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『うちの勇者がすいません。』「魔王退治?視聴者?知らんな!」~詩忍にくちなし~  作者: ふるなゆ☆


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壱陸捌、転換期

 翼を羽ばたかせて飛んでくるアザゼル。


 緩やかにカーブする刀が振られた。

 それを空中に身を乗り出すことで回避した。



【空気砲】



 クヴァシルの放った空気の塊が直撃した。背後の塔に衝突する。



【鋼鉄(アイアン)の弓銃(・ボウガン)】



 すかさず鉄の矢が飛んできた。


《回避的超常》


 空間把握を利用して軽々と避ける。

 矢の雨が塔に突き刺さっていく。



【バランス】



 僕は壁に垂直に立った。この技の効果で例え移動場所が垂直でも自由に動けるようになる。


 放たれる鉄の矢。


 それを壁を走りながら避けていく。



【バネ】



 勢いよく飛び跳ねてアザゼルの元へ。そして、真下に撃ち落とすようにぶん殴る。


《攻撃的超常》


 アザゼルを真下へと落下させた。



【鎖】



 パカッ。


 傀儡の腕が開くと、そこから鎖が飛び出てきた。こちらへと向かってきている。



【バリア】



 透明なバリアでガードした。



「やはり、そうくると思いましたよ。」



【鍬(くわ)】



 鍬を持ったクヴァシル——いや、二体目の傀儡が鍬を振り下ろしてきた。


 直撃する。


 真っ逆さまへと落ちていく。



【バネ】



 何とか落下の衝撃で大ダメージを受けずに済んだ。



「申し訳ねぇけど、死んで貰うぜ!」



【鋼鉄(アイアン)の鉄槌(・ハンマー)】



 落ちた所を狙って巨大なハンマーが振られた。


 直撃!


 

【バネ】



 バネで大きく後ろに吹き飛ばされ、木でできた家々を破壊して進んでいく。そして、いくらか離れた所まで転がった。


 何とか僕は立ち上がった。

 バネのお陰でもあった。



「魔族四天王に二対一ね……。なかなかキツイけど。弱音吐いてる場合じゃないよね。」



 急いで先程の場所へと向かう。

 相手が見えてきた。


「そんな簡単にやられる命(たま)じゃないっすもんねぇ。」


【バネ】


 勢いをつけて殴りにいく。


【倍】


 その勢いを倍にして、猛スピードで突撃する。 


【鋼鉄(アイアン)の旋棍(・トンファー)】


 彼の繰り出したトンファーが僕にクリーンヒットした。一方で、僕もまた拳をアザゼルにクリーンヒットさせた。


 お互いが勢いのまま背後へと吹き飛ばされる。



 そして、立ち上がる。



「どうして、人間を襲うんだよ。わざわざ停戦協定を破ってまでやるべきことなの?」


「そりゃそうよ。アンタら人間は力を拡大してきているんだぜ。生命線って知ってるっすか? 魔王城の生命線とされる魔王城付近の森にまでアンタら人間が立ち入るようになっちまった。魔族もまた自らの命のため、対抗するしかないっしょ。」


「だからと言って、町を襲っていいとは思わない。」


「お互い様っしょ。アンタら人間が魔王城付近にまで勢力を伸ばすのと、俺ら魔族が人間の町にまで勢力を伸ばすのとで何が違うんすか?」

 

「話し合いをすればいい。人間も魔王城付近に近寄らないルールを設けるし、だから魔王軍も町は襲わない。そう協定を結ぼう。」


 

【鋼鉄(アイアン)の剣(・ソード)】



 アザゼルはトンファーを消滅させて、剣を召喚させた。



「わざわざそんなことしなくても、今ここで奪い取る方が楽っしょ。」



 話し合いで解決できそうになかった。


「仕方ない。僕は君を倒すよ。」


「その言葉、跳ね返そうか。アンタを殺して、このまま魔王軍の第二の城にしてやるっすよ。」


 剣が横に振られる。頭を下げて何とか避けた。



【バネ】



 バネで真後ろに跳ぶ。

 そして、後ろにある建物にバネをぶつけて斜めに跳んだ。


 アザゼルの周りをバネで飛びまくり撹乱(かくらん)させる。



「遅いぜ!」



《攻撃的超常》



 見切られ剣が当たりかけるが、回転を利用して何とか掠(かす)り傷で済ませた。


「なら——」



【倍】



 移動速度を倍にする。アザゼルの周り四方八方を目まぐるしく動きまくる。


 時々、殴りを入れつつ、次の攻撃のために前方の壁へと移動する、を繰り返す。



 防戦一方のアザゼル。

 クヴァシルはその攻撃の中へと入れない。下手な攻撃はアザゼルに当たるので撃てない。



 このまま押し切る。



「いくら早くても慣れちまえばこっちのもんっすよ。」



 剣が振られる。

 僕の攻撃に反応してきた。



「なら、次で終わりにするよ。」



 "解除"


 普通のバネのスピードで殴る。


【倍】


 倍速のスピードで殴る。



 その二つを組み合わせて、読みづらい速度で攻撃しまくった。



 そして、



 バシュ!



