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『うちの勇者がすいません。』「魔王退治?視聴者?知らんな!」~詩忍にくちなし~  作者: ふるなゆ☆


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壱陸陸、火忍・バム

「ごめんね。わざわざ来てもらって。他の二人は?」


「ソルジェニーツィンさんもパンクハーストさんも来ないって言ってました……。」


「仕方ない。詫びのお菓子でも贈っておこう。」



 スライム捜索の一件を終えて、僕はワムに誘われて上級地域の中にある彼のおすすめの場所へと向かっている。

 彼にとっては、その場所がせめてものお詫びの品らしいが、他二人は来る気配がなかった。



 僕が連れて来られた場所は赤い椛(もみじ)で埋め尽くされた森だった。少し進むと金色の装飾が施されている道が現れた。


「触らないでね。触れると発火するから。」


 紅葉の葉がゆらりゆらりと地面へと落ち、床に触れると軽く燃え上がって消えた。



「炎(ほ)の国……、今は上級地域か。ここにはね、九つの秘境(・・)があるんだ。どれも見れば感動を覚える最高の場所。僕にとっては、上級地域出身者としての誇りでもあると思っているんだ。」



 一面、赤と金で囲まれた煌びやかで荘厳な場所だった。



「ここで最期を迎えられるなら、本望だよ」なんてことを言いながら先へ先へと進む。


 目の前には御堂のようなものが見えた。


「ここは歴史上、魔王シェムハザや国王ソフィス五世が使ったとされる有名な場所なんだ。『詩忍に梔子(くちなし)』とは聞いたことあるかい?」


 僕は首を横に傾げた。


「『透明な梔子(くちなし)』をここに捧げるとね、神様と交渉ができるんだ。それで魔法のような力を手に入れられる。ただ、失敗すると呪いをかけられる。魔族が生まれたのも秘宝が作られたのも、この御堂のお陰なんだよ。」


 彼はその御堂を見ながら、


「ここにはそんな立派な歴史が詰まっているんだ」と言い放っていた。



 目を奪われるかのような素晴らしい景色。

 そして、ここには心を奪うような大層な歴史が存在する。



「これが君達に見せたかった最高の場所さ。これに負けないぐらいの景色が上級地域に残り八つもあるんだよ。」



「それはいいね。見に行こうかな。」



「ただ、行くのも命懸けなんだ。」



「好都合だよ。その方が修行になりそう。」



 僕らは来た道を戻った。



「思い出したよ。君は英雄と呼ばれていたバムだよね。」


「そうだけど……?」


「君は魔王シェムハザと共同して世界の破壊者を倒したと聞いてるよ。それで一つ聞きたくてね。君は魔族をどう思ってる?」


 唐突な質問に「どう思ってるか聞かれても……」と困惑した。


「魔族は滅ぶべきと思ってる人もこの世の中多い訳だ。君はどのように魔族に対して考えてるのか聞きたくてさ。」


「考えたことなかったな……。もし人間に仇なすなら倒すし、危険そうじゃなかったら、わざわざ倒す必要もないと思うし……。」


 それを聞いた彼は「良かった」と呟いて笑っていた。



「君とは馬が合いそうだ。俺は魔族には良い魔族と悪い魔族がいると思ってる。人間も良い奴と犯罪を犯す悪い奴がいるように、ね。良い奴なら例え魔族でも倒す方が悪だとそう思うんだ。」



 続けて彼は「君になら、これから四人目となるとっておきの門下生を紹介できそうだよ」と小さく呟いていた。



◆



 エポンを連れて、秘境巡りの二人旅が始まった。


 氷瀑の洞窟——。


 鍾乳洞の中に広がる氷の世界。まさに自然の氷が支配する輝かしい空間。



【爆発!】



 目の前にいる死神の魔族。

 倒しても粉々になった後、水へと変わり、すぐに形を元の姿に変えて凍ることで、何度でも蘇る。


 ただ、一度倒すと復活に時間がかかるので、その間にそれなりに進むことができる。



 結局、倒し切ることなく、氷瀑の洞窟を満喫した。


 


 天空の雲島——。


 雲に浮かぶ、まるで塩湖のような、鏡の世界のような空間。映る世界はとても輝かしい。


 そこに現れる偽物の自分とエポン。

 下手に動くと足元の雲が壊れて真っ逆さまに落ちてしまう。



【エリア】


【衛星】——スプートニク、おおすみ



 エポンが怪物を二体繰り出して偽物を追い詰めていく。


【バルーン!】


 巨大な風船を召喚して、その風船を足場にして僕は進む。


【バズーカ】


 放つ重砲。それが偽物のいる地面諸々消し飛ばす。



 あっという間に、敵は消えた。

 後はこの透き通る世界をゆっくりと楽しんだ。



 他にも、秘境を巡っていった。

 その間に魔族に襲われては倒していき、確実に実力を身につけていった。



◆



 残るは"愛の白浜"という秘境のみ。

 そこは最果ての村の先にあるという。


 僕はまず最果ての村へと到着した。

 村からは何やら静けさすら感じる。恐る恐る村の中へと進んでいった。



「邪神よ、邪神。ここに生贄(いけにえ)を用意しました。我が村をお守り下さい。」



 円になっている村人。その真ん中には櫓(やぐら)があり、その上に縛られて動けない若い女がいた。


 二匹の鳥の魔族が近づいてきた。


「この者と引き換えに、村の護りを継続する。」 

 

