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06 眷属


投稿時間が遅れましたことを深くお詫び申し上げます。


お知らせ:前日投稿した【シーズン2】エピソード05 ダンジョン探索③ですが、終盤の内容に書き加えの部分がありました為……再度内容を変更して投稿させて頂きます。それに伴い、内容にも一部修正を描き加えておきました。尚、念のために【シーズン2 】エピソード06の冒頭にも同内容を描き含めておきますので、ご了承お願い申し上げます。


「すぅーぴぃー……すぅ〜ぴぃ……」


朝日が差し込むベッドの上で、気持ちよさそうに眠るもふもふのしっぽを抱き抱えた少女が一人。


主の帰りを待ちながら、その主人の部屋で今日も夢心地に眠りこけていた。


「…………プルシュスカさん、またですかーー」


はぁ〜、とため息をつきながら顔に手を当てるシェリカ。


守護番頭のエリスフィールが不在の為、シェリカがプルシュスカを部屋からつまみ出す。


「起きてください〜。プルシュスカさん。朝ですよ〜!!」


プルシュスカを起こすシェリカ。むにゃむにゃ……としっぽをふりふり、と振りながらーーぴょこぴょこともふもふの耳を動かして起床する。


「あれ〜、シェリカお姉ちゃん……おはよぉ〜」


ふわぁーーと欠伸をするプルシュスカ。その様子にシェリカの可愛いもの好きな好奇心がくすぐられるが、クロノがいない今はシェリカがこの部屋を綺麗に整えておかないといけないのだ。


