第36話 創作意欲
宿題が一段落ついたところで、スマートフォンに一件の通知が入りました。
送信元は沙也加さんです。
内容は想像通りで、お兄ちゃんによる告白の末に二人は付き合うことになったそうです。
蒼さんはすごく心配しているようだったけど、私はこの結果に確信を覚えていました。
生まれてからの15年、私生活を共にしている私から言わせれば、合コン以来のお兄ちゃんの様子の変化は顕著なものでした。
今まで料理ができることを口に出さなかったお兄ちゃんが、女の人を家に連れ込んで料理をふるまうなんて言い出した時は、さすがの私も動揺を隠せなかったくらいで……
昔のお兄ちゃんは、料理を逃げ道にしていたけど。
いつの間にか、料理を使って自分自身を再生しているように見えました。
沙也加さんから聞いた話によれば、二人は幼いころに婚約を結ぶくらいの中だったそうな。
それだけ聞いたら、小さい子供ならではのありがちな出来事にも思えますが、こうして合コンで再会し、教科書のようなハッピーエンドを迎えて……
それはまるで、小さな二人の出会いに失恋という名のスパイスを加えた、ロマンスの神様による運命の一皿のようにも思えました。
人々はこういうのを、運命の出会いと呼ぶのでしょう。
私もお兄ちゃんのような素敵な人と、二人のような運命の一皿を築きあげたいと、初めて思ったのでした。
―充視点―
そうだった……
この人、超絶に酒癖が悪いんだった。
「だーからぁ、まだまだ夜はこれからなんだから、あたしん家いこーよー」
デジャヴだ。
違う点と言えば、前回は僕がお持ち帰りをしたが、今回は自分の家をご所望のようだ。
家、か……
なんとなくこうなる気はしていたけど、面と向かって言われてしまうとやはり怯んでしまう……
いやいやいや、もう僕たちは付き合ってるんだ、同じ屋根の下だってもう怖がることはないっ!
男を見せるんだ、充!
「じ、じゃあ、そろそろ引き上げて沙也加の家……行く、か。」
「おぉー!今日は気合入ってんねー……割り勘でいーい?」
「今日は珍しく料理をあまり頼んでないから、僕が払っちゃうよ」
「おとこまえだなー、じゃお言葉に甘えて……」
よし、自然な流れで奢れそうだ。
実はトイレに行くふりをして払おうと思っていたのだが、沙也加の食欲は尽きることの方が珍しく、会計中に注文されてしまうことを危惧して取りやめたのだ。
無事に会計を済ませた僕たちは、タクシーを手配して乗り込んだ。
沙也加宅についたならば、沙也加が寝ている間に近くのスーパーへ行くことも忘れないようにしないと。
何を隠そう、僕は今、沙也加に深夜飯をふるまいたくて仕方がないのだ。
居酒屋のメニューに刺激を受けた創作意欲を、早急に愛情表現へと変換しなければっ!!
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