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第39話 意外と簡単な冒険アヒージョ

苦悩の末、僕は一つの品を選び抜いた。


スマートフォンに表示したレシピを沙也加へ突きつける。


「アヒージョ!いいセンスだねー」


目を光らせながらの応答。


どうやらお気に召したようだ。


「そう言ってもらえてよかったよ」


「じゃ、さっそく作ろっか!」


頷いて、同時に袖をまくる。


スマホへ写されたレシピに視線を落としつつ、僕は沙也加に指示を出す。


「そこのフライパンにオリーブオイルを入れて……ニンニク、唐辛子、塩を入れて弱火で熱します」


「ほいほい!」


「で、ニンニクの香りがしてきたら具材を入れる」


「そしたら?」


寝る前に御伽話を催促する少女の如く、さやかは問うた。


でも、そんなに興味を持って聞かれても僕が困ってしまう。


なぜなら……


「え……中火にして少し加熱したら完成、かな」


「簡単すぎない!?私、アヒージョってもっと難しい料理だと思ってた!」


そう、結構手順が簡単なのだ。


一説によれば火加減が命らしいが。


「なんなら、冷凍餃子とかウィンナー入れても美味しいみたいだよ」


「絶対美味いじゃんそれ!!やろよ!」


「冷凍餃子なんてあるの?」


「ここを誰の家だとお思いで?ウィンナーもあるよ」


「お、恐れ入りました!」


そうして話してるうちに、キッチンをパンチの効いた香りが漂いはじめた。


「そろそろかな?」


沙也加もそれに気づいたようで、会話を中断してフライパンへ目をやる。


「冷凍餃子は凍ったままでいいの?」


待ちきれんと言わんばかりの表情で、フライパンの真上に餃子を構える沙也加。


「大丈夫だけど、ちゃんと入れる前に水分を拭き取らないとーー」


「あっち!!」


その声を筆頭に、パチンッと油が跳ねる音がキッチンに充満する。


まったく、忙しないキッチンである。


「痛ぁ!?」


油断していると、僕の首にも油が跳ねた。


油だけにとかつまらないことを考えた奴は正直に手を挙げろ。


わかるぞ、その気持ち。


やがて、油との格闘を終えた僕らはブロッコリーやありったけの海鮮をフライパンへ放り込んだ。


「もうじき火を止めてもいいんじゃない?」


沙也加のつぶやきに対し、僕はフライパンを見る。


ここでの注意点は覗き込まないことだ。


「うん、いい感じだ」


「完成!?」


「完成!!」


「やったー!!」


はしゃぐ沙也加を横目に、冷やしていたグラスを冷蔵庫から取り出す。


「お客さん、まだ飲むんですか〜?」


「そういうあなたも、まだまだ飲み足りないでしょ?」


「よぉく、ご存じで。」


ニマニマ顔で目を合わせ、グラスに続いて冷えたビールを取り出す。


「グラスとビール持ってくから、沙也加はアヒージョお願い。」


指示すると、沙也加は顎に手を当てて少し悩むような仕草を取った。


「どうしたの?」


聞くと、途端に笑顔になってどこかへ去っていく。


どうしたんだ……?


しばらくすると、沙也加は一つの瓶を手に戻ってきた。


「充、今日はこっち飲も!!」

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