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『うちの勇者がすいません。』「魔王退治?視聴者?知らんな!」~詩忍にくちなし~  作者: ふるなゆ☆


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壱伍捌、死人に口なし

「『俺の財宝か欲しけりゃくれてやるぜ。探せ。この世の全てを"そこ"に置いてきた。』その言葉で世界は大海賊時代に変わったんだ。」



 それを聞いて驚くバム。

 少し補足して「フィクションの話だけどな」と追加した。


「さて……と。エポンさん。心の準備はいいですか?」


「もちろんじゃ。」



【リムーブ】



 俺は付いている足枷(あしかせ)を外した。

 そして、横にある檻に手を重ねる。



【粒子化(りゅうしか)】



 壁の一部が光の粉になって消滅した。

 これでお互いに行き来ができる。

【リムーブ】エポンは自由動くこともできる。


「失礼するぞ。」


 エポンがこちらの部屋に来た。

 同じように【粒子化】と【リムーブ】でバムも自由に動けるようにさせた。



「ここから先はよろしく頼む。お前らに全てを託す。——頼むぜ。」



【粒子化】



 床に穴を開けた。


「必ず成功させます!」

「託されたぞよ。」


 バムもエポンはそこにあった地下道へと降りていった。俺は行くことはしなかった。



【リペア】



 粒子にして消し去った壁や床を元通りにする。

 こうして残ったのは俺だけ。そして、この事実に気づくのは質素な夕食を持ってきた忍が来た時だった。


「朝飯と夕飯しか準備しないのが仇になったみたいだな。」


「なぜ貴様の仲間が二人ともいなくなっている。何をした。言え!」


「食っちまったよ。なーんてな。」


「ふざけるなっ! 正直なことを言え!」


「すまねぇが、それは言えねぇんだ。」



 一方通行の会話。結局、忍が折れる方が早かった。



 暫くして多くの忍達がぞろぞろとやって来た。

 開かれる檻。繋がれる鎖。俺は牢屋から出されてどこかへと連れて行かれる。


 薄暗い場所から太陽の陽射しが眩しい場所へと出た。



 そこに特設されたように存在していた木の板で作られた処刑台。まさに公開処刑だ。


 ギロチンの台に両手首と首が固定された。


 そこから見下ろす景色。そこには人で埋め尽くされていた。


 

 近くに王様が登壇する。

 彼がスピーカーのようなもので集まった人々に向かって言葉を発する。



「あの何十人もの死者を出した忌々(いまいま)しき北門大量虐殺事件。その犯人の首謀者と思しき男をようやく捕らえた。人々の安心を願い、犯人パーティーの仲間への見せしめも兼ねて、今より公開処刑を行う。」



 醜い声が湧き上がっていった。



『処刑される前に少しいいか?』



 俺は爆音(・・)でその声を響かせた。さらに、エコー(・・・)がかかりそこにいない人にも広範囲に声が届いていく。



『その虐殺は俺の仲間の一人が殺した。そして、俺が殺されてもソイツは生きている。今からその主犯の男について伝えるから、耳をかっぽじってよーく聞けよ。』



 ざわざわとしていく町の雰囲気。

 この声は町の外にも流れ出ていく。



『主犯は近藤孝太郎という奴だ。ソイツは一瞬にして世界を滅ぼす力を持っている。ソイツがこの世界を生かしているのは俺がいるからだ。だからと言って命乞いをしてる訳じゃない。いいか、俺が死んだら孝太郎はこの世界を滅ぼしにくる。だから、皆の力を合わし命をかけて孝太郎を討(う)て!』



「最後の言葉はそれでいいのか?」



 国王からの言葉に俺は、

「最後に——孝太郎に伝える」と前置きを置いてから……



『"死人に口なし"とは言うけれど——全て終わった後に言う言葉を今ここで、先に言わせて貰うぜ。』



 風は穏やかに吹いていた。

 晴天とは言えない微妙な天気。それでも雨は振る気配はしない。


 感覚が敏感になっているのを感じる。


 死が目の前に来ている。



『最後に笑うのは俺だったな……。俺の勝ちだ!』



 鉄が落ちる音が聞こえる。

 最後に見えた景色は雲と雲の間に見えた晴天だった。




◆——◆



 人間いつ死ぬか分からない。

 

 生きたくても死ぬかも知れないし、死にたくても死にかけても生きるかも知れない。人の生死は不確定要素で満ちている。


 明日、明後日、いや今日、死ぬかも知れない。

 その時、大切な人と最後のお別れを伝えられないことなんてざらにある話だ。



 

 俺はとっくに死んでいたはずだった。


 