「全く……プルシュスカさんったらーー」


呆れた表情で、窓の外を見る。


ダンジョンの方角ーークロノ、エドワード、エリスフィールが向かった方角を見つめながらーー。


「クロノさん……今ーー何をしてるでしょうか?」


ダンジョンを探索する様子のクロノを想像するシェリカーー。


プルシュスカを起こし、ひとしきり掃除をした後で、部屋から立ち去るのだったーー。


……………………。


地下三階ーーボス部屋。


「はぁ……まさか崩落するなんてな……大丈夫か、領主……エリスフィール?」


エドワードが尻を掻きながら、ふらふらと立ち上がる。


その様子を見てーーエリスフィールはパッパッとメイド服を叩いて埃を振り払う。


「ええ、わたしは何ともーーそれより領主様、大丈夫でしょうか?」


「ああ、ありがとうエリスフィール。魔法で軽減させてくれたおかげで無傷で済んだよーー」


エリスフィールは咄嗟にクロノとエドワードを含む自身の周囲に《風魔法》を使った空気のクッションを生成した。


その甲斐あって、全員大したダメージが無かったのだが……


「十メートル程……でしょうか?まさかこんな真下に隠し部屋があったなんてーー、一体ここは何を隠していた部屋なのでしょうか?」


歩き回りながら、ただの何も無い隠し部屋を探索するエリスフィール。


エドワード、クロノも同様に……部屋の中を歩き回る。


ふとーークロノは気になった。


何故こんな何も無い部屋の中で……魔法陣のような円が光りを放っているのかーーと。


「ねぇ……二人とも、これは何の魔法陣なのかなーー?」


クロノの呼びかけに、その場に訪れるエリスフィールとエドワード。


だがーー


「魔法陣……ですか?すみません領主様、わたしにはそのようなものがお見受け出来ないのですがーー」


「ああ、俺もだ……。お前には何か見えるのか?」


不思議な事に、エリスフィールとエドワードにはこの魔法陣の光が見えていないと言うーー。


その様子に、クロノは疑問を抱いた。


「何で俺にだけ見えるんだろう……この魔法陣。」


そう言って、クロノが魔法陣の中心に乗ったーーその時だった。


「っ!!領主様!!」


ふわりーーと、クロノの姿が消えかかる。


「おい領主!!そこから離れろ!!」


「え?……何ーー」


二人の呼びかけに間に合わず、クロノは姿を消した。


あっという間の出来事で……理解が追いつかないエドワードとエリスフィール。


「り、領主……様!?」


青ざめた表情で誰もいない魔法陣の中心を唖然と見つめているエリスフィール。


そしてそれはーーエドワードも同様だった。


「一体何が起きてやがる……本当に、ここに魔法陣があったのか?……しかもこれってーー」


とぼ、とぼ、と。エリスフィールが機械のような動作でクロノの消えた魔法陣の中心へと歩み寄り、へたりと座り込む。


「転移型の……魔法、陣。そんなーー!!」


《転移魔法陣》。今は失われた古代魔法の一種で、対象となる者を転移させる魔法陣だ。


少なくとも千年以上前に作られたダンジョンに設置されているケースが多いが……エリスフィールの《精霊魔法》での探知ではそんな反応は無かったーー。


クロノがいなくなったーー。


まるで夢じゃ無いのか……あるいはそうであって欲しいという表情で、エリスフィールの藍眼の瞳から涙が溢れる。


「領主様……嫌……嫌です。だってーー」


転移魔法で飛ばされる場所は固定されている。が、何故クロノだけが飛ばされたのかが説明がつかない。


故にーー、今クロノがどこにいるかもわからない。


「《精霊魔法》にも反応が無い……一体どうして…………領主様ーー!!領主様!領主様!!どこに……一体どこに!!」


感情の制御が効かず、地べたをバンバン!!と叩きつけるエリスフィール。


その様子を、エドワードが掴み掛かって静止する。


「おい、落ち着けエリスフィール!!お前ーー」


「落ち着け……?落ち着けですって!?領主様がいなくなったのに、どうして落ち着いていられるのですか!?魔法陣の起動の仕方もわからない……どこに飛ばされたのかもわからない……そんな状況で、どうして落ち着いていられるのですか!!」


ボロボロボローーと、エリスフィールの瞳から涙が止まらず滴り落ちる。


いつもの冷静で淡々としたオーラは……そこには無かった。


「とりあえず……辺りを探すぞ。俺は外を探してくるから、エリスフィールはもう少しこの部屋を調べていてくれ。……もしかしたら、そのうち帰ってくるかもしれねぇだろ?」


帰ってくるかもしれないーー確かにそうだ。向こうの魔法陣がちゃんと機能するならば、帰ってくる時に辿り着くのはここのはずだから。


それをエリスフィールは、自身の胸の内に言い聞かせる。


「領主様が……帰ってくる。領主様が帰ってくる……。領主をがーー帰ってくる」


ハァ、ハァ、ハァーーと、高まる心拍を抑えながらエリスフィールは何度も何度も深呼吸をする。


多少の落ち着きを取り戻したエリスフィールは目尻の涙を拭う。


「そう、ですね……それではエドワード様。申し訳ありませんが、外の捜索をお願いできますか?……私はこの周辺に何か手がかりが無いか探してみますーー」


未だ目を赤く泣き腫らしたエリスフィール。


しかし、先ほどよりも瞳に光を宿したその表情を受けてエドワードはーー


「わかったーー。何かあったらすぐに知らせてくれーー」


そう言い捨てて、上の部屋へと飛んで戻って行く。


その様子を見届けたエリスフィールは静かに、目を閉じた。


「…………領主様ーー」


……………………。


「う、うわあああああああああ!!」


謎の暗い空間を、ただただ落ちて行く。


めぐるめく映る光景は、真っ暗闇の広い空間。


クロノは咄嗟に思考を巡らせるーーが、対処法が思いつかない。


(どうする、どうする、どうする、どうする!?このままじゃ落下して死んじまう!!……とりあえず、《水魔法》で落下の威力を軽減してーー)


ふと、ステータスシールドに表示される。


『ここは魔法無効化エリアです。《水魔法》の使用が封印されます』


「っ!!嘘だろ!?とりあえずこの先の状況を見るしかねぇ……《未来眼》!!」


『ここはスキル無効化エリアです。《未来眼》の使用が封印されます』


「す、スキルもかよ!!……このままじゃーー」


クロノの脳裏に浮かぶ光景ーー死だ。


どうしようもなく抗い難い……絶望的な未来が、一瞬にして脳裏に映った。


落下地点はーーすぐそこだ。


(ああ……そうか。これが死かーー。先生の言った通り、先走ったからこうなったんだーー)


