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『うちの勇者がすいません。』「魔王退治?視聴者?知らんな!」~詩忍にくちなし~  作者: ふるなゆ☆


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壱陸弐、水忍・エポン

 この世界は新たな時代に突入した。

 近藤孝太郎との戦いで"光り輝く玉"《天使の勇気》を各地で触れる人が多く現れた。それにより明確な意志を持つ者が急増した。


 さらに、徐々にその意志は伝播し、この世界の新たな基盤が作られたのだった。



 そんな中、人間界において最強の五人が現れる。

 火忍(ほにん)、水忍(みずにん)、雷忍(らいにん)、風忍(かぜにん)、土忍(つちにん)。

 人々は彼らのことを——『五忍』と呼んだ。

 



◆◆


『詩忍にくちなし』~バム・ジ・オリジン~


◆◆



「握手してください!」


「……? あぁ、うん。いいよ。」


 小さな女の子が握手を求めてきた。

 僕はそれに応じて優しく手を握る。


「俺、サイン欲しい!」


 元気な男の子がマーカーペンを渡して、背中を見せてきた。僕はペンでその子の背中にサインを書いた。


「痛っ!」


 転けた男の子。今にでも泣き出しそうだ。

 手を差し伸べて「僕の技で早く治してあげる"ばい菌よ、飛んでけ~"」とありもしない技をかける。

 その子に笑顔が蘇る。


 可愛い人達との時間を終え、僕は町中を歩いていった。



 復興していく町。しかし、痛みはまだ治りきっていない。

 新たな王と共に、古くも新たな町が作られていく。


 

 僕は英雄となった。

 しかし、それに応じた強さがあるかと言ったらそうでもない。だから実感は一切ない。


 一方、魔王を倒した訳でもない。

 停戦協定を結ぶことはできたものの、戦いの種がなくなった訳ではない。


 いつ魔族が襲ってきてもいいように、英雄である僕は強くならなくてはならない。

 

 だから、僕は強くなるために修行を続ける。



 修行を付けてくれる相手は『五忍』の一人。

 そして今そこにいる。



「知ってると思うが、修行の場所は永久の町じゃ。さて、行こうかのぅ。」



 エポンの言葉に「はい」と返した。



◆——◆


 五忍の一人——

『水忍』仙人のエポン


◆——◆



 木に向かって様々な技を試す。そして、何度も繰り返したり負荷をかけたりして自らを追い詰めていく。


【バネ】【倍】


 バネの勢いを倍にする能力。

 ピュン!

 と、進む勢いに気圧されパンチが繰り出せない。



「惜しいのぅ。」



 時々、エポンさんと対人戦を行う。


 半年繰り返したある意味日常。


 変わったのは——そこに"りりりりり"さんがいないということ。



 鳥の声が聞こえてきた。前は気にもならなかったのに、今では気にしてしまう程の寂しさがあるような気がしている。



「そろそろ、無限回廊にでも潜るかのぅ。」



 ある日から、僕は無限回廊の中で修行することになった。


 


 無限回廊——。

 永久の町の外れにある永遠に続く野生の魔族が住む洞窟。


 その中を進めば進むほどに襲いくる魔族が強くなっていく。実力者御用達の力試しの場だ。



 基本は魔族から逃げることがメインだった。


 ゴブリンの棍棒をできる限り少ない動作で避けていく。そのまま攻撃を避けつつ、足を引っ掛けて転ばせる。


 ゴブリンのいる場所を抜けて進む。

 さらに強い魔族が待ち構えている。


【エリア】


 エポンの繰り出すエリアという技。その技は一定区域に特殊なサークルを作り出し、その中にいると自動回復するというもの。


 僕はそこで回復しつつ、無限回廊で時間を潰していった。




◆




 無限回廊での修行と家での修行を繰り返し、二年程の月日が経った。



「今日は特別ゲストを呼んでおるぞ。」


「特別……ゲスト?」



 首を傾げていると、そこに懐かしい三人が現れた。


 随分と厳つくなった輝く斧を背中にくっつけた男ディオクレティアヌス。

 妖艶な雰囲気を繰り広げているソルジェニーツィン。

 一段と美しさに磨きがかかったパンクハースト。 

 