 死因は、交通事故——。

 生き返ってまた大切な人に会う。そんな奇跡を提示された。そしたら、伝えそびれた言葉も伝え合えるかも知れない。


 その偶然に縋(すが)ってまで生きようとは思えなかった。どうせ元々、そんな奇跡存在しないはずだったんだ。



 じゃあ、せめて俺は自分の意志を押し通す。



 人には終わりが存在する。

 その終わりはいつなのか分からないで満ち溢れている。


 けれども、人の意志は紡いでいける。


 なら、俺はここで意志を紡ぐ。



 俺が死んだとしても、俺の意志を忘れない人がいる限り、俺の意志は終わらない。



 やるべき事はやった。後は、結末を空から見届けるだけだ。



 生まれてから死ぬまでの映像を振り返りながら、俺の魂はゆっくりと天に向かって進んでいった。



 後は、頼んだぜ——。



◆——◆



「嘘だ。なぜ……、なぜ、李さんが亡くなられるんです? これ以上前の過去には戻れなくなってもいるし……、一体、何が起きている……?」


 ギロチン台を見下ろせる屋根の上で、動揺する孝太郎。

 その姿を目の前で見るバムとエポンの姿。


 託された側として、失った彼の意志を無駄にはできなかった。


 だからこそ、勝たなければならないんだ。



 

◆◆


 ネクストサイド――バム。


◆◆



「"りりりりり"さんは言った。あんたを逃せば、この世界を一瞬にして滅ぼすんだって……。それは本当なの?」



 逃がさないように銃を象る形を作った右手を真っ直ぐ向ける。逃げようとしたら、すぐに銃弾——バレットを放てるようにした。



「ああ。本当ですけど、それがどうした?」


「じゃあ、ここから逃がさない。逃げようとしたら、撃つ。その後も、逃げれないように攻撃しまくる。」



 彼は呆れたような表情を浮かべため息を吐きかけた。


 しかし、すぐにキツイ表情に変わった。そして、首を鳴らし始めた。


 

「……。ちっ。本当に逃げられないのか。なら、邪魔するなら排除するまでです。ちょうど良かった。憂(う)さ晴らししたかったんですよ。」


 彼の瞳は邪悪に染まっているように見えた。


「アンタらは人じゃない、人権もない。けど、李は人だ。人権もある。李が死ねば、その後はどうなる? まずは謝罪会見しなきゃいけないよな。世間への対応で追われて、『詩忍にくちなし』プロジェクトは頓挫せざるを得なくなる。すぐさま俺も日陰者だ。ああ、やっぱり、うぜぇなぁ。アンタら。」


 まるで魔族……いや、魔族を超越した恐ろしき何者かがそこにいるような感じがする。気圧されそうだ。


「戻る前に憂さ晴らしで世界を滅茶苦茶(めちゃくちゃ)にするか……。ここで愚痴吐くよりも暴れた方がすっきりしそうだしな。……うん。」



 その言葉はまさに本物。

 愚痴を吐いてくれた好都合だった。


「ワシの"エコー"とバムの"爆音"で、オヌシの今の言葉はこの国の者に知れ渡った。もうオヌシの敵はワシらだけじゃなく、この国じゃ。……勝てる訳ないのじゃから、諦めて降参せい。」


 エポンの言葉は何とも思っていない様子。



「敵は国? そんなこと知ってるよ。だから、憂さ晴らししようと考えたんだ。二回も"コンティニュー"させちゃって……、ほんとアンタらは生かしちゃおけないな。」



【バレット】



 人差し指から召喚し放つ銃弾。それをいとも容易く避けられた。


【衛星(えいせい)】——スプートニク


 氷の怪物が現れ、孝太郎に襲いかかる。



【拘束】



 エポンの作った怪物を見えない縄で縛り上げてきた。



 そして、こちらへと走ってきた。



 と、思いきや、突然、足を止めた。

 その後、立ち止まった。



「オートセーブ? なぜ知らない間にロード地点が変わるんだ?」



 困惑している孝太郎。

 今のうちが攻撃のチャンスだ。


【バネ】


 足元にバネを召喚し、その勢いで勢いつけて突撃する。そして、思いっきり殴る。



「そうか、アンタが持ってるのか、『光り輝く玉』を——。」



 さっきまでの困惑していた状態が一転した、突然冷静沈着な様子になり、さらに攻撃を予め読んで避けつつ僕の殴りかかった腕を掴んだ。


 その勢いを利用して屋根へと叩きつけられた。



 勢いよく屋根を転がり、距離を置く。



「李は光り輝く玉を持っていなかった。だから、自動(オート)能力(スキル)であるはずの"リトライ"が発動されなかった。そういうことだったんですね……。」



 その独り言のような問に対して、「正解だよ」と呟いた。

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