3 森と銃口
(追跡方法)
第十条 競技者は、自己の知識、経験、視覚その他の感覚及び大会において使用を認められた器具を用いて、標的獣を追跡することができる。
2 競技者は、標的獣の足跡、食痕、糞、毛、枝その他の自然に生じた痕跡を追跡のために利用することができる。
※ ※ ※
競技区域に入った選手は、まず、標的獣の痕跡を探すのがセオリーである。
足跡、折れた枝、匂い、見落としのないように姿勢を低く、標的獣と同じ目線を意識する。
そして結局、選手は同レベル帯に落ち着く。
01~03が足跡を見つけるのは、ほとんど同時の出来事だった。
「これだな」02番が不敵に笑った。「スタート地点側まで来ちまってたんだ。大砲の音であわてて走って逃げたとしたら、遠くまでは行けない」
「いや、違うね」03が枝を拾った。断面が湿っている。「古傷のあるアカシカが人のいる方向に来るはずがない。こいつは僕ら選手がスタート地点に集まってからここを通っている、別種だ」
01番は何も言わない。
「おまえは?」02番が01番に問いかけた。「どっちにいく」
01番は何も言わない。
「あんまり他人に絡むなよ、特に方針を聞き出すのはグレー行為だぞ」03番は、折れた枝の見聞を終え、森の奥に入るルートをとった。
「知らねえ」02番は、姿勢を低くとり、足跡を追いかけていった。
そして3人は分かれる。
02番は足跡を追って。
03番はこの痕跡は別種とみて森の奥へ。
01番は何も言わない。
1時間後、02番は、足跡の先で鹿の毛を見つけた。
「やっぱり俺が正しかった」と思うどころか、いらだち紛れに、樹皮についたその毛をけりつけた。
大会の開始前に選定されるにしても、標的獣のものにしては古すぎる。別種だった。
「古いな」01番の声に慌てて振り返る。「その毛」
「何しに来たんだよ」02番は声量を抑えることもなく聞いた。いらだちが募る。これでは03の単独先行を許しているだけだ。
01番も声量を抑えず言った。「危ない方が俺を向いているようだ」
02番は舌打ちしながら、体勢を変えなかった。
ふざけた様子で銃口を向ける。「ここで何してるんだ」
「足跡を追ってきた」01番は答え、02番は銃を下す。
そして、02番は引き返す。
01番は何も言わず、樹皮と足跡を見比べていた。




