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08 翼の無い天使


エルロード屋敷。


書斎で一人、椅子に体育座りで足を抱き抱える少女の姿がーー。


机の上には差し出されたにも関わらず、手をつけずに冷え切ったスープとサンドイッチがあった。


「クロノさん……一体どこにーー」


虚な目で、窓の外を眺めるシェリカ。


今にも雨が降りそうなーー曇り空はまるで、彼女の心を映しているようだった……。


その様子を見て落ち着かせようと、アーモンドが背中に手を置く。


「シェリカ様ーーお気持ちはわかりますが……お坊ちゃまが無事である事を祈るより他はありません。それよりも今は、私達にやるべき事をなさねばなりませんぞ。……あなたのやるべき事はーー何ですか?」


「…………アーモンドさんーー」


いつもなら誰よりも狼狽するはずのアーモンドが、落ち着いたーーとまでは言わずとも、冷静な様子を保っていた。


「シェリカお姉ちゃんーーご主人様、帰ってくるーー?」


不安そうな表情で見上げるプルシュスカ。それを受けて、シェリカの瞳に若干の光が戻る。


「いけませんねーーこういう時こそ、私がしっかりしなくてはいけませんのに……。アーモンドさん、《オスカール領》の開拓は順調に進んでいますか?」


椅子から降りて立ち上がるシェリカ。


その様子を見て、アーモンドが手元の報告書を読み上げる。


「それが……ここ連日発生している豪雨の影響で作業が滞っているとの報告があります。街道整備、治水工事、伐採に木工への影響が大きいですな。洞窟の採掘担当はそこそこ順調で、昨日は銀鉱石と石炭が出てきたそうです。さすが、火山近辺の洞窟……と言ったところでしょうか?」


そう言って、アーモンドは報告書を手渡す。


シェリカは纏められた報告書を流し見ながら、頭の中で対応策を整理した。


「それでは、一時的に街道整備、伐採と木工は中止にして、その分の人員を採掘と穴掘りの二班に分けてください。治水担当の方達は折を見計らって田畑を耕して田水張りを行ってください。くれぐれも怪我や事故が起こらないように、安全第一でお願いしますーー」


いつものように、的確に指示を出シェリカ。


それを纏めてアーモンドが、現場への報告に向かう。


「承知しましたーー。」


その去り際に、シェリカが一言。


「アーモンドさん……エリスフィールさんはまだーー?」


ここ最近、一度も屋敷へと帰ってきていないエリスフィール。


エドワードは一応屋敷に戻る事もあるが……それでもすぐにダンジョン周辺の捜索に当たっていた。


「…………ええ、例のダンジョンに隠し通路などが無いか、ずっと探索をしております。何度も休むようにも進言したのですがーー」


「……エリスフィールさんが一番、やるせない気持ちかも知れませんね。あんな目の前で、大事な人がいなくなってしまうなんてーーきっと、精神的な負担は計り知れないものでしょう。言っても効かないとは思いますが、一応合間を取って休む事を忘れないよう……伝えておいてください」


どこか、胸を締め付ける思いのシェリカ。


本来なら自分だってダンジョンに向かってクロノを探したい。しかし、彼女の身体能力で安易にダンジョンに潜る事は大きな危険を伴う。どうしても行くならば、最低限の準備を整えた上で向かう必要があるだろうーー。


