壱陸参、土忍・ネヌ
「英雄バム様。ご同行よろしくお願いいたします。」
ディオクレティアヌス達の誘いで、僕らは都市にあるカリッジギルドにお邪魔した。そこで、僕はジュースとお菓子でのパーティに参加し楽しんだ。
その後、ギルドから出た時に国の忍に見つかり、僕はある依頼を言い渡された。
国王命令の下、僕は蒼の国と炎の国との戦争に加担するように命じられてしまったのだ。
指揮官はネヌという女の子だった。
彼女は翡翠の国統合後、土島に自身のギルドを設立したみたいだ。
今、仕方なくそのギルドへと来ている。
アルカナギルド——研究をメインとしたギルドだ。
「失礼します。」
僕はそのギルドの中へとお邪魔した。
そこに一人の女の子がやってきた。
可愛らしい服を着て、不思議な杖を手にしていた女だった。
「あなたが英雄バム?」
それに頷いた。
「嘘っ! 英雄だから、もっと厳つい感じのを予想してたからすごくびっくり。見れば見るほど……可愛い~。きゅんとしそう。」
あざとらしく上目遣いで見てきた。
しかし、この人が国の指揮官で、かつ世界最強の一人だと想像に難かった。
◆——◆
五忍の一人——
『土忍』智将のネヌ
◆——◆
フランソワーズのマカロンを口にいれる。
今はアフタヌーンティーの時間だ。
僕は今まさに、ぬいぐるみの紹介を受けていた。どれも生きてはいないものの、名前を与えられて彼女に愛されていた。
その時、若い男が横を素通りする。
それを彼女が止めた。
「ジェノム君。お願いがあるの。いーい?」
ジェノムと呼ばれた男は「いいですよ、マスター」と答える。
「この子にね、今回の戦争の両翼を紹介したいんだー。」
「二人をここに呼べばいいのですね?」
「うん。ありがとー。」
彼がさっとどこかへと進んでいった。
「あの人はジェノム君。サブマスして貰ってるの。とっても真面目で頼りがいがあってー、ほんときゅんとする子なの!」
笑顔で、かつ食べ物を口で咀嚼しながら言う。口元を隠す手はピンクとパープルに彩る星が散りばめられたネイルが目立っていた。
そこにきた二人の男。
「紹介するね。まずはステファー君。とっても真面目で、頑張り屋さんなんだー。見てるだけでもえもえちゃうよね。」
もえもえとは何なんだ……。
「続いて、ワテル君。こう見えて、意外と面白いところがあるんだよー。」
「へー。」
相槌を打ったはいいものの、肝心の戦争に置いてどれ程の実力があるのかはまだ分かっていない。
そして、そのことを聞き出すことはなく、その日は終わってしまった。
◆
ついに、戦争開幕の日。
僕らは元翡翠の国に陣取っていた。
敵国となる炎の国は山を挟んで向こうにいる。こちらの動向を受けて、軍を固めていた。
「ここからは私の作戦通りに動いて貰うからね。」
ネヌが僕に与えた役割は《防衛》。
基本的な兵力はここに来る前に殺られていくそうだが、特段強い相手には突破されてしまう。
もし突破された時、その特段強い相手を倒す役目を与えられた。
僕の横にいる一人の筋肉質の男性。彼は翡翠の国の国王だった男。名をデイルタと言った。
カァンっ!
