壱陸壱、《近藤孝太郎戦》参
「やはり、着いて来てしまいましたか。とても面倒ですね……。」
「おい、小僧。共同するぞ。貴様は死んでもいいからなるべく時間を稼げ。我は奴のセーブを上書きする。」
魔王からの言葉を聞いて「分かった」と伝えた。
「やはり、アナタがセーブを上書きしていたんですね。しかし、なぜアナタが私に干渉できるのか、疑問ですね。」
【バネ】
バネで勢い付けた攻撃が避けられた。そのまま反対側にあった木にバネを当てる。
「簡単な話ぞ。我が自動能力"支配"により、直属の部下"魔族四天王"である貴様は我が管理下にあるのだ。」
【甲羅】
背中に向けて勢いよく殴るも鋼鉄の甲羅で防がれた。
バネを使ってその場を離れながら、次の攻撃に備える。
「これは私のミスですね。李さんとの敵対関係のために魔族入りしたのが裏目に出たという訳ですか。腑に落ちましたよ。」
◆◆
自動能力——支配
自身もしくは自身の管轄する魔族及び人間が"光り輝く玉"を持っている場合に常時発動可能状態となる。
自身の管轄する魔族及び人間に自由に関与することができる。
◆◆
孝太郎はりりりりりと敵対するために魔王直属の部下である魔族四天王となった。
それにより、魔王は"光り輝く玉"の恩恵を受けスキルが発動。魔王は孝太郎の持つ"神の知恵"の恩恵を受け、世界の真理を知る。
そこから対孝太郎への意志が生み出された。バムとエポンによる爆音とエコーで対孝太郎戦の存在を知ると、《支配》により孝太郎へと関与しセーブを上書きした。つまり、コンティニューでのリロード先を上書きした。
そして、現在に至る。
「鬱陶しい。小蝿同様の煩わしさだ。」
【コレクション】――全『伍』固定
僕の体が空中で止まって動かなくなる。
【真空波】——詠唱歌
魔王から放たれる真空の斬撃。
【コレクション】――半『壱』斬撃
片手で軽く振られて放たれた斬撃と衝突し、相殺した。
【白波】——船歌
小さな波が召喚され襲いかかってきた。
【コレクション】――全『弐』斥力
波に穴が開く程の衝撃波が起きた。その真後ろに立っていた魔王をも巻き込む。相当なダメージに見えるがそれでもまだ戦う気迫は消えていない。
【伸縮】——奇想曲
腕がゴムのように伸びていく。まさに自由気まぐれな腕だ。
【しなれ!】——遁走曲
長い腕がグネグネと繰り返しながら勢いを増していく。それが横に振られた。
それはまるで鞭のようで、まさに軌道の読めない攻撃。
しかし、孝太郎は軽々と避けた。
「なぜ、避けれる。」
「何度も何度も攻撃を目の当たりにしていれば、避けるぐらい些細なことですからね。」
「"コンティニュー"か……。」
【氷】
地面から現れる氷が魔王を襲った。
辛うじて生きているも、氷が邪魔で動けずにいる。
「これでようやく元の世界に戻れます……。」
孝太郎は余裕そうな表情を浮かべて地面にゆっくりと触れていく。
"バネ"——
そのバネの圧縮を限界まで溜めて溜めて溜めていた。
魔王が白波を立ててくれたお陰で固定から解放されてからずっと、僕は勢いと威力を高めるために溜めていたんだ。
「喰らえっ! 僕の一撃——。」
発射。
溜めに溜めた猛スピードの強烈な一撃。
【硬化】
鋼鉄の体にぶつかる。頑丈すぎる体をなんとか軽く吹き飛ばした。
「まさか貴方に二度殺されるとは思いませんでしたよ。避けられない速さに重い一撃。褒めますから、生きるのを諦めてくれません?」
「諦められる訳ないじゃん。」
「当然の返しですね。なら、先に貴方を殺しておきましょう。」
【衝撃波】——狂詩曲
横入りしてきた魔王の攻撃は避けられた。
「小僧、やるではないか。もう一度、その攻撃を当てろ。次で決めるぞ。」
「分かった。」
【バネ】
足元にバネを召喚して、極限まで勢いを溜めていく。
「逃げればいいと思っているのだろう。我が逃がしはせぬ!」
《支配》【真剣】——変奏曲
剣を召喚して、その剣で斬りにいく。
【鋼鉄の剣】
孝太郎は剣を召喚して、攻撃を防御した。
剣と剣がぶつかり合う近接戦に変わっていた。
鋼のぶつかる音が響いていく。
スッ。
剣が魔王に突き刺さる。
【高反発】
魔王が後ろへと吹き飛ばされた。
しかし、魔王はまだ諦めていない。闘志が目に宿っている。
「小僧……。まだか……。」
「いや、もう放てるよ。」
「そうか。なら、十秒後放て!」
