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07 天使たちの墓


ポタッポタッーーと、天井から滴り落ちる水の音が広大な洞窟の中を反響する。


ここは〝神域〟と呼ばれる空間内の為スキル及び魔法の使用が封印されている。

 

そのためーー、今は目の前を先行するエルと名乗る少女に付いて行くより他は無かった……。


道中、他愛の無い話をしながら同行して歩く事三時間ーー。


そこに、魔物が現れる。


「ガルルルルルルッーー」


明らかに強力そうな魔物だが、おそらく討伐ランクで言えばC……よくてBランクといった所だろうか。


それでも、スキルの使えない今の俺には強力すぎる魔物だったーー。


「エル……どうする?俺は今まともには戦え無いけどーー逃げるか?」


提案する言葉に首を振って不敵な笑みで答えるエル。


「マスター……眷属の仕事は、主たる神の力の行使を代行する事にあります。……もちろん、雑務なども仕事のうちですがーー今の私であれば〝神獣・ウルフェイン〟など敵ではありませんよ?」


「神獣!?神獣って言ったのか……?あれがーー」


神獣ウルフェインーー神獣ケルベロスの下位に当たるこの魔物は絵本にしか出てこない〝空想上〟の魔物だ。


火を吐くその口には毒性のある唾液を有しており、発達した犬歯は岩をも噛み砕く程の力を持っているというーー。


とてもじゃないが……Aランク相当で済むかもわからないレベルの魔物だーーいや、神獣と言った方がよいのだろうか……。


そんな魔物を相手に、翠眼の瞳を煌めかせて不敵に笑うエル。一体どれ程の力を有しているのだろうかーー?


「マスター……〝神気〟を宿した相手には、〝神気〟による攻撃が効きづらい事はご存知ですか?」


「何だそれ……どういう意味だ?」


エルはウルフェインの眼をじっと見つめたまま、一定の距離を維持する。


「神と神が対峙した場合ーーより神気の強い神が勝つ可能性が高いです……。それは理屈や戦略以前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのですよーーまぁ、それでも軽減はされるでしょうが……神気による戦いは基本的に力技と捉えて頂ければわかりやすいかとーー」


「神気の強い方が……勝つーー」


なんとも理不尽で、哀れな事実だ。


強者はより強く、弱者は強者に抗う事ができないという事だーー。


「そして神気はーーレベルに左右されないのですよ……マスター。今の私には、レベル以上に培った力がありますーー」


エルが神気を解放する。


これが本来の彼女の力なのかーー神々しさを纏った、とてつもない神気がその場を埋め尽くした。


「う、ぅぅぅぅぅーーキャンキャンッーー」


エルの神気を目の当たりにして、一目散に逃げ出すウルフェイン。


先程戦った精鋭骸骨剣士どころかーーかつて戦ったジャイアントスネークよりも強いであろう〝神獣・ウルフェイン〟。


それを追い払うとは一体ーーこの子の持つ力はどれ程のものなのだろうか?


見た目で相手を判断するなとは良く言うが……エル程それを体現する者はそう多く無いだろうーー。


「さぁ、無駄な戦いは避けて……早く下に降りましょうマスター。そこに下へと続く階段がありますよから、警戒しながら進みましょう。……最も、マスターがどうしても経験値欲しさにさっきのウルフェインを討伐したいなら強力を惜しみませんがーー」


