↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『うちの勇者がすいません。』「魔王退治?視聴者?知らんな!」~詩忍にくちなし~  作者: ふるなゆ☆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/32

壱伍伍、REMOVE

 半壊した村。

 危機は去っても、受けた傷が治るとは限らない。だから、別に修復する必要がある。


「傷ついた人は私の所へ来てください。」


 薬草を適切に調合して、怪我を治していくリンネの姿。


「採ってきたよ~」とチャンドラグプタがカゴ一杯の薬草を彼女の近くに置いた。


 また、ヘンリとソルジェニーツィン、パンクハーストも彼女を手伝っていたみたいだ。


 まぁ、彼女らは同じギルドの仲間だからその状況も頷ける。



「心の回復——メンタルケアはわたくしにお任せくださいね。」



 テリジアは傷ついた心を回復させるために密かな場所で心の淀みを取り払うために動く。



 俺とバム、エカチュリーナ、ディオクレティアヌスの四人でローテーション制度で、村の護衛をしたり、雑用をやったりをした。


 建物が建てられていく。



 少しずつ、少しずつ村が修復されていく。

 名も無き村に活気が戻っていく。



 

 滞在から数十日が経った——。




 村は回復し、以前と同様の暮らしをできるようになった。 


 ポキッ——。


 俺は真ん中に聳(そび)え立つ桜の大木から枝を大量に手に入れる。


 ダダン!


 ただの緑葉の木を倒し切る。



 そして、その台木に桜の枝を接ぎ木する作業を繰り広げていく。


「何のためにこんなことするんだ?」


 エカチュリーナは意味が分からずとも、丁寧に接ぎ木を完璧にこなしていた。



「村は魔族に襲われて色々な箇所(かしょ)が傷だらけだ。リンネ達が人の外傷を手当するなら、テリジアは人の見えない傷——内傷を手当する。どちらも必要なことじゃないか?」


「まぁ、そうか……。そうだな。」


「俺らが村の雑用をして直したのは外傷だ。だが、内傷は直せない。」


「内傷……。人なら分かるが、村に内傷なんてあるのか?」


「見えない大切なものがあるんだよ。そして、そのためには人々の生きる希望を与えるシンボルが必要なんだ。」



 バム達の手伝いもあり、なんとか目標の数の接ぎ木を終えた。



「きっと、これがこの村のシンボルになるはずだ。」


「それで、そのシンボルって何なんだ?」


「桜だ。今は村を代表する一本の巨大な桜の木。それと同じ桜の木が同時に花開くんだ。そうすりゃ、この村はもっと桜の美しさを手に入れる。そうして人々の希望になりゃ嬉しいな!」


 

◆◆


  

 英雄による桜接ぎ木事業。


 それが村に咲き誇り、村人の希望となる。そして、英雄の真似事をした村人がさらに、桜を植えていき、この世界の特殊な気候と相まって、いつしか年中桜が咲き誇る場所となる。


 あまりにも美しく心打つ村に人々が集まっていき、『名も無き村(・)』は年中桜が咲き誇る町『春町(・)』に成長する。


 ……のは、それはそれは先の話。今はまだ希望を育てゆく名も無き村の話。



◆◆




 俺らは村を出た。

 そして、ディオクレティアヌスらとも別れることになる。


「もし魔王を倒せたら、ギルドで会おうな。そん時は一緒にパーティ組もうぜ!」


「いや、僕はギルドに戻りたいとは思ってないんです。」

 

「ギルドに戻りたくないのか? 嫌な思いをしたからか?」


「いや、違います。本当はギルドの方針に合わなかったので。」


「ギルドの方針……?」


 二人の会話に耳を傾ける。


「ギルドの強くなって魔族から守るとか探検するとかは大切なことだと思ってます。けど……」


「けど?」


「僕はそれよりも、身近な人を助けられる方がいいと思うんです。"名も無き村"の修復の手伝いの時にくれた感謝が今でも忘れられないぐらい嬉しいですし。」


 ディオクレティアヌスは笑っていた。


「なるほどな。昔の俺なら『馬鹿げている』って笑ってたな。だが、今の俺なら言える。『それ、最高だな』って、な!」


 とても爽やかな笑みを浮かべていた。

 そして、近くにいたメンバーの二人と少しだけコソコソと話し合った後、再びこちらの方を見た。


「よしっ、決めた。今のギルドは強さ至高主義だ。お前の言った困ってる人を助けるような考えは好まれん。だから、俺様が作ってやるよ。強さじゃなく困ってる人を助ける優しさを大切にするギルドをな!」


