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【完結済】銀の光、金の闇 ~双子の兄と私の秘密~  作者: 米野雪子


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冬至祭





「おかえり、ライラック」


「おかえりなさい。ライラックさん」


「お嬢様、お帰りなさいませっ」


「ライラックちゃん、お帰り」



私は回復して、伯爵邸に帰ったきた。


お父様は嬉しそうにしてるし、ミュレルお母様は笑顔でうずうずしてるし、

ベラは泣きそうだし、リアムお兄様は申し訳なさそうな顔してるし、

みんな違う顔してて、面白いわ。


そして、みんなの “尻尾” が、ブオンブオン揺れている。


でも、私の横に立っている、ルイスお兄様の “尻尾” が、

一番激しく揺れていた。



ルイスお兄様は、魔術師団管轄の医療部に居た時は、

私のカウンセリング担当だった間、

ずっと “尻尾” が、しょんぼり下がっていたから…



“ 生きていてくれるだけで、君はその人達の心を支えてる存在なんだ ”



私に生きる事を諦めないように言った、ルイスお兄様のあの言葉が、

すごく嬉しかった。



「ただいま、帰りました。お父様、ミュレルお母様、リアムお兄様、ベラ!」


「お嬢様、お茶の用意をしてあります。

 ケーキや焼き菓子も沢山ご用意してます!さ、行きましょう」


「本当⁉︎ ありがとう」



ベラに手をひかれ、ふと窓に映った自分を見る。



“ 見えなくても、いつも側にいるのよ ”



お母様……



私、生きて行きます。

お母様が産み出してくれた、この体で ────。




* * * * * * *




「まあ、詳細はこんな所だな」


「……………」



俺は、ライラックちゃんの過去に何があって、なぜ、あんな風になったのか、

ルイスからやっと教えて貰っていた。


そして、幸せそうに見えた令嬢の壮絶な過去を知り、

今まで木を見て森を見ない視野の狭さと、自分勝手で利己的な

振る舞いをしてきた自分を心から恥じて、本気で悔い改めようと思った。



「もう、大丈夫なのか…ライラックちゃん」


「ああ、大丈夫だ。もう死にたいとかは思ってない。

 だけど…“死の森の精霊” が嗅ぎつけて来るかもしれない」


「そんなに執着するもん?6年も経ってんのに」


「“番” 認定されてるからな。向こうにとっちゃ、死活問題なんだよ」


「人間の娘に懸想すんのかよ、精霊って…」


「ああ、稀にある。そして、ほとんが逃げられない」


「………え、やば。精霊って魔術師でも勝てないんだろ?」


「今までは、腕輪で誤魔化せたが、腕輪外させたどっかの令嬢のせいで、

 効力が一度途切れているからな。そのせいで存在がバレて、

 近くを嗅ぎ回ってる可能性が高い」


「あれ?でもさ。一度邸に来てるんだろ?ライラックちゃん迎えに」


「その時の邸は引き払って、今ここの邸に引っ越したんだ。

 そんな事のあった邸住めないだろ」


「うん。でもさ、無理に忘れさせる必要あったのか?

 知ってた方が、自分の身を守れるんじゃね」


「お前、話聞いてた?精霊に人間は勝てないんだよ。

 それに、その時ライラックは、9歳だぞ。そんな子供が自分が原因で、

 母親が呪いを受けて死ぬなんて、そんな残酷な現実を背負えるか?

 ライラックは、性格的に自責思考で苦しむのがわかりきっていた。

 だから、両親とも相談して、あの腕輪を作ったんだ」


「あー、はいはい。すんません。ちょっと言っただけじゃん。

 じゃあ、精霊から守るには、どうしたらいいんだよ?」


「捕らえることは出来る。万が一殺せても、精霊は自然界と繋がってるし、

 自然に影響が出る為、残念ながら葬れない。

 だから、話し合ってお互いに折り合いを付けるしかない。

 あと、こいつらは変な制約がある。

 例え番として認定しても、添い遂げるには相手の同意が必要なんだ。

 でも、そんなの無視して連れ去るがな。連れ去ったものの、

 いつまでも同意しない相手に苛立って、そのうち殺しちまう。

 理性が働く人間とは、違うんだ。

 人類より上位種族かもしれないが、動物的本能が強いんだよ」


「話し合いねぇ…それが通じなくて、ライラックちゃんの実母は、

 そんな事になったんだろ?

 あ、でも死の森の精霊って、でかくて黒い狼だっけ?