ダンジョン探索前に、エドワードが発言した言葉を思い返して……今更後悔するクロノ。


自身の力を過信し……自惚れた。その結果がこのザマなのだとーー激しく後悔する。


「ごめんなさい……アーモンド、プルシュスカ、シェリカ、先生、エリスフィール、姉様ーー」


静かに……目を閉じる。


数秒先の未来に待ち受けるーー死を受け入れるように。


「悪いーーアメリア。放っていった事……いつか謝ろうと思ってたんだけど……難しそうだ。それと母様ーー本当にすみません。〝生きろ〟ってーー言われてたのにーー」



後悔の念を、唱えながら。


(ごめんな皆ーー《エンドラ領》も《オスカール領》も放っていってーー領主失格だよな。色々面倒をかけるけどーー後の事は頼むよ……)


クロノの瞳から、一雫の涙が宙を舞う。


それを皮切りに、意識を手放した。


???『時の権限を《代行者権限》により発動します。〝エターナル・タイム〟』


パキッーー!と、クロノの周辺の空間の時が止まる。


落下地点まで……あと五メートル程のところだった。


???「全く……マスターは相変わらず最後まで人の心配ばかりですねーー」


ふわりっ、と宙を舞う金髪の少女がーークロノを抱き止めて着陸する。


???「それでも……そんなあなただから。いつもみんな慕っているんですけどね。……本当にーー間に合って良かった」


ピンク色のローブを着た、翠色の瞳に穂麦のような金髪。


腕の中で眠るクロノを優しく微笑みかけるその少女はまるでーー〝天使のよう〟であったーー。


……………………。


「起きろ……まだ戦いは終わってねぇ!!」


誰かが呼んでいる。


起きろ……?戦い……?何の話かなーー


「っ!!……これってーー」


目を開けるとそこは戦場。


ただただ夥しい数の死体と血の川が荒野に流れている。


「何が起きてるんだーー?俺はーー死んだのか?」


未だ理解が追いつかないクロノ。


先ほど自身が死を覚悟した事を思い出し、今の状況と整合性を合わせようと理解に勤しむ。


「これはーー戦争……なのか?」


目の前に広がる血を血で洗う恐ろしい光景ーー。


その光景を目の前に、クロノの中で嫌悪感が胸の内に湧き上がる。


「一体これは何なんだ?っ!!うわあ!!」


クロノのいる方角へ、戦士の一人が倒れ伏すーーが、ぶつかる事なくすり抜けていった……。


転がってきたボロボロの剣を見ながら……ただただ目の前の光景を傍観する。


「これは何なんだ?落下したあの後に何があったんだーー?」


推測を思考で巡らせるーーが、それよりも物語の展開の方が数段早かった。


「〝主様〟。周囲の敵を殲滅して参りましたーー。が、それも時間稼ぎ程度でしょう。やはり、〝神兵〟ともなると主様の神気の消耗が激しいかと思いますーー。一度私が全軍の指揮を代行致しますので、主様は他の戦局を動かしに行くのが良いかと思いますが……いかが致しますか?」