ネヌが持っていた杖を地面につくと、一瞬にして敵地の様子やそこに至る道の様子などが映る大きなスクリーンが現れた。
もはや丸見え状態だ。
「何これ……。」
そう言うと、デイルタが、
「秘宝——幻の杖ですよ。アレ一つで状況が全て分かってしまうのです」と答えてくれた。
ゲリラのように森の中をひっそりと行動するステファニーと、彼の連れた貧乏そうな大人。大人は生きる気力が見えない見た目をしていた。
「さて、仕掛けるよ。ステファー君、お願い。」
幻の杖から状況を確認していく。
【ステルス】
ステファーは連れてきた大人達を透明化させた。彼らはそのまま敵に単騎で突っ込んでいく。
普通なら無謀でも、透明化してるから気付かれずに進んでいける。
ステファー以外の人が敵地ど真ん中に立ち、そして透明化が解除された。
「では、回戦の狼煙を上げましょう。『A1』から『A5』まで起爆。」
その言葉を受けて、下で作業班と呼ばれるパソコンに向き合う人達がキーボートを押す。
画面の中で、爆発が起きていた。
爆発の強烈な音が響いていく。
混乱する炎の国の軍隊。
僕も混乱した。
【ネクロマンサー】
彼女が変身をして、ゆっくりと頷いた。
「ステファー君、ワテル君。プラン通り。」
【ステルス】
透明化するワテル。彼が敵地へと侵入していく。
【ワープホール】
仕掛けられた罠。
それに触れた敵兵士が、僕らの目の前へとワープしてきた。
【眠れ】
そこに現れた兵士は眠らされた。
急ぎ足で我々の兵士が爆弾を持ってきた。
【ねじ込む】
その爆弾が体の中へと入れこまれた。
外見からでは爆弾が入ってるかどうかは分からない。
その兵士は眠らされたまま、元の戦場へと戻された。
それが四回行われた。
「次のステップに移るわ。」
ステファーとワテルが身を引く。
映像に映るのはなんとか混乱から脱して、敵が来ないようにいくつかのグループとなって密集する軍。
さっきのゲリラ爆発を恐れての行動だろう。密集して、中に人を入れない戦法だ。
そこにさっき眠らされていた兵士も加わっているっぽかった。
「『B3』を起爆して。」
押されるキーボード。
密集した軍隊が崩れ出す。
「次は『B1』を起爆。」
デイルタが目を瞑って目を見開いた。
「怖いな……。いつどこから爆発する人間が来るか分からない。それに留まらず、仲間すら爆発するかもしれない。爆弾を埋められたかどうかは本人すら気づいていないんです。だから、もはや仲間同士で疑心暗鬼になるしかない……。」
つまり、内部で疑心暗鬼になった軍隊は——
崩壊する。
「順調ね。『炎の文字』の四点の《タレス》と《ピュタゴラス》は爆殺したわ。残りの『炎の文字』には気をつけてマークしていて。」
その言葉を聞いて「『炎の文字』?」と疑問を口にする。
それに対して、デイルタが教えてくれた。
炎の国の六人の強者のことだそう。
炎の文字『四点』
・水の使い手タレス《死亡》
・火の使い手ヘラクレイトス
・数の使い手ピュタゴラス《死亡》
・原子の使い手デモクリトス
炎の文字『上人、下人』
・上人、国王キッシュ
・下人、風忍ワム
以上、六人が気をつけるべき強者だそうだ。
「さーてと、ネヌの番だよ。ネヌ将棋の始まり始まり~。」
ネヌはそう言うと、
【念力】で自らを空中に浮かばせて戦地へと向かった。
「何をする気なの?」
「見たことはないんですが、聞いたことはあります。百聞は一見にしかずです。高い山から見下ろしましょうか。」
デイルタに誘われ、僕らはこちらとあちらの間にある山の頂上付近へと進み、戦地の様子を見下ろした。
「ネヌ将棋……。それはネヌ氏だけが行える特殊将棋です。味方の歩兵は何度も復活し、倒した敵は歩兵として味方に加わる。」
その説明だけでは理解できなかった。
が、盤面の様子を見てすぐに理解した。
ネヌが繰り出したのは死霊人——いわゆるゾンビだった。
ゾンビがパニックになって統制の取れていない敵軍を襲い、殺す。殺された兵士はゾンビとなってこちら側の兵力となった。
混乱状態で統制の取れない炎の国にゾンビを止める手段はなく、ゾンビは増える一方だった。
まるで感染力の高いウイルスのように、次々とゾンビに成り果て、あっという間にその場をゾンビが埋め尽くす。
ゾンビの軍団が襲いにかかる。
もはや誰一人として太刀打ちできるものはいなかった。
【念話】
ネヌは空中で浮かびながら戦地を俯瞰している。そこから、僕らに念の力で言葉の意思を送ってきた。
『『炎の文字』の《ヘラクレイトス》と《デモクリトス》はゾンビ兵によって殺したわ。残るは『上人』と『下人』。』
あっという間に六人のうち四人はこの世を去っていた。残るは二人。
『そして、『下人』の《ワム》がそっちに向かってる。相当強いから覚悟して、対応して。』
大剣を持った男が一人こちらへと向かっているのが分かった。
「風忍と名高いワムですか……。これは本気で殺しに行かなければ死にますね。」
デイルタが前へと出た。
雷忍と名高いデイルタが彼と敵対するみたいだ。