 じゃあ、姿を見れば、すぐ分かるだろうし捕まえやすいか…」


「それが厄介なことに、人間に化ける事もできるんだよ」


「おいー…」


「だから、言っただろ。精霊に人間は勝てないって」


「お前が、捕まえるの?」


「ああ。いつも魔道具は持参してる。

 ライラックに腕輪は付けさせてるけど、今は眉唾物に近いだろうな」


「…貴族学院に通ってないのが、せめてもの自衛になるか」


「そうだな。話変わるが来週、冬至祭だろ。

 俺はライラックと行くけど、お前も同行しろ」


「は?俺はその祭りで警備担当だから、無理だって言っただろ。

 てゆーか、出掛けんの?やめた方がいいんじゃね」


「仕事は休め。一人より二人の方が彼女を守れる。

 前から約束してたし、冬至祭でライラックに、息抜きさせてやりたいんだ」


「わーったよ、魔力なしの俺が同行して役に立つわけ?」


「武器は精霊でも有効だ。ぶった斬れ」


「おうおう、殺意抑えろや」



こいつ、ライラックちゃんの事になると悪魔みたいになるんだが。

まあ、腕輪作成担当して、事情を知ってたから同情的つーか、

感情移入してるのかもしれないが…でも、何かそれとも違うんだよな。


これは、やっぱ…そうだよなぁ。




* * * * * * *




「うわー凄い!出店が沢山」


「ライラック、人混み凄いから、ほら手繋いで」


「え?や、やだ。子供じゃありませんわ。ルイスお兄様」


「いいから、ほら」


「〜〜〜〜もー…」


「……………」



普通にイチャつくなや。


俺、絶対お邪魔虫だろ、これ。


今日は、3人で冬至祭に来ていた。

冬至祭で装飾された、華やかなお祭り会場にルイスとライラック、

そして少し不貞腐れたリアム。



「ランタンが綺麗〜お祭りワクワクします」


「シードルワセイルでも飲む?」


「はいっ、リンゴ大好きです」


「あと冬至のリース買ってくから、母上に頼まれていたんだ」


「みんな素敵なリース。ミュレルお母様は、どんなのがお好きなんですか?」


「そうだな…あの人は………」



繋いだ手をプラプラさせながら仲睦まじく歩く二人は、

どう見ても、恋人同士にしか見えない。


あー、マジで俺いらなくね?



「リアム、祭に参加してんのかよ!」


「お、レオじゃん。警備お疲れ」


「お前ズルくね?」


「違う。義妹のボディーガードなんだよ」


「ん?あ、あの可愛い令嬢じゃん…

 てゆーか、お前の兄貴とイチャついてるぞ?」


「あーまー、そういう事だろーなぁー」


「お前、邪魔じゃん」


「言われなくても、分かってんだよ。うっせーな!」


「最近、仕事頑張ってたのに、急に休むからどうしたのかと思ったら、

 兄貴に利用されてんのかよ」


「違う。頼りにされてんの!」


「まあ、そういう事にしておいてやるよ。

 じゃあ、俺は仕事の見廻り行ってくるわ。じゃーな引き立て役!」


「ああ、頑張れよ」



何事もなく、平和に過ぎてくれりゃいいんだが…

リアムは、出店の向こうに広がる暗い森へ鋭い目を向け、

静かに息を吐いた。




* * * * * * *




「ルイスお兄様、待って、待って!きゃ〜転んじゃう‼︎」


「大丈夫だって」


「は、早いです!」


「前屈みになってごらん、ライラック」


「え、うーん…あ、安定しましたっ」


「そうそう、上手い」


「気持ちいい〜」


「はははっ、楽しいだろ?」


「はい!」



ルイスが笑ってるぞ。しかも満面の笑みだ。


しっかし、楽しそうだなあの二人。

今度は、手繋いでアイススケートしてるし。

ちなみに俺は、リンク外で見学してる。



「こんなに身一つで早く移動したことないから、怖いけど楽しいです。

 ルイスお兄様」


「そうか、令嬢は走らないもんな…」


「ルイスお兄様は馬に乗れますものね。羨ましいです」


「ライラックも乗ったこと…ああ…そうか、気を失ってたもんな…

 今度乗せてあげるよ」


「本当ですか?約束ですよ」


「うん」



まあ、でも…いいもんだな…仲良く笑い合ってる男女ってのは。

啀み合ってるの見てるより、精神衛生上いい。

こっちもなんだか、幸せになる。


今まで…こんなこと感じた事なかったのにな。



「ママー、さっき真っ黒で大きな犬がいたよ」


「ええ?見間違いじゃないの?そんな大きな犬いないわよ?」


「ううん。人より大きな犬だったもん。

 赤いお目々でこっち見てたもん」


「どの辺で見たの?」


「あっちー、もういなくなっちゃった」



後ろの親子の会話に動きを止める。

これ…例の精霊か?

赤い目に、大きな黒い犬…


子供が指差している方に目を向けるが、何も見えなかった。

様子を伺ってんのか…


ルイスとライラックちゃんがスケートを終えたら、

報告した方がいいな。






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