ボルドー侯爵令嬢か。

男に絡まれていた、美人さんだ。


確か、ライラックちゃんと友達になったんだっけ。

まさか…俺に近づくために、利用してないよな?



「仕事です。もう済んだので帰ります。

 ああ、素敵な青い革の手袋、ありがとうございました。

 ライラックちゃんから、受け取りました」


「まあ彼女、渡してくれたのですね。良かったです」



俺は微笑みながら、嬉しそうに頬を染める令嬢を冷めた目で見ていた。

ああ、これは完全に俺に興味があるわ。

この間の男爵令嬢といい…こいつら、この顔好きだよなぁ。



“あいつ” の顔が。



「授業は大丈夫ですか?移動中なのでは?」


「はい、もう終わりました。手袋使ってくださいね。

 お仕事でも使いやすい、デザインと色を選びましたの」


「いやあ、素敵すぎて使うの勿体無くて…」


「いえ、是非使ってくださいな。革は使えば使うほど、

 使い心地が良くなりますのよ」



あー、上物だから質屋にでも売ろうと思ってたのに…

しかも、大きなお世話で内側にイニシャル入ってんだよな。



「そうですね。使わせていただきます」


「あの…今度、“冬至祭” がありますよね?」


「ええ。その祭りで、俺は警備担当で仕事なんです」


「そう、なのですね…大変ですわね」


「お嬢様は、参加するのですか?」


「いえ、まだ決めていませんわ」


「ライラックちゃんは、ルイスと行くようですがね」


「え…?」


「俺の双子の兄です」


「まあ、そうなのですね…ああ、魔術師団にご所属でしたわね」


「ええ、あいつは…魔力量が多いから」


「でも、リアム様は努力して騎士になられたんでしょう?

 ご立派ですわ。尊敬いたします」


「ありがとうございます。そう言っていただけて光栄です」




俺の───何を知っている?




当たり障りのない社交辞令と、空っぽな偽善だらけの言葉と会話。

ああ、もう、うんざりだ。早く切り上げて帰ろう。



「あ、あのっ…お暇な時でいいのです。

 時間がある時に…会っていただけませんか?」


「…それって、個人的にデートしてくれってことですか?」


「…はっ、……はいっ。リアム様の事を知りたいのです。

 もし、婚約者や恋人がいらっしゃるのなら…身を引きますわ」


「………………」


「ご迷惑…でしょうか?」



あ─────…‥面倒臭いな。


こんなに食い下がってくるとは思わなかった。

そうだ。

ライラックちゃんを利用するか。



「あ~、…ほら、ライラックちゃんって義理の妹じゃないですか」


「え?ええ」


「彼女は婿を取って、伯爵家の後継になる予定なんです」


「はい、彼女もそう言っておりました…」


「で、その婿っていうのが…俺か兄が婿候補っというか…

 どちらかが選ばれる予定なんです。まだ決まってませんけど」


「…は?…」


「彼女次第なんです。

 俺達の母親は所詮後妻なので、向こうに主導権があるんですよ。

 だから、それが決定するまで、他の人と付き合う訳にはいかないんです。

 ライラックちゃんの機嫌を損ねると、追い出されかねないので…」


「そう…なんですの?

 そんな事…彼女一言も言っていませんでしたわ…」


「外聞悪いでしょう?一応義理とはいえ、兄妹ですし…

 これ内密なんです。他言無用でお願いします」


「はい……では、ライラックさんが、もしリアム様を選んだら…」


「まあ、そう言う事になりますね」


「リアム様は、それで…いいんですの?」


「仕方ないです。俺たちは選択できる立場じゃありませんので。

 そういう事情で…大変光栄なお誘いなんですが、申し訳ありません」


「………そう、ですの…」



ボルドー侯爵令嬢は、目を見開き、口を固く閉じて、

両腕で抱えていた教科書を強く握りしめた。




* * * * * * *




「では、時間は60分。試験、初めっ」


「はいっ」



ルイスお兄様から貰った、

カバンに付けたお守りを一瞥して、テスト用紙に目を移す。


昨日の夜、寝ようとしたら、部屋のドアがノックされたのだ。



「は、はいっ。どなた?」


「夜遅くにごめん、ルイスだ」


「えっ、ルイスお兄様?ち、ちょっとお待ちになって!」



な、何かしら?

上着を羽織って足早にドアを開ける。


そして彼は、黙って何かを差し出した。

掌には、小さなアメシストのキーホルダーがあった。

私の瞳と同じ…ピンクががった美しい紫。



「これ、お守り。…その、気休め程度だけど。

 落ち着きや、直感力、不安の暖和に効果がある水晶で、

 試験に効果があるように、ライラックにと思って…」


「これを…私に?」


「うん。カバンに付けて欲しい」



あら、ルイスお兄様ったら、

緊張して “尻尾” がピーンとしてプルプルしてらっしゃるわ…



「本当に、ただの気休めだけどね」


「いいえ、心強いです!ありがとうございます‼︎

 ルイスお兄様!私頑張りますわ」



単位取得の試験は、順調に進んでいた。

猛勉強の成果でスラスラ解けたし、自分自身でもテストは上手くいったと思う。


テスト用紙を渡した教員も、ざっと目を通し、大丈夫だろうと言ってくれて、

あとは卒業資格取得証書を貰えば、私の貴族学院通いは終わる。

最近ミランダ様と仲良くなって、少し学院生活が楽しくなったけど、

それ以外は相変わらずだし、やはり早く領地経営と管理を学びたいわ。


お父様やミュレルお母様、ルイスお兄様にいい報告が出来そう。

あ、ついでにリアムお兄様にも。







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