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追放された魔王の娘の下剋上  作者: ルナねこ族
第三章  ライリー編
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72話  余命は後…



(なに…言って…。)


『…と、言いたい所だったんだがな…。』


(…は?どう言う事…?)



ライリーを殺そうとした声の主に、開いた口が塞がらなかった。


必死に抑えていた怒りが爆発しそうになり、今にでも叫び出し、泣き崩れてしまいたかった。


狭く、暗く、散らかっている部屋の隅で…ライリーは死んでしまうのかもしれないと思うと、気が気でなかった。



『…それが出来ないという事だ。そうでなければ、今頃こいつは死んでいる。』


(で、でも!こんなにも…今にも死んでしまいそうなほど、虫の息だと言うのに?!)


『そもそも、私には下等生物を痛ぶって殺す趣味はない。…せめてでも、一瞬で死ねるように取り計らうさ。』


(だったら!この状況はどう言う事ですの?!あなたのおっしゃっている事と、全く別じゃありませんこと?!)



痛ぶって殺す趣味などないと言ってはいるが…相手の素性すらわからないのだ、平然と嘘を突かれたところで、リリには判断材料がない。


…ただ、相手の言葉を信じるしかないのだ。


しかしどうだ?ライリーは今もなお苦しみ…数秒後には、息が止まってしまうんじゃないかとすら思えるほど、衰弱しきっている。


『約束を破られた』…その考えに行きついてしまうのは、仕方のない事だった。


シラを切って、自分は無実だなどと言う声の主に、リリは憤慨し、あらん限りの罵声罵倒を浴びせてやりたかった。


…もっとも、リリが突然罵詈雑言を吐き出したところで、アンゲリカが驚くだけだし…それに、声の主はちっとも気にしないだろう。



『…やつに穏便に出て行ってもらうため…とでも言えばいいか?』


(や、やつ?そんな関係のない話を持ち出されても…)


『いや、大いに関係あるぞ。…お前の友人の体内には、7つの原罪…怠惰のベルフェゴールが入っている。』


(な、7つの原罪が…?!そ、それなら早く!早く取り除かなくては…そうでないと…。)


『悲劇が起こる…か?』



リリの心を読んだかのように、声の主は口を挟んでくる。


声の主は「フン…」と、呆れとも、諦念とも取れるため息を漏らしたあと…今までのあくまでも冷静な声色が嘘のように、切なく、哀愁漂う声色で言葉を紡ぎ出す。



『…悲劇を生んだのは、お前らだろうに…。』


(え…?)


『まぁいい。それよろも…ほら、どうやら息が安定してきたみたいだ。』



声の主の言葉に突き動かされるようにして、リリはいまだベッドから起きることすらままならないライリーの方を見た。


…少しの間に、随分と呼吸が緩やかになっている。


まるで、あんなに苦しげに呼吸していたのが嘘のように…それこそ、魔法でも使われたかのように。



「…ふぅ、何とか峠は超えた…のかな?」


「だ、大丈夫…になりましたの?」



額の汗を拭い、ホッと一息つくアンゲリカ。


彼女の顔色は、心なしか少し良くなっていて、ライリーが急変した時に見た蒼白さの面影が薄れていた。


(死んで…いないわね…。)



突然、身動ぎ一つすらしなくなったライリーを不審に感じ、まさか…死んでいるのではないだろうか?と思ったリリは、ライリーの元に駆け寄り、彼の胸元に自分の耳を押し当てた。


トクトク…トクトク…と、一定のリズムを刻んでいる。…彼の心臓は確かに動いていた。


それがこの上なく、リリの心配を取り払ってくれた。無意識の内に張り詰めていた気持ちが、フッ…と、柔らかくなるのを感じる。



「よかった…生きてくれた…。」 



りりは自分の頬を、温かい何かが通る感触を感じた。それがやけに…心地よく感じた。



「り、リリ?…あなた、泣いてるわよ?」


「えっ…?あ、あら?どうしてかしら…何故か止まらないの。」



声も上げず、ただただ無意識に、リリは涙を流していた。


何故こんなにも嬉しいのに…どうして涙が出てきてしまうのか、わけもわからず、リリはただ自分の頬を伝う涙を拭う。


お嬢様らしくもない、服の袖で涙を拭き取りながら、リリはストン…と、地面に座り込む。


憑き物が取れたような…そんな清々しい気分を感じると同時に、限界に達していた体から力が抜け切ってしまった。


それなリリの背中を、アンゲリカは慰めるように、そっと優しく撫でる。


彼女は柔らかな慈愛の笑顔をリリに向けながら「大丈夫…もう大丈夫だよ。」と、まるで自分にも言い聞かせるように、リリの耳元にそっと囁く。


…やっと、これでやっと、ライリーが助かった。これ以上心配する事は、今はもうない!…そう、思っていた。



『お涙頂戴も程々にするがいい。』


(…お涙頂戴なんて、そんな事言わないでくださいまし!(わたくし)たちはライリーを助けるために必死に!)


『そのライリーを助けたのは誰だ?』


(それは…)


『…所詮、お前たち下等生物ごときでは何もできなかっただろうに…偉そうにペラペラと…随分とまあ、よく回る口だ。』



確かに…リリたちだけではライリーを助ける事など、夢のまた夢だった。…そんな事、分かっている。


自分ではライリーの…ましてや、アンゲリカの役にすら立てない事など、リリが一番よくわかっていた。


でも…それでも、ライリーを助けてくれたことには感謝しているが…自分たちが、目の前の人物を助けるのに必死になっていた事を、『お涙頂戴』などと言うふざけた事に当て嵌めないで欲しかった。


だって…ただでさえ、魔界は明日にでも滅びるかもしれない‥そんな危ない状況下に置かれ続けている。…猛毒を放つ魔性の性で‥。


だから…!



『自分を哀れに見せたるのは勝手だが‥。』



しかし…声の主には、リリの言葉など一つとして届かなかった。


声の主はただ冷静に…残酷に、リリにとっての余命宣告とも取れる言葉を発した。



『お前の願いを聞き届けてやったんだ…約束通り『対価』を頂こうか。』




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