05 ダンジョン探索③ ★お知らせあり
お知らせ:前日投稿した【シーズン2】エピソード05 ダンジョン探索③ですが、終盤の内容に書き加えの部分がありました為……再度内容を変更して投稿させて頂きます。それに伴い、内容にも一部修正を描き加えておきました。再投稿予定時刻は以下の通りです。
【シーズン2 】エピソード06
2月25日12時15分頃〜
尚、念のために【シーズン2 】エピソード06の冒頭にも書き加えたものと同内容のもの描き含めておきますので、ご了承お願い申し上げます。
五日目ーー。
地下三階層ーー。
薄暗い瓦礫の空洞の中を、ただひたすらに進んでいく。
道中出くわす骸骨悪魔は全身骨の魔物だ。
それをバッサバッサと切り掛かっていくのだが……なかなか闘争本能の高いこの魔物達の相手は一苦労だったーー。
「〝我に加護あれ・水の恵あれ・我が目の前に・守りの壁よ〟ーー〝ウォーター・ベール〟!!」
未完成ながらの、水の防壁を生成する。
大した効力にはならなかったが……一晩かけて練習した甲斐あって、そこそこの出来栄えをキープするまでには至る事が出来たーー。
これもひとえに、惜しむなく協力してくれたエリスフィールのおかげだろうーー。
「だいぶ良い出来に仕上がって参りましたね、領主様!……少し不格好ではありますが、一晩でここまで出来るようになるのは相当の素質あってこそのものですよ!!やはり領主様は偉大な方です!!」
エリスフィールが感嘆の声をあげて、クロノに声援を送る。
なんだかんだ言って……こう言う〝褒め言葉〟みたいなご褒美が、ちょっとした成長や自信に繋がるのかもしれないーー。
「ありがとうエリスフィール。……おかげでこれなら実践でも問題無さそうだ!……まぁ、効力についてはみての通りだからーーあまり無理せずに応用が効く範囲でやってみるよ!」
エリスフィールに向かって、感謝の意を述べるクロノ。
それを受け取ったエリスフィールはただただクロノ成長を喜ばしく思い、花のような満面の笑顔を咲かせていた。
やがてーーそこに辿り着く。
縦十メートルはある巨大な入り口ーー〝ボス部屋〟だ。
「とうとうお出ましだなーー」
エドワードが、ボソリと呟く。
ボス部屋の前には左右に灯篭が二つ建っており、紫色の炎色反応をした炎が来るものを待ち構えていた。
「これが……ボス部屋ーー」
クロノが生唾を飲み込む。
エリスフィールはクロノが息を整えるのを見計らってーーただ一言。
「領主様ーー準備はよろしいですか?」
その言葉に、コクリーーと頷く。
「よしっ、開けるぞーー」
エドワードがクロノとエリスの二人に、合図を送る。
これから先はーー〝ボス戦〟だ。
「ああ、問題無い!」
「万事ーー抜かりありません!」
二人の力強い反応を受け、エドワードが両腕に力を込める。
「よし……じゃあーー行くぞ!!」
ドドドドドドドドッーーと、大きな音を立ててダンジョンの入り口と同じかそれ以上の大きさの扉ーー高さ十メートル以上の巨大な扉をその腕力で一気に開け放つ。
その直後ーー部屋から漏れ出る魔力に、一瞬クロノは怯んだ。
「っーー!!……これがーーボス部屋!!」
クロノの肩に、エリスフィールがポンと手を置く。
まるで、リラックスさせるようにエリスフィールはーー
「大丈夫ですよ領主様。この難易度のダンジョンであればーーいかにボスといえど領主様なら大丈夫です。それに、何かありましてもこのエリスフィールが必ずお守り致しますので……安心してお進みください♪」
頼もしい言葉で、クロノの背中を押すエリスフィール。
その力強い言葉を受けてクロノはーー
「ああ!ありがとうエリスフィール。おかげで大丈夫そうだ!!」
前を向いて、ボスと戦う準備をする。
これから先に待ち受けるーー精鋭骸骨剣士との戦いに向けて……。
……………………。
入るとそこは、暗い部屋の中ーー灯篭が壁周を囲むように灯してあり、その中央には一人の骸骨が立っていたーー。
「……………………」
その骸骨の男ーー精鋭骸骨剣士は微動だにしないまま、ただ虚な瞳で来るものを待ち受けている。
クロノは、そこへ向かって一人ーー歩み出した。
討伐ランクはBランクーーすなわち、Bランクの冒険者五人相当の魔物だ。
Aクラスはあるであろうクロノならば問題は無いだろうが……実力が差を付けてある程では無いーー。
一瞬の隙が命取りとなる……故に俄然、クロノの中で集中力が高まった。
「よしっ……行くぞ!!」
「…………!?」