全身甲冑と鎧で覆ったーー齢十五、六といった見た目の少女が跪く。


甲冑からは気の強そうな赤い瞳と黄昏のような金色の髪が覗かせており、銀色の兜からは耳元に天使の羽根のような装飾が施されてあった。


???「よくやったーーさすがは〝エンシェント・ヴァルキリア〟だな。その名は伊達では無いってところか?」


目の前の……自分とよく似た風貌の男がそう笑いかける。


まぁ……年齢は同じく十五、六歳程なのだがーー。


その言葉を嘲笑するように、口端を釣り上げてその少女は笑った。


???「ふっーーご冗談を。その名で呼ぶのは外野だけで十分です。それに……主様の持つ力と比べればーー私程度などそこら辺に転がる石ころと大して変わり致しませんよ」


全身血まみれのーー戦鬼の如く荒武者のように敵を屠ったであろう者の言葉とはとうてい似つかないその表情は、とても物腰柔らかいものだった……。


???「そうかーー。ならここはお前に任せようーー。〝フィールド・エスケープ〟」


ブゥオンとーー、〝右手〟を翳した男の前に紫色の亜空間が現れる。


どこへ続いているのかわからないそこへーー男は近づいて行ったーー。


???「何かあったら煙弾で知らせろ。すぐに飛んで行くーー」


去り際にそう言い残してーー男が立ち去ろうとする……。


その様子を、言葉一つ吐き捨てて〝その少女〟は微笑んだ。


???「ご冗談を……私を誰だと思っているのですか?」


赤い瞳を輝かせて、自慢げに微笑みかける。


献身と親愛に満ちたーーその強い眼差しで。


???「フッ……世界一強い〝石ころ〟だろーー?」


その男はジョークを一つ、残して消え去る。


主人が消え去るのを見届けた少女はーーいつの間にか現れた無数の宙を羽ばたく白い羽根を生やした銀色の鎧を纏った敵を前にーー不敵に笑いかけた。


???「フッーー。あれだけ降伏を促して尚……主様に刃を向けるとはーー哀れなものですね。その〝小さい翼〟ーー地に叩き落としてあげましょうーー」


赤い瞳が煌めき揺れる。


不敵に笑みを浮かべながらーー〝エンシェント・ヴァルキリア〟は翼を広げて空を羽ばたいた。


その様子を見たクロノはーーただ唖然としていた。


「何だ……あの動き。人間じゃ無いーー」


翼をはためかせて自由に飛び交う白の天使。まるでその印象とは真逆の血に濡れた金髪の戦士ーー〝エンシェント・ヴァルキリア〟。


その動きはどんなに目を移ろっても次の瞬間には全く違う場所で次々と敵を叩き落として行く。


ザンッーーザザッーースパッスパッスパッ!!


次々と襲いくる敵を表情一つ変えずに斬り伏していく。


その少女が長剣を持つ姿はーー神々しくてクロノさえ目を惹かれていた。


「あの動き……先生よりも早いかもしれないーーあんな動きにくい空中なのにーー」


何が起きているのかも……目の前で起きている光景すら理解が及ばない。


ただクロノにわかる事は一つだけだったーー。


「これが……〝神気〟を纏った戦い方なのかーー」


目の前の金髪の剣士はただひたすらにーー見惚れてしまうほどの美しさすら覚えるほど滑らかにーー〝神気〟を纏っていたーー。


……………………。


???「起きてください……〝マスター〟。起きてくださいーー」


優しい囁き声が、耳元から脳内に響き渡る。


いつか聞いたような……聞き覚えのある声だーー。


???「マスター……マスター。起きないとイタズラしちゃいますよ?」


「う……んんーー。んあ?」


パチリッーーと、目が覚める。


その視界には、一人の少女が覗き込むように見下ろしていた。


優しい自然を彷彿とさせる翠色の瞳に、腰まですらっと伸びた穂麦のような金色の髪は頭のてっぺんでくるりんっと、アホ毛が丸い輪っかを作って天使の輪みたくなっている。その少女は白とピンクの色のローブを着用しており、あどけない表情でこちらを見ていた。


「…………誰?」


目の前の少女はふふっ、と微笑み自己紹介をする。


「そうですねーー名乗るのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。私の名前は〝エル〟。マスターの……あなたの〝眷属〟ですよ♪」


