壱漆漆、果て
グリゴリが現れたと言う上級地域に一人で向かう。
立ち塞がる魔族を蹴散らしていく。
魔王直轄の魔族はいなくなったが、野生の魔族はまだ蔓延っている。
【爆炎】
放つ炎が道を照らす。
◆
上級地域、最果ての村——。
そこにたどり着いた時には村人の顔は疲弊していた。
「あなたはバムさんですね。聞きました。魔王を倒したこと。」
以前とは違い、受け入れてくれるようだった。魔王討伐ではなく封印ということを言うことはなくそのまま話を続ける。
すっかり疲弊した村。その理由を訊ねた。
「魔王がいなくなっても、魔族の脅威はなくなりませんでしたが、以前より断然にマシでした。村人が交互に交代して護衛装置に触れ続けるだけで良かったのですが……。」
村人に導かれるまま、村の外れにある白の灯台の屋上へと来た。そこには不思議な装置が存在した。
「これに触れていると、その者よりも弱い魔族は村に入れなくなるのです。以前、邪神様は遠隔で触れることで効果を発揮しました。そして、今度は村人で交代制で触れ続けることを決めたのです。」
灯台から村を見下ろした。
潮風が吹き荒れる。
「初めは何とかなりました。襲ってくる魔族の数は大幅に減り、対処可能になっていました。しかし、最近になって話が変わってしまった。邪神様が戻ってきたのです。」
村は少し痛々しい景色を残している。取り繕うとも消えなかった痛みだ。
「邪神様が再び護衛の交渉をしてきたので初めは断りましたが、次の日から護りを突破してくる強い魔族が押し寄せ、村は壊滅状態となり、我々は渋々、邪神様の取引を行うことに決めたのです。それからは、被害は減りました。」
話を聞くに、邪神様——グリゴリが無理矢理にでも護衛交渉へと取り繕うよう仕向けたのがすぐに分かった。
僕はそれを許せなかった。
自分の要求を通すために、村に危害を加えるなんて——。
村へと戻り、村長と話をする。
「僕が、その邪神とやらを倒してきます。後のことは僕に任せてください。」
そう言って、僕は森の中へと進んだ。
◆
深い森の中で僕らは再び対峙し合う。
「あら、私に何かようかしら? 私、あなたのことが大嫌いだから、できれば話したくないんだけど。」
「村のことで少し確認したいことがある。生贄制度を復活させるために、君、強い魔族を村に押しかけたよね?」
「証拠はあるの? あってもなくても魔族に滅ぼされかけるのが事実よね? なら、私の護りは必要じゃないかしら?」
「……。まぁ、いいよ。それより、これからはアンタの護りはいらないよ。」
「あら。どうしてかしら?」
「僕が護りの提供者になるから。魔王と同じように僕は封印されるけど、護りは永続される。ほら、君の護りはいらないでしょ。」
「調子乗らないでくれる。」
【魔導書】
文字が浮かび、『WIND』の文字ができる。そして、強烈な風が襲ってきた。
【バネ】
そんな風に負けることなく飛び出し、そのままグリゴリの懐へ。そして、蹴り飛ばした。
「ムカつくわね。けど、ここからよ……。私はね、"変身系"なの。姿が醜いから使いたくはないけど、仕方ないわ。見せてあげる。そして、死ね。」
やっぱり"具現化系"や"言霊系"じゃなかったんだ。
彼女の使う"魔導書"の能力は魔導書を召喚する"具現化系"能力。さらに、そこから出された文字を繋げて技に変える"言霊系"能力。その二つを組み合わせた能力。
しかし、技の発動が遅いのに対して威力もそこまで強い訳じゃない。
魔族四天王と呼ばれる程強いはずなのに、そこらの魔族と同等の強さしかなかったのには少し疑問に思ってた所ではあった。
"変身系"と聞いて納得した。
そして、これから本来の彼女の力が示される。
【グソクムシ】
もはや山と同じ大きさがある虫になった。あまりの大きさに見上げるしかできない。
【爆発】
爆発を起こしたが、硬い外殻のせいでビクともしない。
そのまま森の木をなぎ倒しながらこちらへと進んできた。
【バネ】【倍】
バネで勢いを増して殴りにいくも何ともない。急いでバネで距離を置く。
体の石化も攻撃に悪影響を与えている。一部分が動かないせいで思った程の威力が出せない。
【バード】【爆弾】
大量の鳩を召喚する。
【バードストライク】
鳩を衝突させて、ぶつかる時に大爆発を起こす。
初めはビクともしなかったが、大量爆撃に少し狼狽えた様子を見せた。
「次で倒しに行くよ……。」
【バネ】
バネで勢いをつけて蹴りに進む。
巨大すぎるグソクムシに真正面から蹴りに入れた。が、グソクムシもまた突撃してきた。僕の方が押し負ける勢いだ。
「これで……いい!」
足についたバネが収縮し始めている。
今だ!
その反射によって、大きく後ろ側へと飛んでいく。そのまま地面にバネをぶつけた。今の威力をバネに乗っける。
【倍】
さらに勢いをつけて——
発射!
まるでロケットミサイルのような勢いで飛んでいく。そして、右手を標準に合わせ……
【爆発】
爆発の威力と混ぜて、凄まじい威力をグソクムシにぶつけた。
グソクムシが姿を変えていく。
小さく小さくなり、人サイズの魔族となった。
グリゴリが息を切らして立っている。
「なかなかやるわね……。けど、死ぬのはそちらよ!」
【魔導書】
本が召喚された。
【バレット】
指から放つ銃弾が、胸を穿つ。
グリゴリは光の粉となって消えていった。
戦争にて取り逃した敵。そして、村に害を与えた敵。
今、完全に倒すことができた。
村へと戻り、グリゴリを倒したことを報告する。
村は邪神を倒したという噂で持ち切りだった。
そして——
「村の護りは僕がやります。」
どのみち石となってしまうなら、誰かの役に立って死にたい。
灯台へと向かい、護りの装置に触れる。
僕よりも弱い魔族は村に近寄れなくなる装置。
【倍】
僕の石化が早まっていく。
僕は石となり果て、最果ての村を護る存在になった。
◆◆
それから、それなりの時間が経った。
その間、僕らの意識はなく、ただ石像として世界に君臨した。
ジュリネという女性がこの世界に迷い込み、ワムの門下生カゲトや、妖精のカナリンを初めとする仲間達と共に冒険し出す。
そして、彼女らは石像の破壊を始めていく。
ここから僕以外の『五忍』の石像の破壊についてダイジェストで紹介していく——。




