第34話 名探偵、充
付き合えた。
今、目の前の座る金髪美女は、正真正銘僕の彼女だ。
告白が無事に終了し、『じゃ、食べよっか』という沙也加の言葉をきっかけに、今は二人でメニューとにらめっこタイムだ。
ふと、ドリンクメニューの麦茶が目に入る。
漢字から連想して、僕の親友の顔が脳裏をよぎる。
そのとき、ふと思い出した。
「沙也加、」
「なーにー?」
「もしかしてさ、今日のセッティングって、茶武郎と田中さんがかかわっていたりする?」
「な、なぜそれを!?」
「やっぱりそうだったか」
僕は、柄にもなく得意げにそれに答えた。
「実は沙也加がここに誘ってくれたとき、茶武郎に相談したんだ。僕が沙也加に抱いてる感情の分別が付かないって泣きついて。茶武郎はちゃんと背中を押してくれたんだけど、ちょっと気になることを口走ってたんだよね」
「気になること……?」
「そう、気になること。」
沙也加のゴクリと唾をのむ音が聞こえる。
僕は、満を持して推理を述べた。
「あの日、茶武郎は『若月さんから”場所は再会した合コン会場”って言われて、即答したのはなんでか』と僕に聞いたんだ。沙也加とはメッセージアプリを使っていたから、僕が即答したのかどうかまでは、茶武郎にわかるはずがないのに。」
「あちゃ~、やっちゃいましたな茶武郎くん……」
ビンゴだ。
「充の言う通り、メッセージのやり取りは蒼経由で茶武郎くんまで筒抜けだったの。すごいね、名探偵だ。」
「まあね。あともう一個気になったんだけど、今日のコレがセッティングされてたってことは、その……沙也加も告白をしようと……?」
「あ!!充、イカリングフライだって!おいしそー」
図星か?無理に話題を転換しようとする沙也加。
「こら、ごまかさないで」
「まあまあ、後でちゃんと教えたげるから」
「すぐに言わないってことはやっぱりそうだったのかな?」
「うるさいってば!!ほら、これなんかも美味しそうだよ、充!」
「だからごまかすなって……うわ、本当に美味しそうじゃん。」
こんな雰囲気で、僕たちは再びメニュー表とにらみ合いながら、あれこれと言葉を交わし続けた。
「お待たせしましたー!イカリングフライ大盛でございます!!」
威勢のいい店員さんの声が店内に響き渡ると同時、僕らの囲むテーブルには、イカリングフライが置かれた。
「おいしそー!」
「絶好のおつまみだね。すみません、生ビール二つ、追加でお願いします」
「よろこんでー!」
注文用紙にメモを殴り書きした店員が、ばっさばっさと客をさばきながら厨房へ戻っていく。
この活気だけで十分お酒が進みそうだな……
厨房から正面へ目線を戻すと、沙也加と目が合った。
「生ビール、ありがとね」
「あ、あぁ……勝手に頼んじゃってごめん、大丈夫だった?」
「平気!私ビールしか飲まないし。」
「そう言うと思った」
なんだろうこれ……すごく、大人の恋愛って感じだ。
学生時代からあこがれていたやりとりに心を躍らせていると、目の前にイカリングが現れた。
それは宙に浮いて……いるのではなく、沙也加が箸でつまんで差し出している代物だ。
僕は一瞬躊躇しつつも、すぐに恋人という関係性を思い出してすぐにそれをパクリと食べた。
サックサクの衣の内側に、思いのほか柔らかい食感のイカがこんにちは。
柔らかくとも、イカのアイデンティティは失われておらず、添えられていたマヨネーズとも相性抜群だ。生ビールは頼んで正解だったかもしれない……
「どう?」
「めっちゃうまい……沙也加もどうぞ」
言って、僕も一つを箸でつまんで差し出す。
「えっ……」
面食らったような顔をする沙也加。
だけど、すぐに目をつむって、僕の箸でつまんであるイカリングフライを頬張った。
「うん、美味しい!ビール頼んだのは正解だったね」
「僕も同じこと考えてた」
「ほんと!?なんか嬉しい!」
頬を両手で抑えて、少女漫画さながらなリアクションをとる沙也加を傍らに眺めて、僕はふと思い立った。
「沙也加、スマホ出して」
「へ?スマホ?」
「うん。まだやること、残ってた。」
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