クロノが先に仕掛ける。
「〝自然よ・水神よ・我にその力を与えたまえ・我の願いの元に・今ここに一飛沫の水を放出させよ〟ーー〝スプラッシュ・ウォーター〟!!」
《水魔法》の攻撃で一瞬の怯みを作り、その瞬間にクロノは《隠密》を使って姿を眩ませる。
その様子に呆気を取られた精鋭骸骨剣士は、クロノの気配を察知しようと周囲を探っていたーー。
ふらーー、と一瞬のゆらめきの部位を見逃さない精鋭骸骨剣士。
しかしクロノは、そんな精鋭骸骨剣士の攻撃のモーションから切り付ける部位すらーー《未来眼》の力で先読みをする。
くるっ、と宙を一回転ーー回避に成功したクロノは短剣を精鋭骸骨剣士に突き立てる。
「グシャッ!!」
カラカラッーーと乾いた精鋭骸骨剣士の叫び声と共に、短剣を引き抜いて姿を再び眩ませるクロノ。
あのまま深傷を負わせる事もできたがーー欲をかきすぎれば不覚を取る可能性が大きくなってしまう。
ヒットアンドアウェイ戦法。これはそのためのブレーキ……いわば安全策であった。
カキィンーー、カキィンーーとーー部屋の中に甲高い金属音の鍔迫り合う音が響き渡る。
その様子をーーエドワードとエリスフィールは遠巻きに見守っていたーー。
「長期戦になればなるほど……〝暗殺者〟のスキルは慣れられて不利に陥りやすい。故に最速最短の戦いを求められるのが〝暗殺者〟の戦い方だーー普通ならな」
エドワードが口の端を吊り上げて笑みを溢す。
「魔法、剣術、暗殺術、エドワード様と共に鍛え上げられた身体能力に、いくら追い詰められても冷静な判断を取れる思考力ーー何より、先を読む《未来眼》のスキル……本当に末恐ろしいお方ですねーー領主様は。それが僅か齢八歳の子供の力などと言って、一体誰が信じるでしょうか?」
誇らしそうに、エリスフィールもまた微笑みを溢す。
Aランク冒険者は少なく無い……とは言え、冒険者全体の上位10%に位置する存在だ。
全体の一割……その域に至るものがどれだけの鍛錬を続けてそこに至るかーークロノの持ちうる能力の素質は末恐ろしいものだったーー。
「ガギャッ!!」
精鋭骸骨剣士の攻撃は全てーー先を読んで回避している。
「よしっ!このまま行けば勝てるーー」
スパッ、スパッ、スパッーーと、精鋭骸骨剣士に斬撃を与え続けるクロノ。
やがて、ボロボローーと精鋭骸骨剣士はその骨の鎧が音を立てて崩れ始めたーー。
「グギャアオッ!!」
精鋭骸骨剣士がクロノに向かって攻撃する。
その瞬間、クロノは急ぎ口調で魔法を唱えた。
「〝我に加護あれ・水の恵あれ・我が目の前に・守りの壁よ〟ーー〝ウォーター・ベール〟!!」
ガゴンッーーと、水の壁に吸い込まれる精鋭骸骨剣士の一振り。
「トドメだっ!!」
隙を伺ったクロノが精鋭骸骨剣士に攻撃しようとしたーーその瞬間の出来事であった。
「っ!!……あ、あれーー」
ふらっーーと、クロノの視界が歪み、意識が消えかかる。
その一瞬を敏感に察知したエリスフィールが、クロノに叫ぶ。
「領主様ーー危ない!!」
「っ!!」
気づけば精鋭骸骨剣士は水壁の中から剣を引き抜き、クロノに襲いかかる最中だった。
エリスフィールの一言で、底に沈みかけたクロノの意識が覚醒する。
その一瞬ーークロノは悟った。
この位置……この間合いーーこのタイミング。
《未来眼》で先読みしても、行動が間に合わない……。
死ぬーーと。
「っ!!〝《使役》〟!!」
クロノが骸骨剣士に向かって手を翳してーーその動きが止まる。
咄嗟に発動した《使役》スキル。
エドワードとエリスフィールがいる手前、クロノがここまで発動を温存していたスキルが、間一髪でクロノを助けた。
「ハァ……ハァ……ああーー使っちゃった」
エドワードにもエリスフィールにも《未来眼》の事は話しても、《盗賊の申し子》の事は話していない……つまり、二人はクロノが持つ《使役》スキルの存在を知らないのだーー。
クロノがどう説明しようか思案したーーその時だった。
「領主様っ!!」
がばっーーと、エリスフィールがクロノに抱きつく。
「領主様っーーああ、領主様……無事でよかったーー本当にーー」
「っ!!……エリスフィールーーすまない、助かったよ」
「領主様……本当にご無事でよかったです」
クロノからの感謝の言葉に、今にも泣き腫らしそうなーー心配した表情で微笑むエリスフィール。
宥めるように背中をさすっていたクロノだったが……そこへ神妙な面持ちをしたエドワードが。
「なぁ、領主ーー一つだけ聞いてもいいか?」
