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第38話 舞台と役者は揃い踏み

並ぶ料理の数々、中央を彩るパエリア……


お酒も少しは用意したし、全てが完璧だ。


ただし、沙也加が起きていたら、だ。


静かな寝息を立てる沙也加は、全く起きる気配がない。


張り切っていろいろやってはみたが、この人が目覚めなければそれも意味がないのだ。


そこまで考えて、気づいた。


いつの間にか、料理を独りで作って独りで食べるだけでは、物足りなくなっていたことに。


早く沙也加を起こして、共に食卓を囲みたい。


なんなら、一品くらいは一緒に作りたい。


肥大化するそんな願望を必死に抑えながら沙也加の寝顔を見ていると、その瞼がわずかに動いた。


「ん……」


それから間も無く、手や足がピクリと動いた。


そして、ゆっくりと起き上がった沙也加は目を擦りつつ僕を視界にとらえたようだった。


「充…...?あれ、ここ私の家、?」


「おはよ。寝てる間に色々と作っちゃったけど食べる?」


「へ…?作った?」


首を傾げる沙也加に、僕は視線で料理の置かれたテーブルを指す。


「おわー!!これ全部充が!?」


「パエリア以外は簡単なやつばっかりだけどね」


テーブルにはパエリアの他に、好評だったイカリングフライや、酢飯と刺身、たこ焼きなんかも並んでいる。


パエリアとイカリングフライは手作りだが、他は冷凍食品や既に切り分けられた刺身などの簡単なものである。


そんな料理の数々を見渡したのち、沙也加は再び口を開いた。


「私も……もう一品くらい作ろうかなー、なんて」


クスっと笑いながら言うその様子は、一見するとただ冗談を言っているだけに見えるが、僕にはちょっぴり寂しさを帯びていたように見えた。


気づいたら僕の口は勝手に動いていた。


「作ろうよ!一緒に!」



キッチン、好きな人、あり余った食材。


――舞台と役者は揃い踏みだ。


先ほどふとよぎった願望が、今、目の前で叶わんとしている。


パエリアたちが冷めてしまう。


それはそれでいいと思ってしまうくらい、今の状況は幸せなものだった。


小さな顔が僕を見上げて問うた。


「何作る?」


言われて、僕は残った材料を見渡す。


多めに買った魚介はまだまだ使える。


また、この家の冷蔵庫は、冷凍室から野菜室、チルドも冷蔵室もほとんど埋まっている。


さすが沙也加だ。


調味料も申し分ないし、残る要素はセンスのみ。


僕の責任は重大である。


さて、何を作ろうか。




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