第37話 海鮮料理の代表格、パエリア
沙也加宅に到着した僕は、酔っぱらった沙也加をベッドに寝かせてバッグからカギを拝借し、単独での食料調達に向かった。
舞台は最寄りのスーパー。
移動時間が長めだったことも手伝い、時刻は晩御飯の時間を少し過ぎたころ。
スーパーは人もまばらで、かごも持たずに即席ご飯や総菜を手にした人が大半を占めていた。
僕は、必要そうな食材を片っ端からかごに放り込んで早々に会計を済ませた。
出来れば沙也加が起きる前に戻りたいところ。
赤信号や横並びで道をふさぐ人々に少しだけイライラしながらも、無事に沙也加が目を覚ます前に家に戻ることができた。
手洗いうがいを済ませたらば、キッチンに立つ。
さあ、始めよう。
本日のメニューは、色々作るがメインはパエリアだ。
少し難易度が高いけど、居酒屋のメニューを見た時からこれにしようと決めていた。
まず、買ってきたイカと白身魚を食べやすい大きさに切り分ける。
玉ねぎ、にんじん、セロリ、ニンニクをみじん切りにして、ホールトマト缶の中身を取り出して握りつぶしておく。
アサリの砂抜きも忘れてはいけない。
これで、下処理は大体済んだ。
次に、フライパンにオリーブ油を敷いて中火で加熱し、イカの両面が焦げてきたところで、下処理を済ませた野菜たちを入れてさらに炒める。
この時、つぶしたトマト缶はすぐに投入せず、玉ねぎが透明になってから入れる。
トマトの投入後は水分がなくなるまで煮詰め、エビ、アサリ、水、塩、サフランを加えてひと煮立ち。
煮立ったところで魚介を取り出したなら、ようやくお米の登場だ。
お米を加えたら、まずは強火で五分炊き、さらに弱火にして十二分炊く。
お好みで火加減を調節しておこげを作っても美味しい。
スープの表面までお米が膨らんだら炊きあがり。
魚介を戻し入れて、レモンとパセリを飾れば……
海鮮料理の代表格、パエリアの完成だ!!
完成したパエリアをフライパンごとテーブルに置くが、まだ沙也加は目を覚まさない。
丁度いいので、他にも何品か作ってみようじゃないか。
ちなみに、サフランなんて珍しい食品はスーパーに売っていなかったのだが、まさかの沙也加宅にあった。
調味料をまとめている棚にひっそりと。
やはりそれなりに料理は好きみたいだ。弁当も美味しかったし。
ではなぜ、十分料理ができる沙也加が僕の料理にこんなにも執着するのだろうか……
そんな疑問も、当の本人の安らかな寝顔を見ていれば些細な問題であると感じた。
とにかく笑っていてくれたらそれでいいし、話したくなったら話してくれるだろう。
そんな確信ともとれる期待を胸に抱き、僕は再びキッチンへと立つのだった。