しかし、まず何よりも《エンドラ領》、《オスカール領》の統治を最優先で行わないといけなかったーー。


「クロノさんーー」


……………………。


「いいですかマスター、神気は主に精神と呼ばれるーー胸の中心辺りに宿る力が源となります。これを上手く扱うには、全身へ神気を流さないといけませんーー」


言っている事はエリスフィールが教えてくれた〝マナの流れ〟に近いものがあるのだろうが……一体どうすれば神気を扱えるのかがさっぱりわからない。


つまり、その精神に流れる力を把握する事が先決らしい。


「胸の中心の力に集中ーー胸の中心の力に集中ーー胸の中心の力に……うぅっ!」


神気は扱いがとても難しい……恐らく、魔法を使うよりも数段難易度が高いのだろう……。


それを無意識にステータスシールドなどに力を振り分けられていたのは、エルが作用して顕現させてくれていたからだろうーー。


どうやら俺にはまだまだ……神気扱うには鍛錬が足りないらしいーー。


……………………。


エルと行動を共にして一ヶ月が経過したーー。


まさかこんなに時間が経つのが早いだなんて、正直自分でも驚いている。


しかし、神気に関しての腕前は確実に上達していたーー。


「マスター、そこです!」


「よしっ!はぁっーー」


「グギャッ!」と言う声を皮切りに、俺の正拳突きによる失神の声と共に倒れる青い両手鬼(ブルーラリアット)


神気を扱った攻撃はある無しでは段違いに身体能力に影響を及ぼした。


いまの青い両手鬼は討伐ランクCの魔物だが……魔法も神気も扱えず、短剣を使わずに倒すとなるとよほど身体能力を極めていないと無理な話だろう。


それくらいに、神気を扱った戦いは不足していた俺の能力値を補填したーー。


「なぁ、エルーーひとつ聞いてもいいか?」


魔物を倒してストレッチしている俺の元に、てくてくとエルが歩いてくる。


「何ですか?マスター」


「エルは神の事を知っているんだろうーー?〝キツネガミ〟って一体どんな存在なんだーー?」


「…………キツネガミーーですか」


エルは目を閉じ、過去を振り返る。


キツネガミに関する記憶を鮮明に思い出すようにーー。


「キツネガミは……〝正真正銘の化け物〟です。マスター、神にも階級がある事は話しましたよね?」


「ん?……ああ、確か天使には十の、神には九の階級があるんだっけか?それがとうしたんだーー?」


エルはふわふわーー、と宙を舞い、近くの手ごろな岩にその小さな腰をかける。


「キツネガミは……彼は、〝最上位〟の神です。上位九神だけが得る《第九天》の名を冠し、その《破壊と消滅の権限》で数多の神を殺した存在でもありますーー」


「神をーー殺した!?」


確かに……初めて会った時にはその強さがわからなかったがーー〝キツネガミ〟は一瞬にして指弾き一つで人を消滅させていた。


その恐ろしさを改めて思い返せば、どれだけとんでもない存在なのかが容易に想像がつくーー。


もし今後会う時があったら、キツネガミには聞くことが山程ありそうだーー死なないようにあまり刺激しない範囲で。


「ちなみに俺は今どのくらいなんだーー?」


神としての実感は無いが……少し、気になるところではある。


その様子に、エルは肩をすくめて答えた。


「マスターは一番下の《最下位》、その眷属である私も一番下の《天使》ですよ。それでも、マスターの持つ《時間と空間の権限》の力はとてもすごいものなので、安心してください!!」


何を安心しろと言うのだろうか……。まぁ、正直階級に拘る気はなかったから別にいいけれどーーもし仮に他の神と争う事になったら大変な事になりそうだ……。


それでも、ただの《天使》と呼ぶには、強力な仲間であるエルがいるのだから多少は大丈夫だと思うが……。


ふとーーそこに異質な存在を覚える。


近くに行ってよく見てみると、そこには以前見かけたような〝銀色の宝箱〟があったーー。


中を開けてみるとそこにはーー。


「これは……何の指輪なんだ?」


赤い宝石が施された、銀色の指輪が入っていた。


「マスター、こーーこれ!すごい指輪ですよ!?」


眷属神気の《鑑定》で効果を確認するエル。何やら驚いた表情をしているが……この指輪が一体なんだと言うのだろうか?


