4 鹿肉のステーキ
01番の本業は事務職だ。1年の大半の日は、都内のビルのオフィスフロアで狩猟とは何の関係もないことをして過ごしている。
収入に見合った家に暮らし、堅実な生活をする。
人の役に立つこともあり、また、人から迷惑に思われることもある。
彼にとってスポーツ狩猟は副業、というより趣味である。
大会賞金は、次回大会の参加費、スポーツ狩猟用品にあてる。
第17回大会が終了したら、大会の余韻に浸りながら鹿肉のステーキを食べるつもりだ。
大会から標的獣が振舞われたりは、しない。
大会が終わったら、行きつけのジビエ専門店に行く。
前日に仕留められた新鮮な肉を扱っている、というのが売りだ。
塩を振って、少しの油を引いたフライパンに肉を置く。
火は入れすぎず、しかし生でもない。
肉の行方は信頼できる店主の腕前に任せて、昼酒も飲む。赤ワインが似合うだろう。
01番はワインもわからない。
なんか重くて渋い奴、飲んでいると喉が渇くくらいのやつが好きだ。
店員さんのおススメを頼むと、たいてい好みの一杯が届く。
ちびちびと喉を湿らせていると、赤いソースのしたたるステーキがやってくる。
標的獣は一般流通しないので、仕留めた獣を食べることはできない。
それでも、前日に仕留められたというジビエに、自分が関与した獣を投影して食べるのが好きなのだ。
第16回大会は、ほとんど順位に絡むことができなかったが、その標的獣である大型の鳥を食べた。
鳥の複数が標的獣になるのは初めてのことで、01匹も仕留められなかった。
アカシカは統計上一番多い標的だ。自然と選手らの腕に力が入る。
きっと自分が1位になろう。
01番は想像の中の店の席を立った。
鹿肉を味わうのは、また現実で。




