36.5話 相性が最高の二人
崩れ去ったレオンハルト邸を眺めながら、リリたちは今夜、どこで休もうかと考えていた。
この近くには宿屋もないし、止めてくれそうな民家もなければ、村や集落もない。
このままだと、一晩野宿する事になってしまう。…さすがにそれは避けたいため、どうするか話し合っているのだ。
「どうしましょう…私、この辺の事をあまり知りませんし…。」
「しかし…レオンハルト家は辺境の地を守っている一族ですら、周りの貴族に助けを求める事も難しいかと思われます…。」
「んじゃあ、今日は野宿になるってのか?外で寝るのは初めてじゃねえが…俺は嫌だぞ。」
「そもそも外で寝た事がある事自体、おかしいと思うのは私だけ?あなた一応、レスター家の子息よね?」
「まあ色々あったんだよ…言わせんな。」
アンゲリカがライリーの言葉に疑問を抱く。
(え?本当になんで野宿したことあるの?親と喧嘩でもしたわけ?)
これ以上ライリーの諸事情を探っても、彼の触れられたくない思い出を掘り返してしまうかもしれない。…何より、めんどくさい。
案外、アンゲリカは大雑把な考えの持ち主でもあったのだ。
「ふむ…ライリーだけだったならば、野宿も一つの手段としてカウントできましたね。ライリー、力だけでどうにかしようとする節がありますし。」
「おい、俺の事馬鹿にしてるのが透けて見えてるぞ。本当に…なんでこんな時まで俺の事を煽るのやめないんだ?頭湧いてんのか?」
「嫌だな、人聞きの悪い事を言わないで欲しい。僕はただ、真実を言ったまでだよ?…まぁ、ライリーを揶揄うと面白いのは事実だけど‥。」
「ボソっと言ってても聞こえてるんだよな〜これが。」
「こ、こんな時まで漫才をやらないでくださいまし!全く…アルフとライリーはボケる事しかできませんの?」
「いやそれ、お前に一番言われたくない。てか、リリって漫才とかボケとか、庶民的なもの知ってたんだな…以外。」
そもそもライリーがツッコミに回ってしまうのも、元はと言えばリリとアルフのせいである。
リリは天然が故に炸裂するボケ、アルフはただライリーをからかいたいだけ、…字面だけ見ても、アルフの性格の悪さがお分かりいただけるだろう。
「はぁ…とりあえず、馬車貸出をしている商人に連絡を取ってみるとしよう…私の通信用水晶は…って、部屋に置いたままだ…。」
「それならこれを使うと良いよ。…まぁ?アンゲリカが僕の私物を使うとは思えないけど?だって君、僕の事が相当嫌いだからねぇ…?」
「時と場合によってはあんたの手も借りるわよ…、こんな事にならなきゃ、あんたとは一生関わっていきたくないわ。」
アンゲリカの事を馬鹿にするような口調で、アルフは彼女に話しかける。
アンゲリカはちょっとイライラした声色で、アルフの言葉に返答していた。
(もしかして…この二人って仲悪いのかしら?)
「あの…もしかしてアルフとアンゲリカって仲が悪いの?」
「仲が悪い?とんでもありません!僕は純粋に彼女の事を尊敬していますよ?」
「仲が悪い所の話じゃないわ!こいつと同じ空間にいるだけで鳥肌が立ってしまいそう!」
(…ま、真逆ですわね‥。)
思ったよりも二人の間柄が複雑だった。
アルフがアンゲリカの事を尊敬しているのに対し、アンゲリカはアルフの事を心の底から…というか、アンゲリカに関しては、両親でも殺されたのかレベルで嫌ってないか?
いやまぁ…父親に関しては死んでないし、アルフは全く関与していないのだが‥。
「はぁ…とにかく、今から連絡してくるからさっさと貸しなさい。」
「おお怖い…全く、お天端な方だ。」
アルフの掌に置いてある通信用水晶を、奪い取るように手にして、アンゲリカは少し離れた場所で連絡を取り始めた。
最高に相性が悪い二人を見ながらオロオロするリリ。
一方、ライリーは胃がキリキリする思いだった。