「これ、付けるだけで神気の最大値を増幅させてくれる補助リングです!……こんなすごいもの、一体誰が作ったと言うのでしょうか……?」


目を見開かせて興奮しているエル。どうやら、この指輪は神気を増幅させてくれるもので、ただの指輪とは違うらしいーー。


魔力増幅のリングは聞いた事があるがーー神気となるとやはりそんなに違うものなのか……エルはずっとまじまじとその指輪を見つめていた。


「エルが持っておく?……神気ならエルの方が、扱いは得意だろうーー?」


しかし、首をふるふるーーと横に振るエル。


「いいえ、これはマスターが持っておいてください。……きっと、マスターが早く成長出来た方がーー後々好都合ですから♪」


ニコッ、と微笑みながら語りかけるエル。確かにその考え方も道理ではあるかもしれないーー。


「わかったよ。それじゃあーーこれは俺が使わせてもらうよ」


右手の中指に指輪を装着する。


体感的にも確かに、身体の内側から力が湧いてくるような感じがしたーー。


「よしっ!先に進もうかーーエル!!」


「はいっ!マスター!!ーー」


……………………。


地下洞窟のとある場所にてーー。


???「くひひ、ようやく来たなぁ〜。」


悪魔の尻尾をプランプランと振り回して、ギザギザの歯で喜びを露わにする存在がーーそこにはあった。


???「眷属にケツ持ちさせるなんて随分落ちぶれたもんだなぁ〜。……ま!両方ぶっ潰しゃあ良い話だけどな!!」


キヒヒヒヒヒヒッーーと、不気味な笑い声がこだまする。


〝その悪魔〟は、紫色の瞳を暗闇の中で静かに煌めかせていたーー。


……………………。


ここ最近はあまり階段を見かけなかった為ーー五日ぶりくらいにその姿を見かけた。


相変わらず中は真っ暗で、エルが《光臨》で辺りを照らしてくれなかったら全く見えなかったであろう事は想像に難くない……。


「エル、どうする?このまま降りるか?」


エルはコクリーー、と頷く。


「はい。……行きましょうマスター。ーー」


注意深く周囲を警戒しながら階段を降りていく。


先生はダンジョンでは基本的に下から上にモンスターが登ってくる事は無いーーと言っていたが、もはやこの〝神域〟にダンジョンの常識が当てはまる保証なんてどこにも無いだろう……。


やがて辿り着くとーー、相変わらずだだっ広い暗い洞窟が広がっていた。


今見て思ったのだが……この階段は上から下まで螺旋状に続いているのだが、何故こんなにも場所を分けて階段を配置したのだろうか……?


まぁ、エルも人間を閉じ込める場所とか言っていたし、天使を投獄していた事を考えても脱獄を防ぐ意図があったのだろうが……それにしても利用者の観点から見ても不便だと思うーーあまりにも!


そうやって歩く事三十分ーー急にエルが足を止めた。


「マスター、止まってください。何か……嫌な気配がしますーー」


「嫌な……気配?」


エルは耳を澄ませるように、目を閉じて辺りの音を拾う。


しかし、エルが反応するよりも一瞬早くーー、〝それ〟は姿を現した。


「っ!!マスター、危ない!!」


「っ!!」


不意を突いた一瞬の攻撃。反応すら出来ない速さで紫色の〝神気〟を使った刃が襲いかかる。


あと少し……あとちょっと位置がずれていれば死んでいただろうーー。


すっかり俺自身……失念していた。


「は、ははっ。そういえばこれーー〝シールド〟なんだったなーー」


敵の攻撃は間一髪のところでたまたまそこにあった〝ステータスシールド〟に直撃する。


これは緩い力で触れれば貫通するが、思いっきり力を込めたり強い衝撃は通さない仕様になっておりーー以前思いっきりぶん殴ってみてとても痛かったのを覚えているーー。


「マスター、大丈夫ですか!?」


心配した表情で、エルが問いかける。


「ああーー問題無いよ……〝ステータスシールド〟様々だな」


「よかったですーー万が一に備えて、()()()()に配置しておいて正解でしたーー」


ここに置いたのはエルの判断だったのかーー確か眷属は主のステータスシールドに細工が出来るみたいな表示もあったがーーさすがだ。


「姿を現してください!……そこに隠れているのはバレていますよ!!」


エルの声に反応して、ゆらりと何も無い場所から姿を現す。


まるで〝悪魔〟のようなその少年はーーずいぶんとご機嫌な表情でこちらに向かって指を指してきた。


「くひひひひひひひっ!ちぇ〜っ!もうバレちまったのか〜。……もう少し隠れんぼしたかったんだけどな〜」


紫色の髪に、赤みがかった紫色の瞳。耳は魔族のように尖っており、背中には小さな紫色の両翼がある。さらに、ゴシック調のタイツのような格好の少年の頭には、二本の角が生えていたーー。