先程のウルフェインは戦う相手の実力差を見誤ったものの、エルの力を目の当たりにした途端に勝てないと踏んで逃走を選んだーー。


狩りは野生の生き物が、生きる為に必要な手段だ。退くことを選んだ相手をわざわざ追う事も無いだろうーー。


「いやーーいいよ。エルの言う通りだ。先に進もうーー」


そう言った顔を喜ばしそうに微笑むエルは。


「了解です!マスター♪」


実に天使らしいーー満面の笑みで答えた。


……………………。


夜ーー。


エルは《時間の権限》を有している為、時間の流れには非常に敏感だったーー。


現在の外の時刻は十九時三十二分二十一秒だそうだーー。


もうそんな時間だったのかとーーまだニ、三時間程しか歩いていない気分の俺だったが……こんなに細かい部分までわかるとはさすが《時間と空間の神》の代行者だーー。


「マスター。今日はここまでにして、一度休みましょうーー」


エルがそう問いかけ、足を止める。


ここからではわからないが……おそらく外は夜なのだろう。


「ん?まだそんなに疲れてないし……ここじゃ昼も夜も変わらなさそうだから別にいいんじゃ無いのか?」


そう言った俺の言葉に……首を横に振って否定するエル。


「ダメですマスター。こういう時だからこそ、時間の流れというものは慎重になるべきなのですよーー」


「どういう……事だ?」


「時間の流れというのは人によって違うのですよーー。聞いた事はありませんか?十代よりも二十代になる方が時間の流れが早くなるそうです」


一体何の話をしているのかーー?しかし話の傾向から言って、無関係な事では無いのだなと理解する。


「人と言う生き物は脳の発達につれて意思決定をする回数が増えるたびに、あるいは感情揺れ動く幼少期から大人になり安定していく事でーー時間の流れの感じ方に変化が生じると言われていますーー。〝心的時計〟と言うものは人によって感じる長さが違うのです……。例えば、一つの事に没頭して集中する人と、退屈な日々を送って過ごす人……どちらが時間の流れが早く感じると思いますか?」


そんなものーー間違いなく前者だろう。


「それと同じ原理です。神の感じる時間の流れと人間の感じる時間の流れは全く違います……神の方が、早く時間が過ぎ去っていくのですよーー。覚えありませんか?」


「時間の流れが違う……俺がーー?」


確かに……物心ついた幼少期から今までを振り返って覚えていない日など殆ど無いかもしれない……いや、時間の流れが早かったから、鮮明に感じるからなのかーー?


だとすれば、おそらく〝特殊体質〟のシェリカも似たような効力で加速度的に学習をしているのだろうかーー?まぁ、あの子は前提とする知能の高さがあるけれど……それでも原理としては似ていてもおかしく無い。


いや、待てよーーだとするとここで俺が感じる一日はどれくらいなんだ?


「エル……もし俺がここで時間もわからず一日過ごしていたら、外では何日経過しているんだ?」


エルはバツが悪そうに、目を伏せて答える。


「おそらく……四、五日に相当するかと思いますーー」


「そんなに!!……もしここで一ヶ月過ごしてたら外では半年近く過ぎ去る事になるのかーー」


確かに、時間の流れの感じ方は重要かもしれない……。


まさか、心的時計による体感時間がここまで大きく影響してくるなんてーー。


「そもそも神が時間が早く過ぎ去ると感じるのは、人間との寿命の差にあると言われています。神は基本的に寿命死する事はありませんから……人間達が数百年文明を発達させるのをあっという間に感じてしまう程なのですよーー。ここまで言えばわかる通り、時間の流れの感じ方はとても重要なのですよ、マスター?」