 そよ風が緩やかに吹いていく。


「あんたらが魔王倒すまでにギルド新設しとくから、そん時はギルドに入ってくれるか?」


「もちろん」とバムは言った。


「決まりだな。ちなみに、ギルド名は"バムギルド"でいいか? バムが作るきっかけになったしな。」


 

「いや、やめてよ、その名前は!」



 あまりにも杜撰(ずさん)なネーミングに俺らは笑ってしまった。


「僕がこんなことを、勇気を出して言えたのはりりりりりさんのお陰なんです。だから、せめて"りりりりりギルド"にして欲しいかな。」


 他人事のように笑っていたら思わずこちらに被弾(ひだん)してきた。「待て待て待て!」


 少し落ち着いて口を開く。


「バムに自信がついたのはおそらく光り輝く玉『天使の勇気』のお陰なんだ。だから、天使ギルド、いや、勇気ギルドでいいんじゃないか?」


「うーん、読みのゴロが悪いなぁ。」


「いや、りりりりりギルドよりマシじゃねぇか?」


 何故か、名前を決めるのに時間がかかる。

 そこに、テリジアが、


「勇気を英語にして"カリッジ"。『カリッジギルド』とかどうですか?」


 それを聞いて「いいな、それ」と返された。



「あの……、まだかかりそうですか?」と馬車を運転する男の人が訊ねてきた。



 今度こそディオクレティアヌスらとのお別れ。

 俺らは馬車小屋に乗り込んだ。


 手を振るバムやヘンリ、チャンドラグプタ。振り返すディオクレティアヌス、ソルジェニーツィン、パンクハースト。


 ゆっくりとその姿が遠ざかっていった。



 そして、馬車は深い深い森の中へと進んでいった。



◆



 どれほど進んだだろうか。


 いつしか馬車が止まった。



 あまりにも動かないので、外に出た。



「久しぶりですね。」



 そこには空中に浮いている孝太郎の姿がいた。



「何のつもりだっ!」



 剣を引き抜く。

 そして、バム、エカチュリーナ、チャンドラグプタも臨戦態勢になり、リンネ、ヘンリ、テリジアがサポート体制に入った。



「まずはご報告しようと思いまして。私と貴方はもはや敵対するしかない関係。そして、その関係上、私は悪役を担う立場。そこで私は——」



 怪しい笑みを深い茂みの森の中の翳(かげ)りに隠れて浮かべていた。



「魔王直轄(ちょっかつ)の幹部。魔族四天王の一人になってきました。これで貴方は私を倒さなければならない相手。」


「倒さなきゃならねぇんなら、倒させてくれんのか?」


「もちろん。倒されたら手を引きましょう。終わりなきチートは面白くありませんからね。」



 空中で座り、脚(あし)を組む孝太郎。



「さて——」



【コレクション】――全『零』浮遊



 両手で数字のゼロを作った。それによって浮かび始めるエカチュリーナ、チャンドラグプタ、ヘンリ、リンネ、テリジア。



「ハーレムと言えど、流石に限度があります。ですから、今から選別してください。助けたい人をバムのバネ化で助けてあげるのです。もちろん、本人がよく分かっていると思いますが、助けられるのは——一人だけ。それ以外は排除ということで。」



 この野郎(やろう)——。



「助けて」の声。「どうしよう」の焦燥しきったバムの声。


「このような無理難題は、時間をかけても決めるより、直感で選んだ方が上手くいく気がしますよね。ということで、二十秒で決めてください。」



 数えられるカウントダウン。

 二十——。


 投げる剣。しかし、攻撃は軽く躱(かわ)された。


 十——。


 焦る心。俺は今冷静さを失っている。


 もう孝太郎を倒す時間がない。早く誰を助けるか決めなければ。



 五——。


 誰を助ける?


 いや、助ける人を選べられる訳がない。全員大切だ。全員助けたい。俺には選べない。


 三——。


 早くしなきゃ。じゃあ、誰を?


 二——。


 バムは混乱中。俺が指示しなきゃ、動けない。


 一——。



 俺は——。



【コレクション】――全『仇』落下



 ……。



 上がる悲鳴。

 一瞬にして現れる五つの光の粉。


 瞬く間に消えた五つの命。



 俺が誘った仲間はバム以外全員、孝太郎によって殺されてしまった。



 魔族四天王——近藤孝太郎。



 ひっそりとした森の中、彼は不敵な笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。