「…………はい」
エドワードが突如動かなくなった精鋭骸骨剣士に触れながら、静かに問いかける。
「……さっき、なんで急に動きを止めたんだ?」
「……えっ?ああ、そういえばーー」
思っていた質問と違い、素っ頓狂な声で返事をするクロノ。
確かに思い返してみれば、変なタイミングでの出来事だった。
「……わかりません、突然視界が真っ暗になって……なんて言うか、気絶する一歩手前……みたいな感覚でした」
確かにあの時ーー不意に意識が遠かった。
エリスフィールが声をかけてくれなければ……あのまま切り付けられていただろう。
「…………そうか。慢心からくる油断とも思ったがーー違うなら仕方ねぇ。だが、そうなると誰かが邪魔をしたって事になるな……よもやこいつが持つスキルじゃああるめぇしーー」
エドワードが周囲を見渡しながら警戒する。
そしてそれは、エリスフィールも同様だったーー。
「ええ、もしそうなら許容しておくわけにはいきませんね……領主様に明らかな殺意があっての行動なのは間違いありません。ひっ捕えて罪状を吐かせた上で死で償ってもらいましょうーー」
ゆらりーーと、明らかに殺気ダダ漏れで般若のような表情をしているエリスフィール。
この殺気はシンプルに怖いのだが……それよりも。
「……二人とも、気にならないのか?」
「ん?何がだ?」
目の前で突然動かなくなった精鋭骸骨剣士に対してはスルーの二人に、思わずクロノが問いかける。
「だって……何で俺が《使役》スキルを持っているのかーー気にならないのか?」
どこか申し訳無さそうに問いかけるクロノにーーエリスフィールが。
不思議そうな……それでいて、何とも無さげな表情で答える。
「もちろん、驚いていますよ。領主様は《使役》まで出来る凄いお方ーーでも、それだけです。もし、何か領主様が隠し事をしていてーーそれで私たちが領主様を嫌いになるとかそんな心配をしているならハッキリ答えましょうーー〝そんな事はありえない〟……と」
「っ!!……エリスフィールーー」
エリスフィールはそっと、クロノを抱きしめる。
「〝何故?〟とか、〝どうやって?〟とか、そんな事はどうだっていいのですよ。領主様は賢明であり、人徳に溢れたお方だと言う事は知っていますから……その力を悪用する事が無いのはみんな知っていますーー。言いたく無い事は言わなくていいんです。だから、もし領主様が話したいと思ったらーーその時話してくださいね♪」
胸に顔を埋めて、ギュッと強く抱きしめるエリスフィール。
ああ、本当に暖かいなーーエリスフィールの胸は。
「まぁ、スキルもお前の持つ実力のうちの一つだ。今回はイレギュラーの邪魔が入ったから仕方ねぇがーーそもそも戦場にイレギュラーなんて付きものだ。それを克服する術は怠るなよ?」
エリスフィールの言葉を聞いて、嫌味を言うように笑いかけるエドワード。
その様子をみてクロノはーー
「はい……わかりました」
エリスフィールの胸から離れ、そう強く答える。
「それじゃあーー帰りましょうか、領主様」
安心したように、ダンジョンを後にしようと振り返る二人をみてクロノはーー
(ああ……本当に、この二人には叶わないなーー)
そう思いながら、後をついて行く。
苦い気分を紛らわせるように、クロノは一つ深呼吸をしてーー
「よしっ!行こうーー」
そう決意した……その瞬間だった。
ふわりーーと妙な浮遊感に襲われる。
さっきの幻覚のようなものじゃ無い……落下する直前のーー本物の浮遊感だ。
「っ!!先生!!エリスフィール!!」
「っ!!……こいつぁーー」
「領主様っ!!」
ガラガラガラッーーと、崩落して行く地面に身動きが取れなくなる三人。
「先生!!エリスフィール!!」
そう叫びながら、青ざめた表情で思考を巡らせるクロノ。
そのまま全員、共に落ちていったーー。
……………………。
地下三階ーーボス部屋。
「はぁ……まさか崩落するなんてな……大丈夫か、領主……エリスフィール?」
エドワードが尻を掻きながら、ふらふらと立ち上がる。
その様子を見てーーエリスフィールはパッパッとメイド服を叩いて埃を振り払う。
「ええ、わたしは何ともーーそれより領主様、大丈夫でしょうか?」
「ああ、ありがとうエリスフィール。魔法で軽減させてくれたおかげで無傷で済んだよーー」
エリスフィールは咄嗟にクロノとエドワードを含む自身の周囲に《風魔法》を使った空気のクッションを生成した。
その甲斐あって、全員大したダメージが無かったのだが……