 拳が頬にクリーンヒットして、アザゼルを吹き飛ばした。



 吹き飛ばされていくアザゼル。



 そんな彼をクヴァシルが受け止めた。



「やるじゃねぇか。」


「ようやく隙ができましたねぇ。ここからは私も参戦しますよ。」



 僕はそこで立ち止まる。

 バネで動き続けたせいで足に疲労感が溜まっている。


 これ以上動くのは避けたい。


 だから、僕は指を鳴らした。



 パチンッ。



【バード】




 召喚する白い鳥。そして、僕の周りを旋回しながら飛んでいる。



【爆弾】【バードストライク】



 鳥の中に爆弾を召喚し、鳥に衝突を強制させる。


 そこに見える魔族だけではなく、近くの建物にも鳥をぶつけさせて爆発させた。


 そこに見える魔族が本物とは限らなかったからだ。あれは偽物の傀儡で、本物は近くにいる可能性がある。


 そして、今の戦闘で住民は近くにいない。だからこそ、遠慮なく攻撃できる。



「撤退ですよ。これ以上は生死に関わりますからね。」


「ちっ。撤退しなきゃならねぇとか最悪だぜ。」



 クヴァシルは相当な負傷を負っているのが見えた。爆発に巻き込まれたのだろう。

 クヴァシルがアザゼルを連れて逃亡した。


 降り注ぐ鳥の爆弾の中、彼らは逃亡に成功した。



 溜まりまくる疲労感。

 これ以上、動くのは辛かった。



 魔族四天王二人は何とか退けたが、魔族の軍団は今現在どうなっているかは分からない。



「まぁ、ハイヒロの兵士が何とか粘ってる気がするわ。」



 ゆっくりと高い所へと進んだ。


 そこから見える景色。


 何とか魔族の群れをハイヒロの兵士が退けていた。



 普通だったら容易く負けているに違いない戦いも、今の彼らは能力にバフがかかっている。だからこそ、退けることに成功している。


 "光り輝く玉"と僕に与えられた"自動(オート)能力(スキル)"の力。



 僕の仲間はバフがかかるようになる。



 もちろん、距離的に離れると効果はなくなるが、この位置なら問題はなかった。



 この突然な戦争は僕らの勝利で終わった。



◆



「魔王軍の侵攻か……。それでオヌシは何を申しにきた?」


 古の都にて、僕はハイヒロでの一件を国王に報告した。そして、一つ提案を引っさげて拝謁することにしたのだった。



「僕が直接、魔王城に乗り込みます。」


「なに!?」


「そこで直接、交渉します。魔族と人間の境界線を定める交渉です。」


「よかろう。ただし、その交渉は我々が行う。オヌシは会議の開催について伝えるのだ。ただし、少しでも人間に敵意を顕にするのであれば、その場で殺すか、無理なら我に伝えよ。今すぐにでも大群を向かわせてやろう。」



 強気の態度の王様。

 できうる限り戦いなんてしたくない僕にとっては、会議の開催に成功させたい気持ちが高まった。



「それと、交渉には同行人を連れていく。安心したまえ、弱き者ではない。」



◆



 魔王城への旅。

 三日程度の道なり。


「バム君と一緒に行けるなんて……。まるでデートだねっ。」



 腕にギュッと絡みつく体。

 僕は苦い汗をかいた。



「ネヌ氏……。これは遊びではありませんが……。」


「いいの。せっかくのチャンスなんだもん。」


「はぁ、いい歳して何を言ってるのだか……。」


「何よ……。言ってみなさい、デイルタ君!」



 ため息が放たれていた。


 

 同行者はネヌとデイルタ。

 もし襲われても、それ相応の実力者のため、心配はいらない。


 ただ、緊迫感が圧倒的に足りていない。



 三日で中級地域——元翡翠の国を抜けた。ようやく上級地域に入る。



 相変わらずネヌは浮かれている。



 ラグンからハイヒロまで一日。ハイヒロで一日滞在し、そこから魔王城へと向かう。



 棚田のような緑の階段をのぼった。



 その後、自然のアスレチックのような道なりを進んでいく。



「バム君。すっごく楽しいね!」


「……。遊びに来た訳じゃないんだけど……。」



 木の橋を超えて進むと、そこには立派な城が見えてきた。


 都が古めかしい城とするならば、この城は新しさを感じさせる城だ。



「じゃあ、行こうか!」



 僕らは魔王城へと踏み入れた。

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