エルの進言に、一言一句反論できずに頷くしか無い。


どうやら今日の探索は、ここまでのようだ。


「わかったよーーエル。今日はここで休みにしようーー」


「はいっ!了解です、マスター!!」


満面の笑みでニコリと笑うエル。


急いだ所で、不測の事態に対応できなければ何の意味も無い……ここはおとなしく、エルの言葉に従っておこう。


……………………。


食べるものなど何も無かったはずなのに……何故だろうか。


「さぁ、たくさん食べてくださいね!マスター!!」


「……これ、いつ一体どこで手に入れてきたんだ?」


先程ふわふわと飛んで出掛けて行ったエルは……一時間も経たずに帰ってきた。


ちゃんと〝エルが定めた〟一時間だ。体感的にはもっと早かったように感じる……。


「先程〝死の棘の魚(デンジャーフィッシュ)〟を見かけたので捕まえてきました♪」


「捕まえてきたって……迷子の保護猫じゃ無いんだからーー」


大きさ一メートルはあるであろう、巨大な魚を捕まえてきたエルは、事もなげに猛毒の棘を一本一本丁寧に引き抜いて調理をしていた。


ちなみに魚でも経験値を得られるのか……ダンジョン探索で上昇した分と合わせて現在は14まで上がっていた。


おそらく、〝眷属〟が倒した経験値も主にーー〝主〟が倒した経験値も眷属に行き渡るのだろうーー。


「マスター、食べないのですか?」


ものすごく悲しそうにうるうるっ、とした瞳で上目遣いをしてくるエル。


「こ、これ……毒とかは本当に大丈夫何だろうな?」


俺の心配事など梅雨知らず。エルは満面の笑みで答える。


「大丈夫ですよ!エルに抜かりはありません!マスターが毒で死ぬ事が無いように、ちゃんと文字通りの〝毒味〟もしてありましたから!」


「何やってんの?そんな事してたら死んじゃうじゃない!!」


毒味だなんて……そんな恐ろしい事を裏でやっていたのかーーこの子は。


「問題ありません。天使は毒が効かないのでーー」


確かに状態異常耐性を持っているらしいけど……もう少し自分を大切にして欲しい感はある。


しかし……そうまでしてくれたならーー食べないわけにはいかないな。


「そうか……。わかったよーーそれじゃあ、ありがたく頂きますーー」


「どうぞ!召し上がれ!!」


多少ムキになった顔で魚肉の串を持つ。


死の棘の魚ことデンジャーフィッシュ。


その名を冠する魚肉はいかほどの味なのかーー。


結論……めちゃくちゃ美味かった。


「うんっっっま!!」


満足な味付けなど出来ていないのに、ただ焼いただけで噛み締める程溢れてくる肉汁。


ぷりぷりの魚肉の中身は熱が通ってアツアツホクホクの白身をしており、たんぱく質の旨みが口の中いっぱいに広がる。


……もしかして、さっきの毒味はこれを味わう為の振りなんじゃ無いかとすら思えてくるがーー


「ん?ふふっ♪大丈夫ですよマスター、どんどん食べてくださいね♪」


目の前の屈託ない笑顔で微笑みかけるエルを見ていると、とてもそうは思えなくなってくる。


というかーーさっきから一口も食べていないな……。


「エルは食べないのか?」


味わう事に夢中で気づかなかった、手ぶらのエルを見てふと問いかける。


そんなエルは、誇らしげにーー


「ん?私ですか?私は眷属だから遠慮しておきます。大丈夫ですよ!どうしても食べたくなったら自分で狩って食べますのでーー」


胸に手を当てながら、自慢げに語るエル。


しかし言いながら、ギュルルルルルッーーとお腹を鳴らす。よく見れば、口の端から涎が出ていた。


「はっ!ぜ、全っ然お腹は減って無いですよ!!マスター!?」


お腹が減れば狩って食べる。


つまりはお腹が減りでもしないと食べられない……。


眷属だからと言って、それはさすがにやり過ぎでは無いかと思えてくるが……それはエルのこだわりなのだろう。


俺にはエルが……いつから何の為に、何故俺の眷属などしているのかなどーー知りもしないのに……。


エルの切り分けてくれた魚の切り身はまだまだたくさんある……先生のメニューに比べれば少量だから、食べ切れるのだろうがーーどのみち一人で食べきるつもりも無い。


「ほら、食べな」


「えっ?」


差し出した串刺しの切り身を、驚いた表情でおずおずと受け取るエル。