「十メートル程……でしょうか?まさかこんな真下に隠し部屋があったなんてーー、一体ここは何を隠していた部屋なのでしょうか?」
歩き回りながら、ただの何も無い隠し部屋を探索するエリスフィール。
エドワード、クロノも同様に……部屋の中を歩き回る。
少し歩き回ってふとーークロノは気になった。
何故こんな何も無い部屋の中で……魔法陣のような円が光りを放っているのかーーと。
「ねぇ……二人とも、これは何の魔法陣なのかなーー?」
クロノの呼びかけに、その場に訪れるエリスフィールとエドワード。
だがーー
「魔法陣……ですか?すみません領主様、わたしにはそのようなものがお見受け出来ないのですがーー」
「ああ、俺もだ……。お前には何か見えるのか?」
不思議な事に、エリスフィールとエドワードにはこの魔法陣の光が見えていないと言うーー。
その様子に、クロノは疑問を抱いた。
「何で俺にだけ見えるんだろう……この魔法陣。」
そう言って、クロノが魔法陣の中心に乗ったーーその時だった。
「っ!!領主様!!」
ふわりーーと、クロノの姿が消えかかる。
「おい領主!!そこから離れろ!!」
「え?……何ーー」
二人の呼びかけに間に合わず、クロノは姿を消した。
あっという間の出来事で……理解が追いつかないエドワードとエリスフィール。
「り、領主……様!?」
青ざめた表情で誰もいない魔法陣の中心を唖然と見つめているエリスフィール。
そしてそれはーーエドワードも同様だった。
「一体何が起きてやがる……本当に、ここに魔法陣があったのか?……しかもこれってーー」
とぼ、とぼ、と。エリスフィールが機械のような動作でクロノの消えた魔法陣の中心へと歩み寄り、へたりと座り込む。
「転移型の……魔法、陣。そんなーー!!」
《転移魔法陣》。今は失われた古代魔法の一種で、対象となる者を転移させる魔法陣だ。
少なくとも千年以上前に作られたダンジョンに設置されているケースが多いが……エリスフィールの《精霊魔法》での探知ではそんな反応は無かったーー。
クロノがいなくなったーー。
まるで夢じゃ無いのか?……あるいはそうであって欲しいという表情で、エリスフィールの藍眼の瞳から涙が溢れる。
「領主様……いや……いやです。だってーー」
転移魔法で飛ばされる場所は固定されている。が、何故クロノだけが飛ばされたのかが説明がつかない。
故にーー、今クロノがどこにいるかもわからない。
「《精霊魔法》にも反応が無い……一体どうして…………領主様ーー!!領主様!領主様!!どこに……一体どこに!!」
感情の制御が効かず、地べたをバンバン!!と叩きつけるエリスフィール。
その様子を、エドワードが掴み掛かって静止する。
「おい、落ち着けエリスフィール!!お前ーー」
エドワードの問いかけに……エリスフィールは激昂して答えた。
「落ち着け……?落ち着けですって!?領主様がいなくなったのに、どうして落ち着いていられるのですか!?魔法陣の起動の仕方もわからない……どこに飛ばされたのかもわからない……そんな状況で、どうして落ち着いていられるのですか!!」
ボロボロボローーと、エリスフィールの瞳から涙が止まらず滴り落ちる。
いつもの冷静で淡々としたオーラは……そこには無かった。
「とりあえず……辺りを探すぞ。俺は外を探してくるから、エリスフィールはもう少しこの部屋を調べていてくれ。……もしかしたら、そのうち帰ってくるかもしれねぇだろ?」
帰ってくるかもしれないーー確かにそうだ。向こうの魔法陣がちゃんと機能するならば、帰ってくる時に辿り着くのはここのはずだから。
それをエリスフィールは、自身の胸の内に言い聞かせる。
「領主様が……帰ってくる。領主様が帰ってくる……。領主をがーー帰ってくる」
ハァ、ハァ、ハァーーと、高まる心拍を抑えながらエリスフィールは何度も何度も深呼吸をする。
多少の落ち着きを取り戻したエリスフィールは目尻の涙を拭う。
「そう、ですね……それではエドワード様。申し訳ありませんが、外の捜索をお願いできますか?……私はこの周辺に何か手がかりが無いか探してみますーー」
未だ目を赤く泣き腫らしたエリスフィール。
しかし、先ほどよりも瞳に光を宿したその表情を受けてエドワードはーー
「わかったーー。何かあったらすぐに知らせてくれーー」
そう言い捨てて、上の部屋へと飛んで戻って行く。
その様子を見届けたエリスフィールは、静かに目を閉じたーー。
「…………領主様ーー」