 そんなことを話すと、無抵抗の女が二匹の鳥の魔族に連れ去られていった。



 このままみすみす見逃す気にはなれなかった。



【バレット!】×二



 指から放つ二つの銃弾が魔族を撃ち殺す。

 空から落下する女の人に向かって【バネ】を発動。地面への衝撃をなくすことに成功した。



「大丈夫ですか?」



 急いで駆け寄り、体を縛る縄を解いていく。



「余計なことをするな。他所(よそ)者めが!」



 先端が石の槍が二本僕の首元に差し伸べられた。エポンもまた同じように石の槍を突きつけられていた。


 そこに老人が近づく。



「なんて事をしてくれたんだ。これじゃ邪神様の怒りに触れてしまうかも知れない。」


「その邪神とやらを倒すよ。なら、問題ないよね……?」 


「そういう問題じゃないのじゃ。我が村は邪神様に生贄を差し出す代わりに、魔族避けの護りを施して貰っているのじゃ。」



 村全体の怒りが僕らに向かっているのが分かった。



「邪神様の護りとは、邪神様よりも弱い魔族が寄り付かない結界のこと。そして、邪神様の護りがないと、村は魔族の群れに襲われてしまう。我々の村があるのは邪神様がいてこそなんじゃ。」



「だからと言って、誰かを殺すだなんて……。」



「若い女の命で村全員の命が救われるのじゃ。これほど素晴らしい交換条件などない。それなのに余計なことをしおって……。」



 ゾロゾロとやってくる村人。僕らは彼らによって、縄で縛られてしまった。



「もしもの時はその女とオヌシらの命で勘弁して貰おう。」



 この状況から脱出しようと思えば、脱出できる。しかし、脱出するよりも、誰一人欠けずに対処する方法を考えていた。



 そこに一人の魔族がやってきた。

 王冠を被ったツンツンした髪の毛。長身に黒いピシッとした服を着た男の魔族だった。


「おいおい。なんかイレギュラーがあるから見てこいって言われたんすけど、どうなってるんすか。」


 その魔族は確か近藤孝太郎との戦いですぐに負けた人だったはず……。



「これはこれは、キング様。実は、生贄の儀の最中、突如他所者が現れ、邪神様の遣いの魔族を射抜いてしまいまして……。」


「へぇ。あの怪鳥をかぁ。その余所者って?」


「こやつらです。」



 無理やり立たされて、その魔族の前へと身を出された。



「初めましてだ。俺様は"アザゼル"。人魔(ひとま)皆(みな)『キング』と言う。そして、魔族四天王の一人なんすよ。」


「はじめまして。僕はバム。といっても、まぁ、僕らは今や、ただの他所者かな。」


「ん? バム……。英雄バムか……。噂だけは聞いたことあるぜ。」



 彼は余裕そうに僕らを見ながら指を鳴らした。



「アンタら、その二人を解放してやるっすよ。まー、自力で抜け出せるんだろうけどな。」


 その言葉を受けて、村人らは僕らについていた縄を解いた。

 彼の言う通り、僕は"爆炎"で、エポンは"液体操作"からの"液体窒素"により縄を破壊することができた。



「本当は人間共にアンタら二人を殺させても良かったんすけどね。同族殺しにゃ、アンタらも手を焼くっしょ。ただ、卑怯者のクヴァシルとは違うんでなっ。」



 彼は生贄の方へと跳んでいった。


「安心してな」と言い放つと、空中で身を構える。



【鋼鉄(アイアン)の小刀(・ナイフ)】



 召喚されたナイフ。

 それで彼女の周りの空間を斬り裂いた。


 縛られた縄だけが切り落とされた。



「今年の贄姫(にえひめ)は俺様が貰おう。俺の好みの顔なんでな。綺麗な花は眺め続けていたいっすから。……グリゴリにはそう伝えておくから、安心しとけよな。」



 キングことア(・)ザゼルは、贄だった女を抱きしめるように持ち上げ立たせる。


「承知致しました。邪神様には何卒よろしくお願いします。」


 村人らが散り散りとなっていく。



 少しの束の間。

 村に静けさが残る。


 彼は僕達に「少し話しをしないっすか? 火忍のバムさん」と伝えてきた。


 僕は首を縦に振った。



◆——◆


 五忍の一人——

『火忍』英雄のバム


◆——◆



 愛の白浜——。

 そこは純白色の灯台の下、エメラルド色に輝く海と白色の砂浜を見下ろせる絶景の場所。



 僕らはそこに場所を移した。

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