壱伍玖、《近藤孝太郎戦》壱
「『りりりりり』さんは技"リリース"によって、自らの死を厭わずに、この時のために全てを賭けていたんです。だから、その思いを無駄にはしない。」
【バネ】
避けられないスピードで攻撃したら、きっと避けられるはずだ。
勢いを溜めていく。
「"光り輝く玉"を返して貰えませんか?」
「無理って言ったら?」
「殺してでも奪うまでです。」
【硬化】
敵の動きが止まった。
僕は思いっきり殴りにいった。
【遠距離!】
エポンのサポートによって、少し遠くに離れていても攻撃を当てられる。
離れているのにダメージを与えられるパンチ!
ぶん殴り遠距離砲——!
孝太郎は後ろに軽く吹き飛ぶも、手応えがない。まるで石像を殴ったみたいだ。
【氷】
辺り一面が氷漬けにされるような勢いで進んでくる冷気。
【炎天】
エポンが繰り広げる円。僕らの周りだけ不思議なバリアのようなものに守られたみたいだ。
【エンジン】
猛スピードで孝太郎へと近づくエポン。
【遠心力】
急速に回転する腕。相当な威力だ。一方で、孝太郎はそれに向かって左手で受け止めようとしていた。
【抗力】
孝太郎に近づくにつれて威力が弱まる攻撃。左手に当たった時には、もうそんなに強い威力を誇っていなかった。
【コレクション】――半『肆』バネ
右手で右フックを決めてきた。手の先にはバネがあり、エポンは屋根の外へと吹き飛ばされた。
【縁の糸】
エポンの右手から出てきた赤色の糸が孝太郎の足に絡まった。
「これでワシらは縁が繋がった。それにしても、いい色をしとる。……この運命の赤い糸は、まさしくこれから出すであろうオヌシの血の色じゃな。」
「何を耄碌してる。"R"を高めないために血は出ないように設定してるだろうに。」
赤い糸に引っ張られて、孝太郎も空中に身を投げ出される羽目になる。
人々が集う広場に落下。民衆は孝太郎を見て、攻めようとしていく。
「よしっ、これで多対個。これなら、押し倒せる。」
【氷】
地面から現れる氷の氷柱が人々を乱雑に吹き飛ばしたり刺したりしていた。
【コレクション】――半『零』浮遊
浮かび始める孝太郎。
【コレクション】――半『壱』斬撃
顔は前を向きながら手だけ真横に攻撃を繰り広げていた。そして、斬撃が国王の首を吹き飛ばし、その姿を消し去った。
あまりのスムーズで予測不可能な攻撃に近くにいた忍らも何もできずにいたみたいだ。
「国王を殺したっ! 何のつもりだっ!」
「死に戻りの中で、一度はソイツが厄介な技をしてきた。だから、先に処刑しただけだよ。」
「この方を誰だと心得ているっ!」
怒りの声が響いている。
「国の王でしょ? こっちはさらにその上、いわゆる神の立場なんですけど?」
【コレクション】――全『陸』エネルギー弾
都市を覆い尽くすように空に広がる大量のエネルギー弾。それが絶望的な状況を示していく。
【コレクション】――全『玖』落下
真っ逆さまに落ちていくエネルギー弾。それらが建物や人々を破壊し尽くしていく。建物は幾つも壊れ、人々は何人も消えていく。
焼け跡が増えていく。
【コレクション】――全『拾壱』挟む
広場にいる助かっていた人々。その真横に現れる巨大な壁が左右それぞれ現れる。それが重なるように収束し、その間にいた人々を押し潰し消し去った。
「滅茶苦茶だ……。」
さっきまで数の優位があったはずなのに、今では戦えそうな人がほとんどいない。
僕は地上の降り立った。孝太郎もまた地上に降りてきていた。
強烈な破裂音。
吹き飛ばされる人影。チラッと見えたのはエポンの姿だった。思いっきり真後ろの方へと吹き飛ばされていった。
「なかなか厄介でしたが、ようやく倒せました。後は雑魚処理レベルですかね。」
余裕そうな孝太郎。
彼の背景は焼け跡が広がっている。
せっかくりりりりりが託してくれたのに、全てが無駄になってしまう。
あまりの実力差に物怖じしてしまいそうになる。
「李もエポンもいない中、アンタだけじゃ俺には勝てないでしょ。諦めて"光り輝く玉"を返してくれ。」
「嫌だっ! まだ諦めない。」
「一瞬だけでもいい。俺の欲しいのは、その玉じゃなくて、その玉の中にある李の残留思念。それさえ取り出せれば、それに用はない。」
尚更、渡す訳にはいかなかった。
並々ならぬ足音が聞こえる。
そこに近づいてくる一人のおじさん。そのおじさんが僕の元へと近づいてきた。
「約束は果たしたでー。」
