壱伍陸、REVENGE
「基本的なパーティーの人数は四名程度。ですから、数名は助けられるようにしたんですが……あまりにも決断が遅すぎるせいで全員亡くなってしまいましたね。決断が遅い理由を教えましょうか? 不用意に仲間を増やしすぎたからですよ。もし四名ぐらいに絞っていればこんなことにならずに済んだと思いませんか?」
怒りが込み上げる。
その言い分に反吐が出る。
「お前さえいなきゃ死ぬことはなかった。今からお前を倒す。そして、約束通りこの世界から手を引いて貰うぞ。」
「では、"セーブ"しましたので、ここから貴方が満足行くまで真剣勝負を繰り広げましょうか。」
その言葉が希望を失わせる。
アクバルやカストロらを初めとする都市で集めた仲間達が殺された時、殺される前に巻き戻せなかったように、もうエカチュリーナ達の殺される前には戻れないということ。
【リカバー】
投げてどこかへと消えた剣の回収。パッと目の前に現れる剣を手に取った。
「バム……俺の足にバネを頼む。」
「はい!」
【バネ】
俺は空に浮かぶ孝太郎目掛けて跳んだ。
「前はお互いバムのバフがあったが、今回は違ぇ。これで終わりだ。」
【氷】——【硬化】
剣を振るう。
しかし、どこからか召喚された氷の剣で防がれた。
「終わりなのはどちらでしょうね?」
【コウモリ】
孝太郎の姿がコウモリ人間へと変わった。
【高音】——超音波
強烈な音の攻撃。鼓膜がはち切れそうだ。
俺はそのまま地面に落下した。
ボヨン。突然現れるバネが衝突のダメージを防いでくれた。
全身のバランス感覚がおかしい。
立ち眩みのように、上手く立てない。
「——!」
孝太郎は何かを言っているような気がするが、聞き取れない。
いつの間にか俺は氷で体を貫かれていた。
◆◆【リトライ】◆◆
再び仲間達が殺された後に巻き戻された。
バムと共に孝太郎に敵対している。さっきやられた鼓膜も今は回復している。
「"天使の勇気"は『CPU』に自我を芽生えさせる力。余談ですが、『超高性能AI』と宣ってはいるが、その実、『クローン技術』を用いた技術。あまり褒められたものではない。」
【リカバー】
剣を取り戻した。
「どうでもいい話でしたね。ひとまず貴方の"天使の勇気"は戦いにおいてあまり役に立たないスキル。一方、私の"神の知恵"は全ての系統を使いこなせる戦いにおいてとても強力なスキル。これだけで置かれた状況を認識できると思いますが……まだやります?」
三つある系統において、誰しもが必ず得手不得手がある。
一つしか得手はなく、他は不得手で上手く使いこなせなかったり効果が薄くなったりするのがこの世界の常識。
しかし、その不得手が存在しないということは……
「全系統を使いこなせるって訳か。そりゃ厄介だな。ただ、諦める理由にはならねぇよな?」
「そうですか——。」
俺は地面に剣を突き刺した。
【隆起】
地面が山のように盛り上がる。これで孝太郎のいる位置まで走りながら進んでいける。
空中では攻撃を避けられなくても、地に足つけて進めば避けられる。俺は山に向かって踏み進んだ。
【氷——】
氷の氷柱が地面から突き刺そうと現れてきた。それを横に移動して避けていく。
「今だっ!」
【バネ】仲間による援護。
足元に召喚されたバネを利用して、一気に詰め寄る。
後はこの一撃を喰らわすだけ。
【コレクション】――全『拾』反射
いつの間にか俺は移動していた方向と真逆に進んでいた。攻撃そのものが反射されたしまったみたいだ。
【コレクション】――全『壱』時空斬
【バネ!】
時空を斬り裂く強烈な斬撃。
それが周りの木々を薙ぎ払った。
バムのお陰で空に跳ばされ斬撃を避けられた俺は下を向く。バムは片手を失っているがなんとか生きている。馬車は運転手諸共斬られてなくなっている。
とても危険な技だ。
「その技、便利そうなので使わせて貰いましょうか。」
【コピー】
いつの間にか俺の真上にいる孝太郎。足元にはバネがついていた。
【コンドル!】
孝太郎はコンドルに変身した。硬く鋭い嘴がギラギラと光る。
空中をバネを使って蹴り飛ばした。
唐突な落下攻撃に俺は巻き込まれる。コンドルの口に突き刺されながら地面へと衝突した。
【リデュース】
そのダメージの威力を軽減させた。
なんとか立ち上がる。
孝太郎は距離を置いていた。
【コレクション】——肆
攻撃が来る……と思って身構えたが、攻撃は飛んで来ない。