それを聞いて、秒数を数える。
魔王は剣を引き抜いた。そして、孝太郎に向かって進んでいく。
十——。
九——。
八——。
七——。
外せはしない。この一撃に全てをかける。
六——。
五——。
四——。
三——。
【鋼鉄】
孝太郎は守りの体勢に入った。
二——。
一——。
【衝突】——行進曲
魔王の放つ強烈な右ストレートパンチ。
零——。
発射——。
僕が放つ高威力の強烈なパンチ。
孝太郎の前後から殴りにかかる。
「終わりだっ!」
その時、ふと直感が「待て」と声を出す。そして、孝太郎の方を見た。
それで、すぐに僕は「待って」と言い放った。
パンチを取りやめ、肩が当たる程度の体当たり。魔王は攻撃を横にずらして、攻撃を外す。
勢い余って僕はずっと先で転げながら進んでいった。
「よく気づいたな……。」
僕は先程の場所に戻ってきた。
孝太郎は気絶しながらその場で立ち尽くしていた。
「奴は気絶している。意識を取り戻すことはないだろう。」
孝太郎の負け。それは一目瞭然だった。
「気づいて良かった。いや、気づいたからこそ、こうして僕達がいるのかもしれないけど。」
「そうだな。ここが繰り返されるループの変化点だったということだ。」
もう孝太郎は動くことはないだろう。
それ程までに微動だにしない。
「セーブ地点をトドメの攻撃前に変えた。そして、我々の攻撃で奴が死ぬ度に攻撃前に戻されていた。何回も……何十、何百、はたまた何万、何億と繰り返されていたのかもしれぬな。」
「うん。」
だけど、時間を戻されていたかどうかなんて僕達には分からないこと。分かるのは、近藤孝太郎は何度も、どれぐらいかは分からないけど、繰り返し死んでは生き返るを繰り返していたということ。
そんな中、彼の脳は限界を迎え、今漠然と意識なく立ち尽くしている。
「死んだ訳ではないが、脳は死んでいるのかもしれぬな。」
魔王はゆっくりと孝太郎の腹の中に手を入れていった。
【シーフ】——盗作
彼の体の中から"光り輝く玉"を抜き取ったのだ。抜き取ったソレは魔王の体の中へと入っていく。
その瞬間、孝太郎の体は地面に倒れ、そのまま光の塵となって消えていった。
「我らの勝利だ。」
勝った——。
青空はとても澄み切っていた。
「勝ったよ——りりりりりさん。」
そんなことを青空に向けて言い放った。
◆
【知らしめる】——告知
「今、我と小僧が、世界を滅ぼそうとした奴を倒したことをこの世界中に"知らしめた"。我々は世界の英雄となるだろうな。」
「僕が……英雄?」
「そうだ。そして、それを見越して伝える。魔族と人間は一時停戦だ。奴の持つ"光り輝く玉"《神の知恵》を直接手に入れて分かったことがある。奴と同じ神に等しい存在は他に沢山いる。」
「神に等しい……存在?」
「小僧の仲間であった"りりりりり"という奴もそうだと言う。して、彼らがこの世界に干渉してこの世界を滅ぼすことなんて造作でもない。」
じゃあ……「この世界はその神の者達に滅ぼされるってこと?」
「だが、《神の知恵》を持つ我なら、こちらの世界と神に等しき者達——あちらの世界とを分かつことができる。時間はかかるがその間、その後は奴らに干渉されない世界になる。」
魔王は力強く言い切った。
「しかし、だ。人間と争っていては分かつ作業に取り組めない。だからこその停戦であるのだ。」
「けど、僕なんかに言っても意味無い気が……」
「貴様は英雄となる。その発言権もそれなりに得よう。だからこそ、言ったのだ。」
魔王はその場を離れていく。
そこにぞろぞろと集まってくる魔族達。
魔族ははるか遠くに存在する魔王城へと帰っていった。
◆
焼け野原となった都市。
痛々しい残骸だけが残っている。
世界を滅ぼす存在を倒した者として僕は英雄として祭り上げられた。
国王の座に現王子が着席する。しかし、まだまだ新米の身。英雄の発言権はそれなりに存在した。
魔王との停戦が締結——。
魔王はこの世界を守るために知恵を振り絞って作業を行っていく。
人間は半壊した町や人の修復に当たる。
穏やかな東風が吹いてきた。
◆◆
異世界転生者りりりりりの物語は幕を閉じた。
ここから先は"りりりりり"の意志を継ぐ奇しくも英雄となった僕、ことバムと——
奇しくも近藤孝太郎の知恵を引き継いだ魔王、ことシェムハザの——
その後の物語。