 元仲間の三人がそこにいた。



「久しぶりだな。元気にしてたか……英雄。」


「うん。僕の方は元気だよ。」



 笑顔を見せた彼を見て、どこか安堵感を感じた。



「伝えとくことがあるんだが、事後報告ですまないけど、バムの名でギルド作ったわ。」


「へー。ん? え? どういうこと?」


「二年前に、人助けをメインにしたギルド——カリッジギルドを作ったんだ。お前の名前でな!」


「いや、なんで!?」


 もはや驚きを隠せない。


 僕の知らない所で、僕はギルドを立ち上げ、そのリーダーとされていた。永久欠番的な、名だけ置いた立ち位置。


 思わず苦笑いと汗が出てきた。



「今日は、一対三の対人戦を行って欲しいんじゃ。」


「正面対決は初めてだな……。やるからには手加減しねぇぞ。」



 つまり、ゲスト三人と戦えということだ。



「うん。僕もこの立場として負けられないし、こっちも手加減はしないよ。」


 彼が斧を取り出した。斧が輝いている。


「秘宝って知ってるか? 元の"文字能力"の他に武器の"固定能力"も使えるっちゅう、世界に十一個しかない武器だ。」



 普通、文字能力は一つしか使えない。例えば、僕は《バ》の文字しか使えない。しかし、その武器はその武器が元々持っている能力を使える。



「こいつの能力は"蓄積(ちくせき)"。ダメージを受けるほど、エネルギーが蓄積される。戦いが長引けば長引くほど、俺の土俵だ。」



「面白いよ。ちょっと燃えてきたかも。」



 こうして、元仲間三人との戦いの幕が上がった。



【ソーサラー】——魔術師



 ソルジェニーツィンが能力で杖を取り出した。


 "炎"


 そして、炎を繰り広げる。


【バネ】


 バネで横に跳ねて避ける。炎はその先にいたディオクレティアヌスにぶつかった。



「まさかの味方撃ち?」


「その通り。その度に俺様の斧は強くなる。避け続ければ、斧の蓄積は止められなくなるぜ。」


「そういうことね。」



 "氷風"



 氷の魔法が放たれる。


【爆風(ばくふう)】


 熱波を繰り出して相殺した。

 そのまま、バネを使って殴りにいく。


【パワー】


 パンクハーストの技でソルジェニーツィンの腕力が大幅に上がった。


 素手と杖、お互い互角の攻撃を直接当て、威力は相殺された。



「隙だらけだぜ!」



【バネ!】



 真後ろから斧で斬りにくるディオクレティアヌス。僕はバネで真上へと避けた。



【爆発】



 爆発を空中に具現化した。その爆破の勢いを利用して、真下にいる彼らへと強襲する。



 勢いよく蹴りにいくも、斧でガードされた。



「まー、そうなるとは思っていたけど……。」



 足元にあるバネで、軽く前へと跳ねて、空中前転をする。その後、地面にバネをつけて、勢いをつけて殴る。


 ソルジェニーツィンを殴り飛ばした。

 ひとまず一人目。



【バズーカ】



 バズーカを召喚して、パンクハーストに向かって放つ。



【パス】



 その攻撃は攻撃をすり抜けさせる技。その技をすることは分かっていた。

 だから、僕が放った箇所は彼女の一歩手前ぐらい。


 すり抜けずに地面に触れた砲弾は、一気に爆風を繰り出してパンクハーストを吹き飛ばした。



 これで二人目。



 残るは……



「本気でやらなきゃ意味ねぇらしいじゃん。死なねぇようになんとかしてみやがれ!」



 ディオクレティアヌスが斧を振ってきた。



「蓄積したパワーを上乗せした一撃だ!」



 強烈な一撃。



【バリア】



 その攻撃を見えない壁を召喚して止めた。



【バネ!】



 バネの慣性を利用した発射攻撃。ディオクレティアヌスを殴り飛ばした。



 三人が地面に伏す。



「僕の勝ち……だよね。」


「そうじゃな。」



 元仲間との対決は、僕の勝利で幕を閉じた。




「いやぁ、あのバムが強くなったなぁ。ってか、強くなり過ぎだよなぁ。」


 ディオクレティアヌスは笑いながら、地べたに座った。


「ホントよね」と隣から頷きが現れた。


「なぁ、バム。この斧はカリッジギルドのシンボルなんだが、俺が持ってるより、お前が持っている方がいいと思うんだ。やるよ。」


 ディオクレティアヌスが斧を手に持った。


「いらないよ」と即答した。



「本当にいらないのか?」



「うん。僕はこのままで大丈夫だから。」



 秘宝の斧は貰わないことにした。



「さて、せっかくの機会じゃ。みんな家でゆっくりしていきなさい。」




 エポンの家に、三人もお邪魔することになった。


 エポンの作った間食用の揚げ物を摘んでいく。



「ねぇ、蒼(あお)の国が翡翠(ひすい)の国を統合したことって知ってる?」



 ソルジェニーツィンの疑問に「えっ、そうなの?」と答えた。無限回廊やこの家じゃ、世間の情報が入ってこないせいだ。



 翡翠の国は、永久の町に隣接する場所に位置する国だ。蒼の国は都市を中心とした僕たちのいる国だ。



「世間で最強と名高いネヌさんって子が、無血開城で統合したみたいよ。」



 それに対して、エポンが

「まぁ、翡翠の国は魔族の攻撃を受けやすい地域。さらに翡翠の国は貧しく国力は弱い方ではあった。魔族に手を焼いていたから、統合を気に、人民の命のために防波堤を蒼の国になることで作って貰う算段なのじゃろう」と分析していた。



「それで、そのまま蒼の国は"炎(ほ)の国"に攻めこもうとしているみたいなのよ。」



「下手したら戦争じゃな……。」



 魔族との戦いは停戦した。

 しかし、人間と人間との戦いが始まろうとしていた。




 さらに、その蒼の国と炎の国との戦争に、僕も関与することとなる。無関係ではいられなかった。

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