1章7.5話 天使の寝顔と秘密の任務
皆さん、こんにちは。花菱 葵です。
第7話で睡魔の淵から驚愕の『おねしょ予言』を残したタカシ君。
今回は、その後の先生たちの奮闘を描く「幕間」をお送りします。
舞台は、静寂に包まれたはずの午後の教室。
寝顔は天使、中身はベテラン保育士(?)なタカシ君を巡って、リサ先生とサオリ先生の会話が炸裂します。
嵐の前の静けさ……ならぬ、嵐の前の「可愛い」をお楽しみください!
1章7.5話 幕間 天使の寝顔と秘密の任務
カーテンが引かれたウサギ組の教室は、午後の柔らかな光が隙間から差し込み、穏やかな寝息だけが響く平和な空間になっていた。
しかし、つい数分前まで、そこはリサ先生と隣のリス組のサオリ先生による「隠密トイレミッション」の戦場だった。
「ふぅ……。
とりあえず、これで一安心ね。
サオリ、急に呼んじゃってごめんね、ありがとう!」
リサは額の汗をぬぐいながら、ようやく肩の力を抜いた。
貴の「予言」を信じたリサは、サオリに協力を求めて、寝る前にトイレに行けなかった子や、特に疲れ切っていた子を順番に起こして回ったのだ。
「いいッスよ、お隣さんッスから。
でも……本当に驚いたッスよ。
リサ先輩が言った通り、どの子も揺り動かしても深い泥の中にいるみたいに全然起きないんスよ。
抱き起こしてやっと、寝ぼけ眼で歩き出すような感じで……。
どんだけ午前中に遊び倒したんッスか、この子たち」
サオリは苦笑いしながら、教室の隅で安らかな寝顔を見せている一人の少年の横にしゃがみ込んだ。
「……それで?
この、お人形さんみたいに可愛い子が、リサ先輩お気に入りのタカシ君ッスか?
確かにこれは……寝顔だけ見れば、ただの天使ッスね!」
サオリは、貴の長いまつ毛や、ほんのり赤らんだ頬をまじまじと見つめる。
その整った顔立ちは、精巧な人形に命を吹き込んだかのように見えた。
「でも、本当なんスか?
この『ふわふわした天使』が、寝落ちする直前に『みんな疲れすぎて自分では起きられないから、おねしょに気をつけて』なんて、そんなベテラン保育士みたいな警告をリサ先輩に残したって。
先輩、本気ッスか?
夢でも見てたんじゃないんスか?」
「本気と書いて本気よ!」
リサは、周囲を起こさないよう声を潜めつつも、力強く言い切った。
「タカシ君はね、その警告を私に伝えた直後、糸が切れたみたいに私の腕の中で眠りについたんだから。
……あの時の、すがるような小さな手の感触といったら……」
リサはエプロンの裾を指先でぎゅっと握りしめ、まるで初恋の熱に浮かされた乙女のように、その場に崩れ落ちんばかりに身を悶えさせた。
「だ、だって……あんな潤んだ瞳で『りさせんせ……』なんて縋られたら、もう、母性とか理性とか全部吹き飛んじゃうじゃない!」
「 先生、一生を賭けてあの子をプロデュースしたい……っ!」
「……ちょっ、何スかそのちょろインムーブ全開なリアクション!
リサ先輩、顔真っ赤ッスよ!」
サオリは「……引くわぁ」と言わんばかりのジト目でリサを睨んだ。
「んんっ!
と・に・か・く!
タカシ君は自分の眠気が限界なのに、みんなの失敗を心配して、クラスの平和を守ろうとしたのよ。
あの子の気転のおかげで、私たちは午後の大掃除を回避できたんだから!」
リサは必死に照れ隠しをしながら、貴の寝顔に視線を戻した。
「……まぁ、この寝顔を拝めただけでも、手伝いに来た甲斐がありましたッスね」
サオリは呆れ顔ながらも、貴の枕元から少しはみ出していた手を、冷えないようにそっと布団の中に戻してあげた。
(……これは確かに、毒気が抜かれるというか、守ってあげたくなる顔ッスね)
「でも先輩、覚悟しておいた方がいいッスよ。
この『小さな天使』がチャージを終えて目を覚ましたら、午後は一体どんな『伝説』が始まるのか……。」
これから始まる「午後の嵐」を予感しながら、二人の先生は顔を見合わせ、楽しげに声を潜めて笑い合った。
第7.5話をお読みいただき、ありがとうございました!
「本気と書いて『マジ』よ!」
リサ先生、もう完全にタカシ君の「ファン」ですよね(笑)。
4歳児に縋られて母性と理性が崩壊するリサ先生の姿、読者の皆さんも少しは共感していただけたでしょうか?
先生たちが頑張ってくれたおかげで、おねしょミッションは無事完了!
エネルギーをフルチャージしたタカシ君が目を覚ました時、いよいよ第1章の核心へと物語は動き出します。
「リサ先生のチョロインっぷりが可愛い!」
「タカシ君の寝顔を拝みたい!」
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