そう言って笑いかけるーー〝エル〟と名乗った少女。


地底の中でーーエルはまるで天使のように笑っていたーー。


……………………。


静かな真っ暗闇の中ーーエルは神々しい光を放っている。


スキルが使用出来ない今ーー《夜目》が効か無かったから助かる。


「えっと……色々と聞きたいんだけどーー、一ついいかな?」


「ん?どうしたのですか、マスター?」


コトンッ、と首を傾げて疑問符を頭に浮かべるエル。


「…………何で膝枕されているんだ?」


普通に寝かしてくれてもいいのに……恥ずかしい。


「えっと……だってーーここ寝るところが無いから……もしかしてマスター……エルの膝、寝心地悪かったですか??」


不安そうな瞳で問いかけるエル。


何だろう……悪い子じゃ無いとは思いたいけど……この暗闇でこのシチュエーションーーどうもきな臭い。


騙されていないといいのだがーー


「君は……何者?何で俺を助けるんだ?」


目の前の少女のふとももから起き上がりながら、そう問いかける。


その質問は想定外だったのかーー腕を組んで考え込んでいた。


「う〜ん…………そこにマスターがいたからーーでしょうか?」


コトンッ、と首を傾げるエル。


なるほど、とってもシンプル。


確かにそれは……助けないといけないもんなーーそれが〝マスター〟ならだけど!


「そっか……ごめん。助けてもらった礼が遅くなったよ……ありがとう。ええと……天使みたいなお嬢さんーー」


何とお礼を言えばわからず……適当に思いついた言葉を並べる。


なのに何故か……エルはとても嬉しそうに頬を赤らめていた。


「っ!!……覚えていないはずなのに……あなたはまだ私の事をそういう風に認識してくれているのですねーー」


「ん?」


どこか懐かしそうに、微笑む目の前の少女。


その姿を尻目に、立ち上がってコンコンッーーと靴を整える。


まずはーーここから脱出しないといけない。


「それじゃあ俺はそろそろ行くよ……。助けてくれてありがとう。それじゃあーーまた」


最後に礼を一つ言って、その場を立ち去る。


「うん!どういたしまして!!」


満面の笑みで、そう答えるエル。


そう言って別れてしばらく、この暗闇の中を歩き回る。


「…………」


「…………」


歩き回るのだが、何故か。


「…………なんでついてくるんだ?」


真後ろを決まった間隔を空けてしっかり付いてくるエル。


俺の質問を、心底意外そうに答えた。


「何でって言われましてもーーエルはマスターの眷属ですから」


なるほど……眷属か。


よくわからん!


「う〜ん…………まず、その〝マスター〟?とか〝眷属〟?とか……そこからよくわかんないんだけどなぁ〜」


眉をハの字にして頭を悩ませる俺に対して、何か閃いたのかエルがポンッと手を叩く。


「そうだマスター!じゃあ〝ステータスシールド〟で私の事を見てください!そうすればたぶん、マスターの疑問も全部解決すると思います!!」


両手を広げてそう言い放つエル。


しかしーー俺の疑問はそこには無かった……。


「き、君……何で俺がステータスシールドをーー何で知ってるんだ!?」


神気の事はシェリカにすらまだ話していない……知っているのは俺に神気を教えた〝キツネガミ〟唯一人だ。


それを知っているという事はこの女の子ーー間違いなく只者じゃない!!


それを知ってか知らずか……頭をぽりぽりと掻きながらその少女ーーエルは答えた。


「何でも何もーーだって言ったじゃ無いですか?私はマスターの〝眷属〟ですから!!」


エルはそう言ってニコッと笑いかける。


その笑顔にゴクリーーと生唾を呑み、恐る恐るステータスシールドを開く。


「す……ステータスシールドオン!!」


目の前にいる少女エルの言った事が正しいならーーステータスシールドにこの子に関する事が書かれているはずだ。


そう思い開いたステータスシールドには、思っている数倍理解し難い文言が書き連ねられていたーー。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前 《時間と空間の代行者》エル ??? 女 Lv13


種族:天使

 

所有神気 《光臨》、《鑑定》、《言語翻訳》、《鍵の手》、《浮遊》、


代行権限 《時間操作》、《空間操作》、


パラメータ  《筋力》33 《敏捷》187

《知力》568 《反射》303

       《体力》2030 《魔力》0

《神気》1050


神気シリーズ一覧


ハンドシリーズ《鍵の手》

 