表面がカリッとしている皮の部分から滴り落ちる油に空腹感が刺激されたのか、エルが目を輝かせていた。


「作ってもらった立場で言うのもなんか気が引けるけどさーーやっぱり、一緒に食べた方が美味しく感じる……と思うよ?」


ぽりぽり、と頭を掻きながら照れ隠しをする。


その様子はエルの瞳には鮮明に映っていたのか、焚き火に反射してーーそのエメラルドのような瞳がゆらめく。


「さすが……マスターですね。()()()()()()()も……〝翼の無い天使〟である私をそう言ってーー優しい言葉をかけて懸命に育ててくれました」


「ん?……エル?」


静かにボソリと呟いた為、何を話していたのか聞こえなかったがーー芯の困った笑顔を見せたエルは、思いっきり魚肉にかぶりつく。


そしてーー


「っ!?うん〜〜〜〜〜〜おいひぃい〜〜!!」


頬張った魚肉を口の中で堪能しながら、幸せそうな表情で味わうエル。


今日見た中ではーーダントツ一番のいい笑顔だった。


そんな様子に釣られて俺もーー


「くっ、ははっ!何だよその顔!!」


こんな暗い地底の中だと言うのに、それすら忘れて心からの笑顔が溢れでる。


「い、いいじゃないですかマスター!美味しいものは美味しいんです!!」


ぷくっ、と頬を膨らませて反論する様子に、笑い袋が更に刺激される。


きっと一人でここにいたら、こんなに笑顔で晩餐を食べる事も出来なかっただろうーー。


この地下洞窟において、エルという存在が改めて大きいものだと再認識するのだったーー。


……………………。


エルに付いていく事丸二日ーー。



エルの話によれば、〝神気〟というものは培った年数に応じてその使用上限が増幅するというーー。


まぁ、わかりやすい話がーー齢八歳の俺には殆ど権限を扱える程の神気を有していないというわけだーー。


「マスター、伏せて!!〝エターナル・タイム〟!!」


パキンッーーと、目の前で魔物が固まる。


どうやらこの〝神域〟には、神獣だけでなく通常の魔物も住み着いているらしい。


今エルが時間を止めた魔物は〝蜘蛛悪魔(エビル・スパイダー)〟と呼ばれるものだ。


討伐ランクこそ高くは無いが……致死性の毒は上級の冒険者すら血清を持ち歩きながら探索するほど危険なもので、いくら難敵では無いにしても……魔法もスキルも使えないこの空間では俺にとっては脅威足り得る存在だったーー。


……………………。


「エルーーちょっといいか?」


「何ですか?マスター」


少し進んだ先で、ちょっと〝気になるもの〟を見つけた為、エルを呼びつける。


「これ、何だと思うーー?」


そこにあるのは木製の宝箱。


中には、一枚の紙切れのようなものが入っていたーー。


「っーー!!……マスター……これ、〝神語〟ですよーー」


「神語……?」


神語とは、文字通り神が使う言葉の文字だそうだ。


おそらく俺に理解出来なかったのはーー《言語翻訳》スキルが封印されているからだろう……。


正直、何が書かれているのか全然わからない。


「なんて書いてあるんだーー?」


その問いかけに対してエルは、目をまん丸くさせて驚愕の表情で返す。


「……マスター。これ、《時間と空間の理論》に関する研究レポートです。……ここまで細かく理解がされた文面を見るのは私も初めてですよ……。一体、誰が何の為にここへ……?」


たった一枚の紙切れ。


しかし、エルによればーーこれを解明できれば神気を使わずとも時間や空間を操作する事ができるらしい……が、改めて聞くととても恐ろしい文言に見えるな。


「恐らく、これを読んだものか……これを解明した人が〝亜空間魔法〟を開発したのですねーー。まぁ、人間が使う事が出来る範囲には大きく制限がありますがーー」


ずっと興奮しっぱなしのエルは、紙切れを大事そうに懐に仕舞う。


どうやら、エルにとっては貴重品のようだ。


「これは私が預かっておきますねーー後で翻訳した状態で、マスターに渡しますから」


「あ、ああーーでもここじゃあ魔法は使えないんじゃーー」


恐らく用途としては、《時間と空間の権限》に対する理解を深める事で神気の消費量を軽減させたり、効率よく使ったり出来るようにする為なのだろうがーー本当にここで見つかったのは偶然なのだろうかーー?


