壱伍弐、REJECT
カランコロン。
俺は仲間を集めるために組合へと入った。その中はとても賑やかだった。
一人の少年が地べたに座り込み、泣き出しそうな顔をしている。
「"バム"はパーティーには要らねぇんだよ。」
いかにも強そうな男が笑いながらその少年を笑いながら見下していた。片手に持ったジョッキの中にある酒のようなものを豪快に飲み干している。
「どうして……?」
「きゃははっ。だって、物にバネをつけて飛び跳ねることしかできなかったじゃん。なんで分からないの。ほんと。足手まといにしかならないじゃない。」
「ねー。ぴょんぴょんぴょんぴょん跳ねててウザかったもんねー。」
両隣りにいる魔女っぽい人と踊り子っぽい二人が笑い飛ばしていた。
「俺らは最上位のS級冒険者になったろ? 分かるか? 俺らはギルドの顔だ。なのにお前がいるとその顔に泥を塗ることになるんだよ。お荷物を抱える余裕はねぇ!」
軽い足蹴りされ、少し後ろに下がる少年。それを見て周りはゲラゲラと笑っていた。居心地が悪い。
「Fランクからはじめなおしたら?」
そして、そんな言葉を聞いた男が追い討ちに「なっ、もう誰もお前を仲間と思っちゃいねぇんだ」と付け加えた。
俺は近寄り難い雰囲気を切り裂いて進む。
「なぁ、よければ俺らの仲間にならないか?」
そして、手を差し伸べる。
「おいおい。そんな雑魚仲間にしてどうするんたよ。」ガハハと笑い飛ばされる。
「見ての通り僕は追い出されるぐらい弱いんだ。足を引っ張るだけだから、仲間にしない方がいいよ。」
まったくそんな卑下することないのに——。
「そんなことないぞ。お前はここにいる誰よりも強い。こいつらはそれを知らないだけなんだ。」
俺の近くにやってくるオラついた若めの男。顔を近づかせてきた。
「おーいおいおい。見ない顔だなぁ。こいつがワイらより強いってぇ? 冗談はよせ。いい加減なこと吹聴してんとやつちゃうぞ。」
「カストロには分からないかもね。」
「なんでワイの名前を知ってるんや? 熟気持ちの悪ぃ野郎だな。まぁいいや。それより、さっきの話だとコイツがワイより強いって話になるんだけど、気のせいじゃねぇよなぁ?」
「もちろん。気のせいじゃないぞ。」
「ふざけやがって。コイツより弱いだと心が傷ついたぞ。テメェは許さねぇ。今からテメェをボコボコにしてやる。今すぐ土下座するなら許してやるがなぁ。」
「必要がないな。」
「あぁん?」
喧嘩っ早そうなカストロが距離を置いて、両手を前に出した。
【カノン砲!】
巨大な大砲が目の前に現れる。その口先がこちらを向いていた。
「後悔しやがれっ!」
ドガァァァン!
放たれる砲弾。
【リフレクト】
さっと右の手のひらを向ける。砲弾は反射され、彼を襲った。そしてそのまま吹き飛ばされた。死にそうな顔をしている。
「何が起きたんだよ。」
「お前さんの攻撃を技で跳ね返しただけだ。それで、まだやります?」
震えた拳で床を叩いていた。
「何者なんだよ。てめぇはよぉ!」
「魔王討伐の旅に出る戦士ってとこかな。」
ギルドの中がざわめいていく。
「カストロ……。お前が実はいい奴ってことを俺は一方的にだが知っている。どうだ、俺の仲間にならないか? お前といりゃ、酒が美味しくなりそうなんだ。すぐにとは言わない。もし受け入れるなら六日後の午後二時に北門で待っていてくれ。それが仲間になるかどうかの返答にする。」
そして、俺はカストロの仲間と思しき近くで見守る三人の所へと進んだ。
「ムアーウィア、マキャベリ、チャンドラグプタも一緒にどうかな?」
上半身裸体のムアーウィア、ぱっとしない眼鏡をかけたマキャベリ、背の高いパワフルな女性のチャンドラグプタも仲間に誘った。
「少し考えさせてください」と彼らは言う。
今度は受付へと向かって、ギルド嬢に声をかける。
ギルド嬢のヘンリを仲間に誘った。
◆
俺はギルドを後にした。
その後ろから誰かが着いてくる。俺は振り返った。
そこにはバムがいた。
「あそこにいるのが苦痛で……。僕も一緒に着いていっていいかな?」
「ああ、もちろんだ。」
俺の元にバムがいち早く同行することになった。
二人で町の中を歩いていく。
行先は協会だった。
中に入ると、そこはステンドガラスを通り淡い光となった太陽が儚い雰囲気を作り出す不思議な空間だった。
そこにいた牧師のウェルギリウス。
俺は彼を仲間に誘った。
「誘われた以上、精一杯頑張ります。」
さらに、シスターのテリジアも誘った。
「え、わ、私がですか?」
「駄目ですか?」
「い、いえ。そんな訳ではないんですけど。」
そこにウェルギリウスが「仲間になりなさい。きっと神が導いてくれますよ」と仲間になることを後押しした。
それを聞いて「分かりました」と言う。
「では、私は旅の準備をしていきます。テリジアは一緒に着いていきなさい。」
ウェルギリウスが彼女を押し出す。
俺はバムとテリジアを連れて外へと出た。
◆
「ビックサイズのメロン。デカメロンを使ったパフェでっせ!」
立ち寄ったレストラン。
そこにいる料理人のボッカチオを仲間に誘った。
その後、吟遊詩人のディズレーリ、武闘家のプルタルコスを仲間に誘った。