「使い勝手が良さそうなので、保存させて貰いました。このような攻撃はいかがでしょうか。」
【コレクション】――全『肆』バネ
木々の根っこに召喚されたバネ。それが一瞬だけ空中を蹴り上げて、あちらこちらに木々が移動した。
【攻撃——】
空中を押し固めてバネで反射して跳ぶ数え切れない程の木々。それが俺向かって進んでくる。
【リフレクト】
当たりそうな木の攻撃を反射した。……が、また俺目掛けて跳んでくる。
あちらこちらから来る木の突撃に、アクロバティックな移動でなんとか避けていく。
異世界転移じゃなくて異世界転生で助かっ……いや、まだ気は抜けない。
なんとか切り抜け孝太郎の元へとやって来れた。
「木に注意を奪われ、私の攻撃に対しては疎かになってしまいましたね。」
氷の氷柱が俺の体を貫いている。
「しまっ……た——。」
彼の方が一枚上手だったみたいだ。
◆◆【リトライ】◆◆
「何度やっても無駄ですよ……。」
ため息混じりに放たれる言葉。
「そんなことはない」と否定して攻撃しにいくが、そこで剣がないことに気づいた。
「まさか剣を手元に戻すのを忘れるなんて……それだけ脳の限界が近づいているのでは? いくら巻き戻せるからと言っても、脳への負荷は避けられないですからね。」
足が止まった。まだ、全然動けるはずなのに、頭が体を動かそうとしない。
頭痛が襲う。片手を頭に置いた。
「絶対に勝てない相手と言うのは視聴者にとっては面白くはありません。ですので、敵陣営味方陣営関わらず努力や背伸びをすれば倒せる程度の実力が丁度いいんです。」
浮きながらそんなことを言い放つ孝太郎。
「しかし、それは今すぐの話ではないんです。今の貴方にとって私はラスボス手前の敵。もしくはラスボスそのものかも知れない。それが冒険の序盤で殺られてはつまらないゲームになると思いませんか? そういう存在は最後まで努力し足掻いた上で背伸びしてようやく倒せる力がないといけない。でないと、格がなくて視聴者の熱が冷めてしまう。」
「何が言いたいんだ?」
「私はまだまだ倒される訳にはいかない格上の存在。これは強制的な負けイベなんですよ。」
「だから諦めろってか?」
【リカバー】で取り戻す剣。
「嫌だね!」
【氷】で現れる氷の一片。それが【バネ】により飛ばされ襲う一撃。
それを打ち払い攻撃を止めた剣の広い面。
「コピーしたものはリトライしても引き継がれるのか……。」
また、大斬撃からの木々の攻撃。そして、油断した時に行われる氷攻撃には気をつけなければならない。
【降雨】
雨が降り始めた。
【凍れ!】【壊れろ!】
俺は氷の結晶に閉じ込められて破壊された。
◆◆【リトライ】◆◆
「だから言ったでしょう。これは負けイベなんだと……。諦めなさい。」
「いや、諦めきれねぇ。」
「これ以上は時間の無駄です。何度も同じ光景が続くと見飽きてしまいますからね。ここでお開きにしましょう。」
「まだ、終わりじゃねぇ!」
「いいえ、終わりです。次会う時を楽しみにしていますよ。」
「次なんてねぇよ。今日この場で、終わりだ!」
【リカバー】俺は剣を手元に戻す。
【コレクション】――半『漆』瞬間移動
孝太郎はその場からパッと消えてしまった。もうこれ以上追うことは出来なさそうだ。
「くそっ!」腸が煮えくり返るのに、そのやり場が見つからず地面に当たる。
大切な仲間を失った。もうその仲間を取り戻すことはできない。
「きっと、どれだけ強くなったとしても、それでアイツを倒せたとしても、きっと掌の上で踊らされているんだろうな……。」
俺はバムの所へと歩んでいく。
独り言を呟きながら——。
「それは本当に勝利と言えるのか。いや、言えない。なら、このままじゃ本当の勝利は掴めないことになるよな……。」
もう失うものは失ったんだ——。
バム以外の仲間を失った。
いや、それだけに留まらない。
「もうとっくに失ってるんなら、何も怖いもんはねぇ。」
俺とバムは馬車小屋へと乗り込む。そして、次なる町に向けて馬車が走り出した。馬に鞭が叩かれる音が響く。
「なぁ、バム。」
「何ですか?」
「孝太郎との戦いに決着をつける。ただのうわべっつらの勝利じゃねぇ。本当の勝利をするんだ。そのためにバム……お前の力が必要だ。」
俺の脳裏に浮かぶ"孝太郎との"最終決戦""の四文字。
まだ旅は始まったばかり。
しかし、孝太郎との戦いを終わらす手段は頭の中で浮かんでいた。




