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04 ダンジョン探索②


四日目ーー。


地下二階層最終盤ーー。


「〝自然よ・水神よ・我にその力を与えたまえ・我の願いの元に・今ここに一飛沫の水を放出させよ〟!!スプラッシュ・ウォーター!!」


「グギャオッ!!」


黒魔のトカゲ(エビル・リザード)に水飛沫を吹っかけて、隙が出来た所をスパッと切り裂く。


《水魔法》の扱いにも慣れた頃合いになり、戦いの応用に組み込めるレベルに達するのはーー《未来眼》の能力のおかげもあって早いものだった。


「お疲れ様です領主様。」


「ああ、ありがとうーー」


エリスフィールが慣れた手つきで水分補給のボトルを手渡す。


今のが最後だったのかーーそこには地下へと続く階段があったーー。


「よしっ、今日はここまでにして早めに休んでおくかーー」


「えっ?……まだ日暮の時間まで三時間程ありますよ?」


ダンジョン内には外からの太陽光は入ってこないが……時間の感覚の目安として日暮の頃合いをその日の終了時刻に設定していたのだが……珍しく先生が早めの切り上げを提案してきた。


「確かにまだ時間はある……が、一応明日のプランを確認しておこうと思ってなーーこれから作戦会議だ。……まぁ、30分もあれば終わるものだし……最終階前の大きめの休憩だと思えーー」


「なるほど……わかりました」


そのまま先生は床に尻を敷き、地図を広げる。


前日下見に行った際のダンジョンの内部構造図だそうだ。


「最終階層は骸骨悪魔(ボーンデビル)が出没する。こいつらは獰猛な上に魔法が効きづらい特性があるーーエリスフィール、このくらいならおめぇは大丈夫だろう?」


先生の問いかけに、エリスフィールは不敵に笑う。


「ええ、もちろんです。この身一つあれば骸骨悪魔(その程度の魔物)ーー問題ありません。」


胸に手を当て、自信満々にそう言い切るエリスフィール。


さすがだなと思いながらも……正直話を聞く限りは強敵とはあまり思えないのは順調から来る油断だろうか……?


「まぁ……そうだよな。だが、ここのダンジョンのボスはどうやら〝リポップ制〟らしい……その討伐なんだがーーこいつ一人にやらせてもいいか?」


リポップ制ーー先生の話だと、ダンジョンの中にはボスや魔物が再生成(リポップ)される所があるらしいーー。どうやら、このダンジョンがそうなんだそうだ。


メカニズムとしては主に、大気中に流れるマナを利用したりダンジョン内外で死んだ魂や肉体を糧にして作られるのだそうだが……昔はそうやって効率よく砦を作る事が多かったのだと言うーー。


リポップされるならそれを引き起こす原因となる媒体を破壊してしまえばよいのだが……地下三階までしか無いとは言え、地中にあるダンジョン内からそんなものを見つけるのは砂漠の中から金を見つけるようなものだろうかーー。


まぁ、今回は俺のダンジョンでの経験を積ませると言うのが目的の手前、先生としてもそんなやり方で終わらせるつもりも無いだろうーー。


「ええ、領主様ならきっとーーうまく倒せますよ」


エドワードの言葉を受けて、既に勝利を確信しているように余裕の笑みを浮かべるエリスフィール。


いくら難易度が高く無いとは言え、ダンジョンボスを一人で倒すのは多少の緊張を覚えるのだが……まぁ、大丈夫だろう。


……こう言う時、変にポジティブなの結構自分でも誇りだと思う。


「じゃあ作戦会議を始めるぞ。明日お前が戦うボスは精鋭骸骨剣士せいえいボーンソードマンだ」


「精鋭骸骨剣士……?」


精鋭骸骨剣士。討伐ランクBのかなり強い魔物だ。


たぶん俺なら勝てる……油断さえしなければ。


「領主様ーーもし危うかったらいつでも言ってくださいね。わたくしがいつでも交代して、領主様をお守り致しますのでーー」


力強くグッと拳を握るエリスフィール。


そんな様子を頼もしく思い、返事しようと思ったのだがーーそれより早く先生が反応した。


「いやおめぇ……そんなコイツを甘やかしても訓練にならねぇだろーー?お前は明日は後ろの方で黙って見てるんだ」


「ち、ちょっと先生ーー?」


売り言葉に買い言葉。


先生のその一言に、火がつくエリスフィール。


「エドワード様ーーわたくしには、領主様を何があってもお守りするという大義があります。……いくら訓練だからと言っても、領主様の命が危ぶまれる状況になれば……黙って見過ごす事などできませんーー」


「ほぉぅ……?お優しいエリスフィールにゃあーー領主がこのくらいの相手に遅れを取る……と?」


バチバチッーーと、先生とエリスフィールの間で火花が飛び散る。


その様子を慌てて止めようと試みるのだがーー


「ま、まぁまぁ……先生の言う事ももっともだし、エリスフィールが心配してくれるのもありがたいしーーここは折衷案にして一度二人とも落ち着ーー」


「いいや、譲れねぇ!!」

「いいえ、譲れません!!」


え、えぇ〜……息ピッタリじゃんーー。


そのままヒートアップして討論を重ねる両者……前々から思っていたのだがこの二人ーーもしかしたらあまり仲が良く無いのでは……?