「……何者ですか、あなたーー」


エルが警戒しながら、いつもは見せないキリッとした立ち振る舞いでその少年と相対する。


平然とした様子の少年は軽い口調で、何とも普通に自己紹介を始めた。


「俺様か?俺様の名前は〝メフィストセレス〟だ。《堕落の神》の眷属ーー《能天使》の階級の天使さ!!」


「いやどう見てもその姿は悪魔だろう!!」


思わず、ツッコミ口調で心の声が漏れる。


しかし、その見た目で天使は流石に無いと思うが……これでも天使なのだろうか?


背中の翼がまた悪魔っぽい。


「ふっーー俺様を見て天使とわからないとは……落ちたものだ。いいだろうーー貴様を殺すついでに、しかと我が力をその瞳に焼きつかせて殺してやろうっ!!」


メフィストセレスが、その両手に紫色の炎を宿す。


神気を使ったーー強力な魔法による攻撃だ。


「マスター……下がっててください。恐らく、今のマスターではあの天使には勝てないかもしれませんーー」


「エル…………」


お前にもあれが天使に見えるのか。


眷属の感覚というものは、俺にはまだまだ理解し難いらしいーー。


「ご心配無くーーかつての私はあの天使よりも()()()()でしたからーーあんな程度の眷属に遅れは取りません……」


「エルーー」


言いながら、拳を振るわせている。


恐らくだが、レベルが俺に合わせて降下したのか……身体能力が下がっているのだろう。


神気一つでやり合わなければならないーー普通に考えれば不利な条件だが、それでもーー以前エルが言っていた事を思い出した……。


『神と神の戦いはーー神気が強い者が勝つのですよーー』


それならば、エルに勝ち目はあるかもしれない。


メフィストセレスがどういう能力を有しているかはわからないが……エルの持つ力はそれ以上なのだろう。


その自信が無ければ、こんなにも不敵に笑っていられるはずは無いのだからーー。


「見ててください、マスター。これがーー神気を使った戦いです!!」


……………………。


「エル、くれぐれも油断はするなよーー?」


「もちろんです!マスター」


エルがその強い翠色の瞳でメフィストセレスを睨みつける。


そして先に……メフィストセレスが仕掛けた。


「〝《幻光の闇撃》〟!!」


紫色の、神気で作り出された攻撃がエルを襲うーーが。


「〝《無限時間(エターナル・タイム)》〟!!」


パキッーーと、メフィストセレスの攻撃の時間が止まる。


その隙を伺って、メフィストセレスは姿を消した。


「……なるほど、《隠密》のような効力を持つ《影隠し》ですかーー」


瞬間、エルの元へ強烈な蹴り上げが一撃ーーそれをエルは神気《浮遊》を駆使してくるりと空中回転して交わす。


宙に浮いたエルを追撃しようと、メフィストセレスは自身の姿を絡ましたまま翼をはためかせて連撃を繰り出す。


その全てを〝神気の流れ〟を読むだけで交わしきるエルは、まるで翼が生えているように見えるほど鮮やかに全ての攻撃を捌き切っていた。


「す、すごいーー」


やがて《影隠し》を解き姿を見せるメフィストセレス。


「これでも食らえ!!〝《紫炎》〟!!」


メフィストセレスがその手から炎色反応のような紫色の炎を噴射する。


突然の出来事で反応しきれないーー避けきれないはずのエルは、瞬時にそれを悟って神気を発動する。


「〝《氷結の時間(タイム・フリーズ)》〟」


「な、何ぃ!?」


《氷結の時間》ーー。《永遠時間》よりも持続力は短いが、発動が早い《時間の権限》による力だ。


ことごとく空振りのメフィストセレスは、歯噛みしながらエルを見つめている。


対してエルは、目を釣り上げながら睨みつけるようにメフィストセレスと相対していたーー。


「まさかーーそれが本気では無いですよね?」


エルの挑発に、口の端を釣り上げるメフィストセレス。