俺だけ転移させられた事と言い、何か引っ掛かる点が多すぎる。


それに……


「なぁエルーー君はずっと俺の眷属だったって言ってたけど……どうして今になって姿を現したんだ?」


エルの言う事が本当なら、今まで俺が通った道をーーエルはずっと見ていた事になる。


何故今この〝神域〟で姿を現したのかーーそれはとても重要な事な気がした。


「マスター……確かに私はずっとマスターを見ていました。でもそれは、〝精神の内側〟からですーー。天使は人間界で過ごすには神気を大幅に消耗する為、姿を顕現させるのは大変なのですよーー」


「精神のーー内側……だとすると、ジャイアントスネークと戦った時や、使役者と戦った時に助けてくれたのもエルなのか?」


コクリ、と首を縦に振る。


確かに……あの時聞こえてきた声もエルに似通っていたし、まるで〝時間が止まった〟ように感じたのも事実だーー。


しかし、今は先を急ぐ必要がある。この話題はおいおいでいいだろう……。


「まぁ、その話はとりあえず置いておこうーー。先を急ごうか、エル?」


目の前に見えたーー地下へと続く階段を指差してエルの方を振り向く。


「そうですねーーその件については、また後ほどお話ししますーー」


エルはそう言って、てくてくと付いてくる。


一体この子は……俺の何を知っているのだろうかーー。


……………………。


エルと一緒に行動を始めて、一週間程が経過したーー。


相変わらずこの地下洞窟はだだっ広く、降りても降りても代わり映えのしない景色が続いていたーー。


ただし、十階ほど階段を降りるまではーー。


「っ!!……これはーー」


ところどころに、牢屋らしき金属の檻がある。


そして……いくつかの白骨の亡骸もその地には転がっていたーー。


「……恐らく、神に仇をなした天使の末路ですーー」


「っ!!神に逆らった天使がいるのかーー」


エルは寂しそうに、その近辺を歩き回る。


とても、悲しみに満ちた表情をしながらーー。


「マスター、天使が何故〝眷属〟と呼ばれるかーーわかりますか?」


エルはどこか遠くーー大昔の記憶を辿るように、遠いところを見ている。


「天使は……眷属はーー()()()()()()()()()()()()()()()()なのですよーー。例えそれが、どんなに理不尽で、どんなに嫌な命令でもーー眷属である天使は逆らえないのですーー。死ねと言われれば自害しなければならないーーそれが〝眷属〟なのですよーー」


「っ!!……何だよーーそれ」


天使だからって……眷属だからってーーそんな不当な扱い許されるのだろうか?


命令に逆らっただけで、こんな暗い場所に幽閉されなければならないほどーー神が偉いと言うのだろうか?


否ーー偉いのだろう。何故なら、神だから。


この世で最も崇拝される存在……。教団ができ、御神体として奉られる程の存在。


世界にーー圧倒的な影響力を与える存在。


まるで〝厄災〟のようにーー抗う事を許さない存在。


それが、エルの知る神の姿なのだろうーー。


「……マスター、それでも稀にーー私たち眷属の事を……とても大事に扱ってくれる神もいるのですよ……。〝天使〟とすら認めてもらえない者を、眷属にしてくれる神もいるのですよ……。正しきことの為、世界の全てを敵に回してもーーたった一人でも、〝反逆する神〟もいるんですよーー。だからこの子達の無念は、同じ眷属である私達が引き継がなければなりませんーー」


エルは転がっている全ての亡骸を集め、穴を掘りーー埋葬する。


エリスフィールのような《精霊魔法》による〝黄泉送りの儀〟のような気の利いた事はできないだろうがーーそれでも、きっと死者たちはエルの行いを微笑んでこう言うだろうーー。


〝ありがとう〟とーー。


「……マスター、牢獄があると言う事はーー少しずつ確実に最下層へと近づいていっている証拠です。ここからは、マスターも神気の使い方を学びながら進みましょうーー」


エルの瞳が、より一層強いものへと変わる。


エルのーー〝天使としての覚悟〟を前に、俺も腹を決めた。


「わかったよーー。エル……教えてくれ。〝神気〟の使ったーー戦い方を!!」


神気の事はまだわからないーーそれでも、エルのこの意思を……無駄にはしたくなかったーー。


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