そんな事も思いながらも、俺自身の事を想って考えてくれている。


言い争っている二人の姿を見て、それでも優秀な二人の背中に……ちょっとだけ尊敬の念を胸に抱いておこうと思うーー。


……………………。


日暮れ頃ーー。


エリスフィールから次の《水魔法》を教えてもらう。


今回は相手に魔法自体が効き目が薄い為、バリアタイプの魔法を教えてもらっていたーー。


「〝我に加護あれ・水の恵あれ・我が目の前に・守りの壁よ〟ーー〝ウォーター・ベール〟!!」


途端ーー、エリスフィールの眼前に盾のように覆う形状の水のバリアが展開される。


「うわっ、すごいなぁーー」


幻想的な宙に浮かぶ水のバリアに、目を丸くして驚くクロノ。


相変わらずこう言う所の子供らしい反応に、満足そうに嬉しそうな顔で微笑みながらエリスフィールが……


「それじゃあ、領主様もやってみましょうか♪」


「ああ!エリスフィール……魔法って楽しいんだな!!」


……………………。


夜ーー。


「う〜ん……何で上手くいかないんだろうな〜?」


焚き火を前に、先程の出来事を思い返す。


あれから何度か挑戦してみたが、〝ウォーター・ベール〟の成功率は五分五分ーーできても未熟な完成度のものが多かった……。


「〝スプラッシュ・ウォーター〟と難易度は然程変わらないと思いますし……一応手を握ってマナの巡りを確認もしましたし……もしかして領主様はーー攻めが得意な〝気質〟……と言う事なのでしょうか?」


「攻めが得意な……気質?」


エリスフィールの話によると、魔法にも向き不向きというのがあるらしい。


剣術において一刀流と二刀流……短剣と大剣など、その人の得意分野によって向き不向きが分かれるように、その傾向が魔法にも存在するようだーー。


…………確かに、思い返してみれば《隠密》に《ポイズン》、《睨みつけ》、先生から教わっている剣術に《水魔法》の〝スプラッシュ・ウォーター〟とーー向いているのは《未来眼》の回避を前提とした完全攻め主体のスタイルだ。


守りを組み込んだ戦いの構図を頭の中で具体的にイメージでもしないと、なかなか〝ウォーター・ベール〟を習得するのは難しいのだろう……。


「せっかく教えてもらったのにすまないな……エリスフィール。明日はとりあえず〝スプラッシュ・ウォーター〟を使って戦うよーーまぁ、魔法が効きづらい相手みたいだし……通用するかどうかはわからないケド」


頭の後ろで腕を組み、あどけなく笑う。


その様子をみて……エリスフィールは申し訳無さそうに謝罪した。


「申し訳ありません……領主様。わたくしがもっと人に教えるのが得意であればこんな事にはーー」


「い、いやいや!エリスフィールは十分教えてくれてたよ!?……これは俺の問題だしさーーホント、気にしないで?」


「領主様…………。ありがとうございます!」


涙目で微笑みかけるエリスフィール。


さすがにこれはエリスフィールに過失などありはしないだろうーーそれより、明日の戦術を確認しないといけない。


魔法が通用しづらい相手ーースキルの類だろうか?


同じ剣士というーーある意味同種とも言えるタイプの相手を前に……久々に胸騒ぎがする。


油断はしないーー最初から全力でやる。


それでも何故かまだ……不安の色が拭いきれなかったーー。



……………………。


暗い暗いーー地底の闇。


日の光が届かないような場所でーー、紫色の髪の少年は高らかに笑う。


遥か高い天井から伸びるトゲトゲとした岩にぶら下がるその少年はーー黒い(やじり)のような尻尾を垂らしており、額から生える二本の角は悪魔を連想させる。


???「ようやく来たなぁ〜、〝厄災の子〟。さぁさぁさぁさぁ!!そのまま下に降りていって、とくと絶望を味わいやがれぇ〜!!己の罪を(あがな)いながら後悔と懺悔の念で……臓物吐き散らしながら泣いて喚いてひれ伏しやがれぇ〜!!ヒェ〜、ヒェッヒェッヒェッーーヒエ〜ヒェッヒェッヒェ……オオエッ、ゴホッガハッーー。……ああ〜、息詰まりすぎて死ぬかと思ったぁ〜……」


薄暗い洞窟の一角で、髪と同色の怪しい瞳に涙を潤わせながら〝その悪魔〟は苦しそうにふわりーーと地に降り立つ。


ゴシック調の様相の〝その悪魔〟は、その場で座り込んで角をピクピクと動かす。


「全く……こんな引率のいるようなガキがまさか〝あいつ〟だなんて……()()姿()からは想像つかねぇぜーー。〝追憶と幻想の神〟が何を企んでいるのかは知らねぇがーー俺はあいつに復讐できるならそれでいいやーーにゃハハハハハ!!」


つんざくような甲高い声で、洞窟内に笑い声が響く。


悪魔の尻尾をプランプランと振りながら、〝その悪魔〟は天井を見上げた。


「早く降りて来いよ〜。おめぇが泣いて叫ぶような〝地獄〟まで招待してやるからよーー」


〝その悪魔〟は、機嫌良さげにクロノ達一行の姿を《千里眼》で監視しながらーーそうふてぶてしく呟いた。

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