「りりりりり様。もしかして出会った人達を見境なく仲間にしておられるんですか?」
テリジアは困ったように口を開いていた。
「うーん。見境なく誘ってる訳じゃないんだけど、なんて言えばいいんだろーなー。」
実はこれはこの世界での二週目で、一週目に知り合った仲間を誘ってるなんて言っても理解されないだろうし……。
なんて説明すればいいのだろうか。言葉に詰まった。
どこかで「泥棒だっ!」という声が聞こえた。
その声を聞いて裏路地に入る。
急いでいくとそこには二人の男達がいた。
「盗賊のタゴールとパストゥールか。やっぱり盗みでも働いていたんだな……。」
彼らは懐刀を取り出して矛先をこちらに向けてきた。
「誰だ、アンタら。捕まえにきたってんなら、殺すぜ。」
「安心して。俺は捕まえにきたんじゃない。仲間に勧誘しに来たんだ。」
「はぁ?」
「お前らの素早さが役に立ちそうなんだ。考えてくれないか。もし仲間になるなら六日後、午後二時に北門に来てくれ。」
彼らを仲間に誘う。
「仲間になる訳ないだろ?」
彼らはそこから消えていった。
「仲間に誘えませんでしたね」とテリジア。
「そうでもないよ。」
「どういうことです?」
「彼らは……ツンデレだ。」
そのまま裏路地を進むと怪しい場所に出た。そこにいた酒飲みのホームレスに声をかける。
そして、そのホームレスであるトルストイを仲間に誘った。
残り数日。
俺は門番のコスティニアヌスを仲間に誘う。
そうして、約束の日がやってきた。
◆
約束の日、北門の外——午後二時。
誘った全員がそこに集まっていた。
「これだけ人がいれば魔族だって、魔王だって怖くは無い。」
旅の準備万端の人達がそこで待っていた。やる気で満ち溢れた雰囲気が広がっている。
カラカラカラ——。
そこに、馬車を引く運送業者を連れてやってきた孝太郎。
「そうはいかないですよ。ここから先は馬車で進むしかありません。が、この人数では馬車小屋には入れません。つまり——」
「こんなにも仲間を連れては行けないってことか……。」
考えたものだ。それなら、人数を絞れる。
きっとそのために道に工作でもしているのだろう。そのための時間はいくらでもあった。
やられた——。
そんな感想しか出てこなかった。
「すまない。みんな。せっかく集まって貰ったのに!」
それを聞いて「仕方ねぇよ」と言う慰めなどが聞こえ始めた。
「決めた。俺らは数名で旅をする。だけど、金を得て、馬車を沢山買って、みんなが乗れるようにするから、その時は仲間になって欲しい!」
高らかに宣言する。
それを聞いて、人々は笑顔で頷いた。
「だから、みんな、少しの間だけ待っててくれ。必ず迎えに来るから!」
まぁ、それなら。という頷きが広がっていた。
「ひとまず先発の仲間を発表する!」
大声で言い放つ。
「一人目は"バム"!」
パーティを追放された少年が笑顔で近づいてきた。彼は仲間にならなければ不幸になってしまう。そう思った。
「二人目は"テリジア"!」
シスターのテリジアが馬車に乗り込む。
「三人目は"エカチュリーナ"!」
女騎士が騎士アクバルと軽く別れを済ました後に馬車へと進む。
「四人目は"リンネ"!」
薬師の彼女が馬車へと向かう。
「五人目は"チャンドラグプタ"!」
彼女はパーティ仲間のカストロ、ムアーウィア、マキャベリと別れを済まして馬車へと向かう。
「最後、"ヘンリ"!」
ギルド嬢のヘンリが馬車に乗り込み、仲間の発表を終えた。
「他のみんなは必ず迎えに行くから、その時まで待ってて欲しい!」
そう最後に念押しして俺も馬車へと向かう。
計八名の旅。
俺は孝太郎の耳元で「人数が多くてもハーレムなら問題ないだろ」と囁いた。
「イカれた奴め」そんな言葉を小さく返された。
馬が運送業者の人によって鞭で打たれ、真っ直ぐ前に向かって進んでいく。
残された人々が手を振っている。
その姿が少しずつ遠ざかっていく。
【コレクション】――半『零』浮遊
突然、孝太郎が外に出て、空中を浮いていった。左手で丸の形を作っている。
【コレクション】――全『捌』ロックオン
両手で丸を作り重ねる。まるで数字の八の字を表しているようにも見えた。
「何をしてるんだ?」疑問が浮かぶ。
「すべきことをやっているんですよ。」
今度は両腕を真っ直ぐ縦に伸ばして重ねていた。
【コレクション】――全『壱』時空斬
横に払われる腕。
ザンッ!
門の付近で手を振ってくれた仲間に誘ったが連れて行けなかった人達の体は、今や下半身しか残っていなかった。
悲しくもすぐさま、そこにいた全員が光の粉となって消えた。
「まぁ、魔族に襲われて死んだことにしましょうか。」
馬が止まった。
「何のつもりだ!?」
腹の底から声が出た。腸が煮えくり返るほどだ。
「簡単なことです。あまりにも人物——ネームドキャラが多いので、読者離れしないように邪魔となる者を殺しておいたまでです。これで観客は沢山の名前を覚えずに済みます。」
俺は馬車から飛び降りる。
「それが許されると思ってんのかよ!」
「もちろんですよ。逆に、後処理をした私を褒めて頂きたい程です。」
そして、剣を思いっきり強く握る。
息がつまりそうな空気感がこの周りを支配していた。
グッと剣を構えた。




