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【完結済】銀の光、金の闇 ~双子の兄と私の秘密~  作者: 米野雪子


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あわいの告げ部屋






「…ここは?」


「怖がらなくていい。落ちたりしないから。

 ここは “あわいの告げ部屋” で、

 現実と神の領域が交わる空間。

 簡単に言うと、世界樹を現実と繋げたんだ」


「え…」



眼前には真っ暗な空間が広がり、

その奥行きは、永遠に続いているような広大な闇だった。


そして、その空間に、色とりどりの無数の丸いランプが浮いているのだ。


まるで、夜空に瞬く満点の星空のように。


空から降る星々に囲まれた空間に、恐る恐る足を踏み入れる。

見えていないのに、ちゃんと足元には床がある。



なんて美しくて神秘的…


でも、ここは、一体どんな原理でこうなっているのかしら。



「あの、ルイスお兄様…どうしてここへ?」


「君のお母様の魂の欠片が残してある。彼女は遺言を残していたんだ。

 自分の死後にライラックが、もし記憶が戻って、自分を責めていたら、

 見せて欲しいって頼まれていたんだ」


「…お母様が?」


「うん。ほら、両手の掌を上にして、腕を伸ばしてご覧」


「は、はい…」



私は、ルイスお兄様に言われるがまま、

両手を受け皿のようにして、腕を前に伸ばした。


すると、その中の一つのライラック色のランプが

くるくると遊んでいるような導線を描き、

私の掌にソッと降りてきた。



温かい…ああ、間違いない。


この感じエリザベスお母様だ。



「お母様っ…」



ランプはふわふわと輝き、やがて中から声が聞こえてきて、

私は目を見開いた。

忘れもしない、お母様の声だった。



「ライラック。悲しませてごめんね。

 今、ライラックは全てを思い出して苦しんでいるのでしょう。

 あなたは優しい子だから、自分のせいでお母様が死んだって、

 自分を責めているのでしょう?

 そんな時に、側にいてあげられなくて、本当にごめんなさい。


 でも、お母様は自分の意思で、この運命を選択したの。

 そして、こうなったのは、ただの不運が偶然重なっただけで、

 ライラックのせいではないのよ。


 あのね、お母様は幸せだったわ。

 生まれてきてくれて、ありがとう。

 あなたは本当に、可愛くて素直で…お母様の自慢の娘で宝物なの。


 お母様は、もう居ないけど…悲しむな、とは言わないわ。

 大切な存在を失えば、誰だって悲しいし、心が引き裂かれるように辛い。

 それは誰だって同じだし、普通の事なの。

 でも、やがて時間が経てば、苦しいのは薄れて行く。

 あなたは一人じゃない。お父様もベラもいる。

 だからお願い、諦めないで生きてちょうだい。

 それが、お母様の望みなの。


 ライラック。

 あなたは、お母様が産んだの。

 あなたの体には、お母様と同じ物が沢山引き継がれているのよ。


 だから、あなたの中にお母様は確かに居る。

 見えなくても、いつも側にいるのよ。

 そして、鏡を見てご覧なさい。あなたはお母様にそっくりよ。ふふっ。


 まあ、欲をいうなら…あなたに好きな人ができて、

 一緒に恋の相談にのったりしてみたかったわ。


 そして、あなたの綺麗な花嫁姿を見てみたかった…。


 ライラック。お母様は、いつだって側にいる。

 いつまでも、あなたの幸せを願っているわ。


 だから生きて。


 自分の人生を生きて、幸せになるの。


 そして、いつか…こちら側に来る時に、

 沢山話を聞かせてね、楽しみにしてるわ。


 愛しているわ。

 

 私の可愛い、ライラック。」

 



ランプは、フワッと消えた。



「…あっ……」



私はそれに咄嗟に手を伸ばし、捕まえようとするが、

掌には何もなく、跡形もなく消え去ってしまった。



もう、行ってしまったのだ…。




「あっ、あああっ…お母様っ…お母様ぁっ‼︎

 うああああっ…あああああぁぁぁ─────‥」





ごめんなさい。ごめんなさい。

 


お母様。


 

私も大好き。私も世界一お母様を愛してる。



愛してくれて、守ってくれて、



ありがとう─────。





私は、さっきまで掌にあったランプの温もりを忘れないように、

両手を胸の前で握り、その場で蹲み込んで咽び泣いた。


何度もお母様を呼びながら、泣き続ける私を優しく抱き上げて、

運んでくれたルイスお兄様の存在にも気がつかずに。




* * * * * * *




私が落ち着いた頃に、ルイスお兄様は、

あの “あわいの告げ部屋” について、詳細を教えてくれた。


あの部屋の存在を最初から知っているのは、

王族と魔術師だけ。


そして、あそこは一生に一度だけ、

踏み入れる事の出来る願いの叶う空間。


私は今回自分の願いを叶えには行っていないから、無効だそうだ。

だから、もう一度行けるから安心してとルイスお兄様は言っていた。


ただし、その願い事には、条件がある。


人間は欲望に底がない。とんでもない願いをする人がいる。

世界を支配したいとか、永遠の命と若さとか、死人を蘇らせたいとか。


そういう自然の摂理に抵触する欲望は、当然弾かれる。


可能な願い事は、

現実ではどうにも出来ない、怪我や病気などによる苦痛、

あるいは、肉親の命に関わる困難に直面した時のみ。

でも、全ての願いが聞き遂げられる訳ではない。


この部屋を使う資格のある人は、上記で困っている人たちで、

魔術師に導かれた人のみだそうだ。

そして当然、一生この部屋が必要なく、知らずに死んでいく人も多い。


私のお母様とお父様もここに来たのだ。


お父様は、お母様の呪いを解いて欲しい。

お母様は、私を精霊から守って欲しい。


しかし、お父様の願いは弾かれてしまった。

それは、自然の摂理に抵触する行為だったからだ。

人間より上位種族の精霊の呪いは、人間では解く事は出来ない。

上位魔術師でさえ不可能だった。


お母様の願いは叶えられた。

そして、まだ14歳だったルイスお兄様が抜擢され、

守護と記憶阻害の魔力を付与した腕輪を作ったのだ。


その腕輪が “死の森の精霊” から、私の存在を隠して守護くれる。

私の恐怖を封印する為の記憶阻害も付与された。

しかし、嵐の夜に怖いことが起こったという恐怖は強く記憶に刻まれ、

完全には封印しきれなかったのだ。


そして、嵐の夜と腕輪の紛失が引き金になり、全てを思い出してしまった。


お母様は、終始一貫して、自分の病や寿命より、

私を精霊から守り、自分の人生を生きられる事を願ったそうだ。




* * * * * * *




草葉の陰から黒い獣が、魔法塔を見上げている。

そして、窓の側で景色を見ているライラックをつけて、

歓喜の奇声を上げる。



「ミツケタ…」


「ミツケタ…ミツケタ、ミツケタ!ヤット、ミツケタ‼︎

 ボクノ、ボクノ、ツガイ!」







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