エルに向かってイタズラっ子のように笑いかけると、両手を広げて神気を解放した。


「くひひっ、いいだろうーー見せてやる!!〝《暗黒界》〟!!」


メフィストセレスを中心として、半径五十メートル程の黒い結界が生成される。


それを見て、エルは少し苦い顔をした……。


「……なるほど、〝神域〟を作れるとはーー能天使を名乗るだけはありますねーー」


「なぁエル……そもそも〝神域〟って何なんだ?」


それどころで無い事はわかっているが、それをわかりながらも、間合いを取っているエルは簡潔に説明をしてくれる。


「神域とはーー神が作った絶対領域のようなものです。〝神気を使った結界〟ーーと言えばわかりやすいでしょうか?もちろん、代行している眷属にもその効果は適応されますーー」


「……神気を使ったーー結界。なるほどなーーだから〝神域〟かーー」


目の前のメフィストセレスは口元に手を当ててキヒヒと喜び笑みを浮かべている。


「さぁーーこれからどうやって戦うのか見せてくれ!!〝《魔天道波》〟!!」


四方八方から、メフィストセレスの繰り出した闇の力が押し寄せる。それを、《暗黒界》による力の作用が効力を増幅させた。


エルは神気でバリアを作り、ただただその攻撃を防いでいる。


「どうだどうだどうだ〜?ここでは俺様に分があるぞ〜?」


しかしどういうわけか、一向にエルのバリアに亀裂が入る様子がない……。


それを面白く無さそうな顔をしたメフィストセレスが、舌打ちしながら破壊しようと試みる。


「……じゃあこれならどうだーー〝《地黒輪》〟」


エルに向かって、黒い禍々しい闇のリング状の攻撃が押し寄せる。


しかしエルはーー


「〝《霧散する(パニッシュ・)全知の力(エフェクト)》〟」


パチンッーーと指を弾いた途端に《地黒輪》がふわっーーと消滅する。


かと思いきや、メフィストセレスの後方で壮大な破裂音と共に消滅した。


「エル……今のってーー」


エルは誇らしそうに、ニコッと微笑み答える。


「《空間の権限》ですよマスター。攻撃そのものを別の場所に飛ばしちゃいました♪」


無茶苦茶だーー。メフィストセレスの攻撃の規模も、エルの使う神気の効力もーー


これがーー神気を持つ者同士の戦い。


自然ーーゴクリッ、と生唾を飲み込む。


先程の一撃はかなり応えたのか……メフィストセレスがわなわなと震え上がる。


「お前……お前お前お前ぇ〜!!〝翼の無い天使〟の分際で俺様の攻撃を幾度も無効化しやがってーー〝権限の代行〟するしか能の無いくせにーー」


メフィストセレスの怒り狂った挑発を、嘲笑の一言でエルは笑い流す。


「それでも……マスターの権限代行ができる天使が果たしてーー私以外にいるのでしょうか?」


ニタリーーとほくそ笑むエル。


その様子を見たメフィストセレスは、さらに神気を解放した。


「こうなったら仕方ねぇ!!特別に見せてやるよーー俺様の奥義!!〝《堕天》〟!!」


みるみるうちに、メフィストセレスの姿が変わっていく。


背格好こそ大して変わりはしないが、翼はより大きく禍々しく、瞳の白い部分も黒く変色していた。


爪は獣人のように発達しており、全身からどす黒い神気が漏れ出ている。


先程よりも一層悪魔らしいその姿はーーまさしく堕天と呼ぶに相応しかったーー。


「なるほど……それがあなたの本当の姿ですかーー」


エルは左手を前にして、右手を左端に置く形でクロスさせる。


どうやら、それがエルにとって戦いやすい構えの形のようだーー。


「それでは、第二ラウンドと行きましょうかーー《堕落の代行者》ーーメフィストセレス」


「いいだろう!!〝俺様の本気〟を出させた事をーー後悔させてやる!!」


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