いつの間にか、街にはさらに大勢の人で溢れかえっていた。その誰もが戦う姿勢を見せている。
そのおじさんから『光り輝く玉』が取り出された。
「なっ、なぜアンタがソレを持っている。そもそもアンタは一体誰なんだ?」
見るからに、ただのおじさん。しかし、僕からしたら、
「大切な仲間だよ。りりりりりさん、僕、エポンさん、そしてこのおじさんが、アンタを倒すパーティーなんだ。」
僕は『光り輝く玉』を受け取った。玉が体の中へと入っていく。
◆
自動能力——【バフ】
自身もしくは仲間が『光り輝く玉』を所持している時、常時使用される。
味方の能力を向上させる。ただし、自身には効果が適用されない。
◆
「強いていえば、この人は馬車の運転手さんだよ。」
そう言うと、彼は「もういい、その説明は聞いた」と遮られた。
エカチュリーナ達仲間が殺された後、りりりりりはこのおじさんに光り輝く玉を託したんだ。
このおじさんは馬車の運転手として、各地を移動しまくる力を持っている。それを利用して各地に行き、その『光り輝く玉』をその村や町の人達に触れさせた。
りりりりりの持つ光り輝く玉——『天使の勇気』の効果は、触れた者に意志を与えるというもの。
りりりりり曰く、その意志がないと孝太郎に敵対しようとしないという。なぜなら、思考回路が機械のままだから。しかし、"天使の勇気"にさえ触れればそれが変わるという。
僕達がエポンの家で半年いかない程、時間を費やしている間に、彼は各地で仲間を増やしていった。
僕とエポンの爆音とエコーで響いた言葉によって、孝太郎への敵対の意志が宿り、人々に戦う力を与えた。
そして、今、その人達がこの場に集まった。
さらに、この戦うもの達は"対孝太郎軍"として、僕達の仲間である。
だから——
「僕の"自動能力"でここにいる一人一人にバフがかかる。今度は簡単にはいかない!」
「ちっ。早くしないと、敵が増える。本当に嫌になる。」
片目を瞑り、頭に片手を置く孝太郎。何やら頭痛でもしているみたいだ。
きっと何度も彼の自動能力——"コンティニュー"で死に戻りをしているんだ。
けど、何度も使い回すと脳が負荷に耐えられなくなっていく。
今まさしく、脳への高負荷によって頭痛が起きているんだ。
「倒すなら、今がチャンスだ。みんなっ、一気に倒すよ!」
声が響き渡る。
「それはこっちも同じこと。別勢力が来る前にさっさと倒さないといけませんからね——。」
【降水】
雨が降り始めた。
一方、僕達の方は集団で襲っていく。
【鋼鉄の剣】
孝太郎は鉄の剣を召喚して、襲い来る敵に対応していく。
【洪水】
【バネ】
街が水で溢れていく。水が人々を襲っていく。
僕は残された建物をバネで蹴って空中に移動した。上から攻めるのみ。
【凍れ!】
一瞬にして水が氷に変わった。
氷漬けにされてしまった人々が見える。
【バレット】——銃弾
【コレクション】――全『拾』反射
放った銃弾が跳ね返された。
いつの間にか目の前に現れる孝太郎。右手の親指と人差し指を立てて数字の二を表している。
【コレクション】――半『弐』斥力
唐突な波動のようなものに吹き飛ばされてしまう。ただ、くっつけていたバネのお陰で大ダメージは防げた。
【壊れろ】
凍らされた人々が、氷とともに消滅した。
相当な数の人が消えてしまった。
「くそっ。許せない。」
【バネ】
バネで勢いをつけて、一気にぶっ飛ばす。
「許せないのはこちらの方です。プロデューサー、即ち神である私の手を煩わした……。万死に値します。」
【抗力】
勢いを失う。弱まった攻撃を簡単に受け止められて、そのまま蹴り飛ばされた。
【コレクション】――全『拾壱』挟む
僕の左右に現れた壁が僕を挟みにきた。避けきれない。
【縁の糸】
僕に巻き付く緑色の糸。
【エスケープ】
壁が挟まった。
その前に僕は近くの当たらない位置へと瞬間移動していた。
「間一髪じゃったのぅ。」
エポンだった。
生きていて良かったと思ったけど、まだ戦いは終わっていない。気を緩められない。
その時、壁が破壊される。
しかし、孝太郎が壊したようには見えない。
「来てしまいましたか……。」
鋭い視線を、壊れた壁の方向に向ける孝太郎。
その先に現れる巨体の魔族と、近くにいる三体の魔族。
「我が名は魔王シェムハザ。ここに降臨す。」
「魔族四天王の揃い踏みじゃあ。」
孝太郎との戦いでも不利なのに、まさか魔族までもが現れてしまうなんて……。
雨が緩やかに降り注いでいた。