眷属シリーズ《鑑定》、《言語翻訳》


マジックシリーズ《浮遊》



特殊効果1:《天使》


1:スキル、魔法効果によるダメージとその効力を無効化します。


2:精神異常、状態異常を無効化する能力が適応されます。


3:眷属権限により、一定の条件を満たした場合に限り《神の権限》を代行する事ができます。


4:眷属権限により、神と《精神の領域》を通じて意思の疎通を図る事ができます。


5:眷属権限により、神のステータスシールドに書き換えを行う事ができます。


6:眷属権限により、神の現在地を把握する事ができます。


特殊効果2:《天使の祝福》


1:ダメージを受けている間、常に一定時間毎に体力が回復し続けます。


特殊効果3:《〝時間と空間の神〟の眷属》


1:互いに神気の受け渡し譲渡が可能となります。



称号:《時間と空間の代行者》


《時間操作》と《空間操作》の代行権限を所有します。

時間と空間を因果する効力を一定数値無効化できます。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何だろう……なんて言うか、わからない文字羅列が書いてあって理解するのに時間がかかりそうだ。


でも、一個だけどうしても気になる事があるのだがーー


「何で……年齢だけ隠すんだ?」


というか、隠せるんだーー年齢。


「マスター……女性に年齢を聞くのは良くない事ですよ?」


唇を尖らせてほっぺを膨らまし、唇に人差し指を当てるエル。


とりあえず、一つずつ気になる疑問をぶつけてみる事にした。


「ええと、《時間と空間の神》って誰?」


「マスターの事です。」


「眷属って何?」


「神に仕える代行者の事です。主に天使から選出されます」


「神気と魔法の違いって何なんだ?」


「神気とは〝神の使う魔法〟の事です。人間の使うものとは質が格段に違います」


「なんで君は神気を使えるんだ?」


「神気を使う事が出来るのは神と天使だけです。人間には使えません」


「なんで君は俺と同じレベルなんだ?」


「天使は眷属となる時、主と同じレベルに降格します。上昇する事は無いので、神のレベルが高い場合は変動しません」


「他にも俺たちみたいな神とか天使みたいなのがいるのか?」


「存在します。神には九つの階級が、天使には十の階級があります」


「君は一体いつから俺の眷属なんだ?」


「それはーー」


淡々と答えていたエルがーー歯噛みして気まずそうな顔をする。


どうやら、この手の話題はあまり話したく無いらしいーー。


「…………わかったよ。とりあえず君の事は信じる。……最後に一つだけ教えてくれーー何でここはスキルも魔法も使えないんだ?」


先程ステータスシールドには『魔法無効化エリア』、『スキル無効化エリア』と表示されていた。


すなわちーー今の俺の持つ能力全てが無効化されると言う事だーー。


それはさっきの例を見ればわかる通りーー、一瞬で死に繋がる重要な事である。


「おそらく……ここは〝何者かの神〟が使った〝神域〟なのだと思いますーー。この構造……推測ですが、主に人間を捕える目的で作られたものなのでしょうーー。神気を使えない人間には、何もなす術を失いますからーー」


真っ暗闇のだだっ広い空間の中、ポタリーーと滴り落ちる水の音がやたらと響き渡る。


エルはてくってくっ、と歩きながらーー俺の前を先行する。


先程から全身から光り輝いてランプの代わりをしてくれている……これがおそらく神気《光臨》によるものなのだろうかーー。



「マスター、とりあえず歩きましょうか。この空間ーー結構広いみたいですから、脱出する《転移陣》がどこかにあるかもしれませんよ?」


「っ!!そうだーー《転移陣》!!」


早く先生とエリスフィールの元へ帰らないといけない……。


屋敷のみんなの所へ帰りたいーー。


ならば、一刻も早く《転移陣》を見つける事が先決なのだろう……。


目の前の少女エル。どうやら彼女は俺の眷属らしい。


神気……眷属……〝時間と空間の神〟ーー。自分が何者なのかいよいよわからなくなって来たが……それでも向かう先は、何かこの謎を解く鍵が待っている。ここから脱出する術もきっとそこにあるのだろうーー。


そんな気がして、真っ暗闇の中ーー俺はエルの後をついていった……。

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